───ウィザード・セクト候補試験・第1試験
ウィザード・セクト候補試験が始まり、第1試験でレオン先輩と組むことになった私。
試験を合格するために、魔法書を1つ獲得しなければならないため、試験会場である、ハシバミの洞窟内を歩いていた。
「どれでもいいから、魔法書見つけたいよなぁ~」
全く見つからない魔法書に呆れていたレオン先輩は、両腕を頭の後ろに組みながら、私に話しかけてきた。
「ですね。でも、レオン先輩の固有魔法は雷なんですから、雷の祠を見つけたいです」
「おっ! 俺のためにか?」
「私の固有魔法に合う祠がないので、という意味です。だーれが、貴方のためだといつ、どこで言いましたか?」
私はそう言い放つ矢先、マリアンヌとブレス先輩が目の前で、草が生い茂っている祠らしきものの前に、佇んでいた。
「マリアンヌー!」
「ルナちゃん!」
「よぉ、ライ。この祠はなんだぁ?」
「おっ、レオンにルナちゃんじゃないか! 分からん!」
分からないんかい!
「でも、この草の中に魔法書がある気配は感じるな? 譲れねぇよ!」
レオン先輩は、ブレス先輩に杖を向け、ブレス先輩も炎の杖を取り出した。
「こっちもだぞ!」
「絶対に、俺なんか勝てねぇよ」
「ルナちゃん」
マリアンヌも花で出来た杖を取り出し、杖を振った。
次の瞬間、私は桜の花びらに囲まれてしまった。
周りが見えない中、私も氷で出来た杖を取り出し、詠唱をした。
「
氷の結晶が、マリアンヌの杖を持つ手に張り付き、段々と右手を凍らせていった。
杖も凍ったおかげで魔法も解け、花びらが視界から消えていく。
私はさらに詠唱し、マリアンヌを傷つけないように戦闘不能にした。
「
マリアンヌの周りに氷の矢を放ち、彼女を囲んで、足を凍らせた。
「ごめんね。私も負けてられないんだ」
「ううん。気にしないで。ルナちゃんの勝ちだよ」
謝る私に、マリアンヌは笑顔でそう言ってくれた。
この勝負は私の勝利となった。
*
一方、レオン先輩とブレス先輩の戦闘は、レオン先輩の圧勝だったらしく、電撃を受けたのか、震えを押さえるように、左手首を反対の手で掴み、跪いているブレス先輩の姿があった。
同じ場所にいたというのに、全く気づきもしなかった。
しかし、震える左手にはまだ杖を持っており、もう一度杖を振るおうとした瞬間、レオン先輩はとどめを刺すかのように詠唱した。
「
ブレス先輩の間上に魔法陣が現れ、落雷が落とされ、そのままブレス先輩は前に倒れ込んでしまった。
「容赦ない……」
「あたりめぇよ。容赦してたら、合格できねぇだろうが」
「まぁ……」
「それに、この祠のことだがよ。お前さんに、ふさわしい魔法書があるみたいだぜ?」
レオン先輩は祠に指をさし、私にそう言ってきた。
「どうして分かるんですか?」
「俺のスキルのこと、忘れたとは言わせねぇぞ?」
そうか、レオン先輩のスキルは【魔眼】。あらゆる物を見抜ける力があるんだった。
「【魔眼】ですね」
「そうだ! 真ん中がよー。あからさまに、草の量が多い。そこに手をつけ。んで、解呪魔法を唱えろ」
か、解呪魔法!?
えーっとなんだったっけ? 授業で習ったよね??
解呪魔法の詠唱を忘れてしまった私は、必死に思い出すように目を閉じると、目の前が光に覆われ、白いワンピース姿の少女が私を抱きしめ、耳元にこう呟いた。
『汝の呪いを今こそ解き放て
少女は解呪魔法を呟くと、光は消えると共に、少女も消えて行ってしまった。
目を開けると、手をついた場所から草が消滅していき、祠の中から純白な1冊の魔法書が現れた。
その魔法書を手に取った私は、お日様の温かさを感じ取った。
「温かい……」
「【
それって、【転生者】が
「な、なななななんで!?」
「知らねぇよ!! まぁ、とにかく。お前が持ってた方がいいな。その魔法書も、お前がいいみたいだし」
「ルナちゃん!」
レオン先輩とたあたふたしていると、氷が溶けたのかマリアンヌは、こちらに駆け寄ってきた。
「マリアンヌ……」
「ルナちゃん! 絶対に合格してね! 私、ルナちゃんのこと、ずっと見守ってるから! 応援してるから!!」
マリアンヌは、私の左手を力強く握った。そんな、真剣な彼女のホワイトチョコレート色の瞳を見つめ返した。
「ありがとう。マリアンヌ! 私、頑張る!!」
力強く頷くと、マリアンヌは満面な笑みを浮かべた。
すると、第1試験の終了を知らせる鐘の音が聞こえた。
鐘の音が響き渡った後、ハシバミの洞窟から1番最初にいた、試験会場に転移した。
そして、目の前にルイさんが立っていた。
「これによって、第1試験を終了とさせていただきます。魔法書を獲得できなかった者は、不合格となります。明日、第2試験を行いますので、ゆっくり休んで、合格者は明日に備えてくださいね」
───こうして私は、第1試験を合格することに成功し、皆の元へ駆け寄ったのであった。