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37話 第1回戦【ルナ・マーティンVSアノール・マーティン】

───第1回戦【ルナ・マーティンVSアノール・マーティン】



 ついに、ウィザード・セクト候補試験【第2試験】が始まった。


 2日間のトーナメント試合をしなくてはならなくなった私は、1回戦目にて、アノールとぶつかってしまった。


 審判は勿論、ルイさん。


 試験会場には結界が張られ、どちらかが戦闘不能…。


 つまり、相手が魔法を使えなくなるまで、解けない状態になっている。


 私たちはお互い杖を構え、ルイさんから試合開始の合図を待つ。


「これより、第1回戦を行います。よろしいですね?」


「「はい!!」」


 同時に返事をすると、ルイさんは静かに頷いた。


「では、始めッ!」


 ルイさんの合図で、私とアノールは同時に、魔法をぶつけ合った。


氷の矢アイス・アロー!」


毒の蝶ポイズン・バタフライ


 氷と毒の魔法がぶつかり合い、氷は毒によって溶け、水滴が地面に落ちて行った。


「容赦ないね。その魔法って、即死じゃなかったっけ?」


「大丈夫だ。効果は薄くしている」


「薄く出来るのね……」


「魔力のコントロールが、出来ればの話だがな。精々、身体が麻痺して動けなくなるだけだ」


 アノールの固有魔法は毒魔法ポイズン


 私の固有魔法とは、相性が最悪だ。


 どんな魔法を使用しても、毒の熱で溶けるのだから。


 それでも、攻略方法を見つけなければ……。


 すると、アノールは杖を毒々しい大剣に変化させた。


毒ノ剣ヴェノム・セイバー。こいつに触れると、傷口からじわじわと毒が回り、感覚が鈍くなってくる」


「そういうことね」


 私は毒ノ剣ヴェノム・セイバーの攻略方法を見つけ、杖を振った。


凍る雨アイスペレット


 アノールの周りに魔法を撃つが、毒ノ剣ヴェノム・セイバーに全て弾かれ、氷が溶け、水滴となって、地面に落ちて行った。


「毒の熱が、氷を溶かす」


「知ってるわよ」


「じゃあ何故、攻撃をやめない?」


「そりゃあ、こういうことよ」


 凍る雨アイスペレットを、アノールに向けて撃つことをやめない私に、疑問を持ったアノール。


 でも、疑問に思うのが少々遅かったみたいね。


 アノールの毒ノ剣ヴェノム・セイバーで、溶かした凍る雨アイスペレットが水溜まりとなり、彼の足元が水浸し状態となった。


 これを待っていた!!


絶対零度アブソリュードゼロ!!」


 足元の水溜まりが、一気に凍る。


 ついでに、毒ノ剣ヴェノム・セイバーにも氷が溶けて、水滴がついている部分から凍り、毒ノ剣ヴェノム・セイバーごと凍り付いた。


 アノールは舌打ちをし、顔をしかめた。


「ッチ…」


「これでお終い!!」


 私はアノールに向かって走り出し、凍っている毒ノ剣ヴェノム・セイバーを奪い取り、首元に突き付けた。


「チェックメイト」


「そこまで!! 勝者、ルナ・マーティン」


 アノールに勝利した私は、氷を溶かし、毒ノ剣ヴェノム・セイバーが杖に戻ったため、持ち主に返した。


「ルナ。よく頑張ったな。お前の勝ちだ」


「アノール……」


「お2人とも、よく頑張りましたね。怪我もなく、良かったです」


 ルイさんは私たちの元に駆け寄り、安堵の笑みを浮かべた。


「ルイ様」


 すると、アノールはルイさんに申し訳なさそうな表情を見せたが、ルイさんは首を左右に振り、アノールの頭に右手を置くと、アノールは驚いた顔をした。


「アノール。流石、私の自慢の弟子です。これからも、励みなさい。楽しみにしていますよ」


「ッ…!? はい!」


 アノールはルイさんに頭を下げ、結界が解けたのち、会場から一足離脱した。


「さて、ルナさん」


 アノールを見送った後、ルイさんは私の名前を呼び、身体をこちらへ向けた。


「はい」


「1回戦、突破おめでとうございます。次まで、控室でゆっくりしていてください。勿論、控室では他の候補者の試合が見れますよ」


「分かりました。では、これで失礼します!」


 ルイさんにお辞儀をし、マリアンヌたちがいる控室へ向かった。



───1年控室


「ルナちゃーん!!」


 控室の前に着いた私は、部屋の中へ足を踏み入れようとした瞬間、マリアンヌが部屋から飛び出してきて、受け止めるように抱きしめた。


「おっと…。マリアンヌ危ないわよ?」


「アノール先輩に、勝ったわね~!」


「レオナにセド!」


 マリアンヌ後ろに、レオナとセドが立っていた。


 私は扉を閉め、控室の中へ入った。


「心臓止まるかと思ったよ~」


「マーちゃんったら。アタシの腕、離さなかったんだからね」


「ご、ごめん?」


「ルナが謝る必要ないだろ……」


 セドの言う通りな気がする?


「改めて、1回戦突破、おめでとうルナちゃん!」


「ありがとう! マリアンヌ!」


「次の試合は……」


 セドは、モニター画面を見つめた。


「ネオ先輩とルーカス部長だね!」


 モニターに映っている、トーナメント表に目を向けると、私の線が赤くなっていた。


「勝ったからだな」


「ネオ先輩か、ルーカス先輩のどちらかが勝てば、ルナちゃんと戦うことになるねぇ~」


「せめて、ネオ先輩がいい」


 私は即答でネオ先輩の方がいいと答えた。


「無理じゃねぇか?」


 腹の立つ声が聞こえ、後ろを振り向くと、扉に寄りかかって、両腕を前に組んで立っている、レオン先輩の姿があった。


「レオン先輩!?」


「よぉ~」


「ケイン先輩、どういうことかしら?」


「そうだよぉ~」


 レオナとマリアンヌがレオン先輩に詰め寄ると、真剣な顔でルーカス部長の実力を教えてくれた。


「あいつの固有魔法は、特殊だからな」 


「特殊?」


「あぁ。属性が関係ないんだよ」


 それはそれで、こっちが不利になることも無いってことにもなるわね。


「言っておくが、ルーカス自身が不利になることなんてありえねぇよ。。それだけは、忘れるな」


 レオン先輩は私にそう言って、控室から出て行ってしまった。


 ……。


 その一言だけで意味が分かり、第2回戦が始まるモニターに目線を向けたのであった。

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