───1年控室
夏休み期間が終わり、あの後、候補試験前テストがあり、何とか上位に立つことに成功した私。
それから、1週間後。
ついに待ちに待った、ウィザード・セクト候補試験の幕が開けようとしていた。
ブレス先輩やエレノア先輩。
そして、マリアンヌにセド。
レオナは試験を受けなかった。どうやら興味がないらしい。
勿論、その他の成績が良い生徒たちも参加している。
夏休み期間に、セドとアランさんに告白をされ、返事をしなければならなくなった。
だが、今はそれどころではない。
セド自身も緊張しているみたいで、いつもより口数が少ない。
そんなセドに声をかけると、肩をビクッと跳ねた後、顔を振り向かせた。
「ルナ……」
「緊張しすぎよ? 人のこと言えないけどね。でも、大丈夫! 第1試験はチーム戦らしいから、お互い頑張ろう!」
「フッ。そうだな」
緊張が解れたのか、笑みを浮かべたセド。
ほんの少し、胸の奥が苦しくなったのは、ここだけの話。
そして、私たちはウィザード・セクト候補試験の会場へと向かった。
*
───ウィザード・セクト候補試験会場
候補試験の会場は、編入試験と同じ場所。
そこに、アノールやブレス先輩たちの姿があった。
彼らも参加していることは、元から知っていたけど、こうやって改めて周りを見渡してみると、皆、夢を持って、その夢を叶えるために、この試験を受けているのだと思うと、私なんかが合格できるのかと、不安になってくる。
そうやって心の奥底で思っていると、ルイさんが私たちの前に姿を現した。
「これより、私。ルイ・マーティンが、ウィザード・セクト候補試験を、開始することを宣言します。
まず、本日の試験内容について説明させていただきます。試験は3日間行われ、第1、第2、第3と分けて行います。そして、第1試験はチーム戦となります」
ルイさんが説明し始めると同時に、白色の杖を一振りすると、今までいた会場ではなく、どこかの洞窟に転移させられた。
「皆さんをハシバミの洞窟と呼ばれる場所へ転移させました。この洞窟には4つの祠があります。
【炎の祠】【水の祠】【雷の祠】【癒しの祠】。
祠には、それぞれの魔法書が置いてあります。その魔法書を各チーム1つ所有することで、合格といたします。では、2人1組で組んでもらいますので、私が名前を呼んだ生徒は、前に出てきてください」
第1試験のチーム決めが始まり、私とレオン先輩がチームとなり、その他のチームはこうなった。
───セド&アノール
───ルーカス部長&ユノ先輩
───ブレス先輩&マリアンヌ
───エレノア先輩&ネオ先輩
チーム決めが終わり、私は1人絶望していた。
ここにきて初見から、レオン先輩と一緒だということ。
それは、最悪とも呼べる。
レオン先輩は私に近寄り、『よろしくな』とニヤついて言ってきた。
「よろしくお願いします先輩。あと腹立つので死んでください」
ニコッと笑みを返した。
「言うようになったじゃねぇか! 良いことだ!」
「なんかムカついたんで」
「頑張ろうぜ! 不思議ちゃんよ~!」
多分、周りからしたら『会話が成り立ってない!』と思われてそうなくらい、嚙み合わない。
まぁ、冗談はここまでにして。
「先輩と組んだのなら、必ず魔法書を獲得して、合格しましょう!」
「分かってるぜ!! 任せな!!」
なんだかんだ私たちは、気が合うのかもしれないと、そんなことを思っている矢先、試験開始の合図である鐘の音が鳴り響いた。
「それではご武運を!! 始め!!」
───こうして、ウィザード・セクト候補試験が今、開幕したのだった。