───1年控室
トーナメント試合は、ついに第4回戦まで始まり、セドとレオン先輩は試験会場に姿を現わし、ルイさんの合図と共に、両者杖を構えた。
私は控室のモニターで、マリアンヌとレオナと一緒に、彼らの試合を見守っていた。
すると、レオナが私の右手を握りしめてきた。
「レオナ? どうしたの?」
「手…震えているわ。もしかして、セドちゃんが心配?」
レオナに指摘された右手を見ると、かすかに震えていたことに気づいた。
「本当だ!? なんで? セドが心配なのは、当たっているけど……」
「うふふ。そうなのね! そのうち、分かるわよ~!」
レオナは何故か、嬉しそうに笑った。
疑問に思いつつ、再びモニターに目線を向けた。
*
『よぉ。セド』
『ケイン先輩……』
『良い目だ。だが、前回と同じ結果だぜ?』
『いいや。今度こそ、俺が勝つ!
セドが杖を振ると、砂で出来た波が、レオン先輩に襲い掛かった。
『
地面にスライドし、レオン先輩を蹴ろうとしたが、左足首を掴まれ、セドを地面に叩き付けた。
『ッチ!!』
舌打ちをしながら、受け身を取ったセド。
『
レオン先輩は、セドに効くはずもない魔法を撃った。
だが、セドの左足首が濡れていることに気づいた私は、椅子から立ち上がった。
「セドッ!!」
これはやばい!
スライドした一瞬で、前回と同様ガラス瓶を壊し、中の水をセドの足首を濡らしたんだ!
『貴様がやることなんぞお見通しだ!
レオン先輩を砂で拘束し、右手に持っていた杖を奪い取った。
だが、真上から電撃がセドに命中した。
私たちは、モニター越しにセドの無事を願った。
すると、砂煙がだんだん消えていくと、そこには大きな砂の塊が出来ていた。
『ほぉ~』
『ったく。最初から、こうすれば良かったんだ。何故、あの時。これを試さなかったんだろうな。俺は』
砂の塊が崩れ、中から無傷のセドが、ローブに付いていた砂を落としながら現れた。
安心した私は、椅子にストンと腰を落とした。
「よかったぁ~」
「そうね!」
「セド君、頑張れ~!」
セドが無事で、良かった。
本当に……。
『魔道具とか使わねぇのか?』
『使わない。俺はあまり、セコイことをするのが嫌いだからな。正々堂々と戦うのが俺だ! 誰にも文句なんか言わせない。魔法なら魔法で勝負。拳なら拳で、立ち向かうまでだ!』
セドは砂で拘束されているレオン先輩に真っ直ぐ、己の戦い方を語った。
そして、ルイさんの合図で結界が下ろされ、セドに軍配が上がった。
『それまで! 勝者セド・レナード!』
『負けたわ~』
『フン。この戦いのヒントを得られたのは、
『おうおう。本当に好きなんだなぁ~』
レオン先輩は、にやけながらセドに杖を返してもらった。
『まぁ……』
『その様子だと、返事貰ってねぇな?』
『あぁ』
『へぇ~。まぁ、大丈夫じゃねぇか? なぁ、不思議ちゃん?』
モニター越しに、ウインクしてくんな! 腹立つ先輩!
私の隣にいる2人は、互いに手を合わせながら『きゃー』って、悲鳴上げてるし。
何なら、恥ずかしいわ!!
『ッチ』
『束縛激しいと、嫌われるぜぇ?』
『うるさい』
『んじゃ、必ず決勝に上がれよ。俺に勝ったんだから。よゆーで、エレノアくらい勝てんだろ。いや、勝て』
セドに背を向けたレオン先輩は、手を振って会場から去って行った。
『勿論だ』
セドは、レオン先輩の言葉に答えるかのように、セドは呟いたのであった。