目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
38話 第2回戦【ネオ・フィーネVSルーカス・グレイナ】

───1年控室


 第1回戦を突破した私は、マリアンヌたちと共に控室にて、ネオ先輩とルーカス部長の試合を、モニター越しに観戦していた。


超音波ウルトラソニック!』


 ネオ先輩が攻撃しか掛けた瞬間、ルーカス部長とネオ先輩の場所が入れ違った。


「これは部長のだ」


「スキル!?」


「おそらく、だ」


 空間操作……。


 これは、一筋縄ではいかなそうね。


 現に、ネオ先輩が自分の魔法に当たって、壁まで飛ばされ、吐血して咳き込んでいるもの。


 実に、厄介なスキルだ。


『ゲホッ……』


『ネオ。それでよく、我が部の副部長になりましたね?』


『部長が認めたんでしょうが……。ゲホッ』


『そうでしたね。でも、もう諦めたらどうですか? さっきの魔法で、鼓膜も危険な状態でしょう?』


 ルーカス部長は、何とか立ち上がるネオ先輩を見て、降参するように促した。


 だが、ネオ先輩は全く耳を貸さず、杖を構えた。


『部長。俺は諦めませんよ』


『そうですか。なら、こうするしかありませんね。四大元素エテール


 透明な杖をネオ先輩に向けると、赤・青・緑、茶の4つの魔法陣が現れた。


 赤の魔法陣からは火の玉。


 青の魔法陣からは水の玉。


 緑の魔法陣からは空気の玉。


 茶の魔法陣からは土の玉が飛び出し、ネオ先輩を襲った。


 砂が舞う会場。


 その中から、杖を真上にかざすネオ先輩の姿があった。


音壁ノーツバリア……』


『目に見えない音波による壁ですか。でも、僕の勝利ですね』


『まだ、だっ。雨雲クラウドッ!!』


 魔法を唱えるネオ先輩。


 青空が一気に雲に覆われ、次第にぽつりぽつりと雨が降り出し、結界が張られているのにも関わらず、2人の制服が湿っていく。


「あれは攻撃ではなく、補助強化魔法ね!」


「補助強化魔法?」


「そうよ。補助強化魔法は、自分や味方の魔法、身体を強化を手助けする魔法なの。例えば、その魔法を使わないと、使用できない魔法や魔法具があるとか、回復量が少ない魔法に、補助強化魔法をかければ、回復量が通常よりも倍になるとかね!」


 レオナは、補助強化について私に1から説明をしてくれた。


 私も覚えれば、使い道あるのかな? と思っていると、マリアンヌに『あれ見て!』とモニターに、指を指した。


雷鳴サンダー!!』


『補助強化魔法を使用しないと、雷魔法を使えないのは、知っていますからね。チェイン


 ルーカス部長は拘束魔法を唱え、鉄の鎖でネオ先輩を拘束し、また先輩同士入れ違い、雷鳴サンダーがルーカス部長ではなく、ネオ先輩に向かって落とされ、そのまま地面に倒れてしまった。


「ただの拘束魔法で!?」


「鉄は雷を通すのは知っているよな? スキルで自分とネオ先輩が入れ違い、その原理を使った部長の勝利だ」


 魔法も道具や只の拘束魔法だけでも、相手の属性を利用して勝利すこともあるのだと、改めて思い知り、胸の奥にとどめた。


『そこまで! 勝者、ルーカス・グレイナ!!』


 ルーカス部長が勝っちゃった…。


「ルナちゃんファイト!!」


 マリアンヌに笑顔で言われた途端、私はレオナに向かって突進した。


「レオナぁぁぁぁぁ!!」


「ぐふっ……。痛いわよ、ルナちゃん」


「レオナそこ代われ。今すぐに」


「うん。セドちゃん? ガチトーンやめて?」


 レオナは、セドにそう言いながら、私の頭を撫でた。


「レオナ」


「セドちゃ」


「レオナ」


「……ルナちゃん。セドちゃんにも行ってあげて?」


 困った顔をしながら、頼んでくるレオナ。


 だけど、レオナママから離れたくない私は、抱き着く力を強くし、イヤイヤと首を振った。


 すると、セドは何故か壁に片手をつき、1人悶絶し始めた。


「セドちゃんってば……」


「ルナがイヤイヤって。天使か?? そんでもって、無防備すぎないか?」


「ルナちゃんの師匠みたいだねぇ~」


 私をよしよしと慰めるマリアンヌが、セドに向かって呟くと、セドから殺気を感じた。


「あの爺……。許さねぇし、俺はあの爺とは、これっぽっちも、似てねぇからな?」


「爺って……。ふはっ!! あはははははは!!」


 笑いが止まらずに、床に転がった私を見た3人は『笑いの沸点が低いのね/か』と呟いた。


 すると、エレノア先輩が控室の中に入ってきた。


「あら、ルナさん。なんだか楽しそうですね」


「エレノア先輩!!」


 フフッと、上品に笑う先輩。


 お美しい!!


「先輩の試合は…」


「セド・レナードくん。私の試合は次よ。私が妹に勝ったら、貴方とね」


「俺はまだ、ケイン先輩と戦っていないが、絶対に勝つ。先輩にも勝って、決勝に行く」


「フフッ。楽しみにしているわ。じゃあ、ルナさん。またね」


 エレノア先輩は小さく手を振って、控室から出て行ってしまった。






───これから、第3回戦が始まるのだと、モニターに再び、目線を向けたのであった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?