───1年控室
第1回戦を突破した私は、マリアンヌたちと共に控室にて、ネオ先輩とルーカス部長の試合を、モニター越しに観戦していた。
『
ネオ先輩が攻撃しか掛けた瞬間、ルーカス部長とネオ先輩の場所が入れ違った。
「これは部長の
「スキル!?」
「おそらく、
空間操作……。
これは、一筋縄ではいかなそうね。
現に、ネオ先輩が自分の魔法に当たって、壁まで飛ばされ、吐血して咳き込んでいるもの。
実に、厄介なスキルだ。
『ゲホッ……』
『ネオ。それでよく、我が部の副部長になりましたね?』
『部長が認めたんでしょうが……。ゲホッ』
『そうでしたね。でも、もう諦めたらどうですか? さっきの魔法で、鼓膜も危険な状態でしょう?』
ルーカス部長は、何とか立ち上がるネオ先輩を見て、降参するように促した。
だが、ネオ先輩は全く耳を貸さず、杖を構えた。
『部長。俺は諦めませんよ』
『そうですか。なら、こうするしかありませんね。
透明な杖をネオ先輩に向けると、赤・青・緑、茶の4つの魔法陣が現れた。
赤の魔法陣からは火の玉。
青の魔法陣からは水の玉。
緑の魔法陣からは空気の玉。
茶の魔法陣からは土の玉が飛び出し、ネオ先輩を襲った。
砂が舞う会場。
その中から、杖を真上にかざすネオ先輩の姿があった。
『
『目に見えない音波による壁ですか。でも、僕の勝利ですね』
『まだ、だっ。
魔法を唱えるネオ先輩。
青空が一気に雲に覆われ、次第にぽつりぽつりと雨が降り出し、結界が張られているのにも関わらず、2人の制服が湿っていく。
「あれは攻撃ではなく、補助強化魔法ね!」
「補助強化魔法?」
「そうよ。補助強化魔法は、自分や味方の魔法、身体を強化を手助けする魔法なの。例えば、その魔法を使わないと、使用できない魔法や魔法具があるとか、回復量が少ない魔法に、補助強化魔法をかければ、回復量が通常よりも倍になるとかね!」
レオナは、補助強化について私に1から説明をしてくれた。
私も覚えれば、使い道あるのかな? と思っていると、マリアンヌに『あれ見て!』とモニターに、指を指した。
『
『補助強化魔法を使用しないと、雷魔法を使えないのは、知っていますからね。
ルーカス部長は拘束魔法を唱え、鉄の鎖でネオ先輩を拘束し、また先輩同士入れ違い、
「ただの拘束魔法で!?」
「鉄は雷を通すのは知っているよな? スキルで自分とネオ先輩が入れ違い、その原理を使った部長の勝利だ」
魔法も道具や只の拘束魔法だけでも、相手の属性を利用して勝利すこともあるのだと、改めて思い知り、胸の奥にとどめた。
『そこまで! 勝者、ルーカス・グレイナ!!』
ルーカス部長が勝っちゃった…。
「ルナちゃんファイト!!」
マリアンヌに笑顔で言われた途端、私はレオナに向かって突進した。
「レオナぁぁぁぁぁ!!」
「ぐふっ……。痛いわよ、ルナちゃん」
「レオナそこ代われ。今すぐに」
「うん。セドちゃん? ガチトーンやめて?」
レオナは、セドにそう言いながら、私の頭を撫でた。
「レオナ」
「セドちゃ」
「レオナ」
「……ルナちゃん。セドちゃんにも行ってあげて?」
困った顔をしながら、頼んでくるレオナ。
だけど、
すると、セドは何故か壁に片手をつき、1人悶絶し始めた。
「セドちゃんってば……」
「ルナがイヤイヤって。天使か?? そんでもって、無防備すぎないか?」
「ルナちゃんの師匠みたいだねぇ~」
私をよしよしと慰めるマリアンヌが、セドに向かって呟くと、セドから殺気を感じた。
「あの爺……。許さねぇし、俺はあの爺とは、これっぽっちも、似てねぇからな?」
「爺って……。ふはっ!! あはははははは!!」
笑いが止まらずに、床に転がった私を見た3人は『笑いの沸点が低いのね/か』と呟いた。
すると、エレノア先輩が控室の中に入ってきた。
「あら、ルナさん。なんだか楽しそうですね」
「エレノア先輩!!」
フフッと、上品に笑う先輩。
お美しい!!
「先輩の試合は…」
「セド・レナードくん。私の試合は次よ。私が妹に勝ったら、貴方とね」
「俺はまだ、ケイン先輩と戦っていないが、絶対に勝つ。先輩にも勝って、決勝に行く」
「フフッ。楽しみにしているわ。じゃあ、ルナさん。またね」
エレノア先輩は小さく手を振って、控室から出て行ってしまった。
───これから、第3回戦が始まるのだと、モニターに再び、目線を向けたのであった。