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33話 候補試験前の思い出作り-後編-

───次の日。


 昨晩さくばん、女子会をやって、意外と盛り上がっていたところをルイさんに『寝なさい』と言われ、第1回目であろう女子会が終了した。


 そして、次の日の早朝。


 私は、マリアンヌたちと共に、街へと出かけた。


 買い物をしたり、小物を見たりと生前、友達やクラスメイトと遊んだことのない私にとって、この出来事や時間は、貴重なものとなっていった。



───昼


 カフェで昼食を取った後、レオナとマリアンヌは突然、席から立ち上がった。


「セドちゃん! がんば!!」


「おい、レオナたちはどこに行く? それに何を頑張るんだ?」


「アタシとマーちゃんは、コスメを見に行ったりする約束をしてるから、ルナちゃんとセドちゃんで、ゆっくり過ごしてねっ! あと、何を頑張るのか、セドちゃん次第よ~!」


「そうだよぉ~。ルナちゃん! お土産待っててね~」


 マリアンヌとレオナは、キャッキャウフフと手を繋ぎ、スキップをしながら、カフェから出て行ってしまった。


 セドは心当たりがあるのか、頭を抱えながら、ため息を深くついた。


「はぁぁぁぁぁぁぁ…」


「えっ、大丈夫?」


「なんでもねぇよ。それで、貴様はどこか行きたい場所はないのか?」


 セドはコーヒーをすすりながら、私に尋ねてきた。


 行きたい場所ね……。と、暫く悩んでいると、ある場所にセドを連れて行きたいと思い、セドに言うと、コーヒーカップをテーブルに置いた。


「そんな所、あるのか?」


「あるから、私がいるんだよ。だからさ、にいこ!」


 私たちはカフェを出て、へ、向かうことになった。


 道中、人の気配を感じながらも、目的地へと歩いた。



───1時間後


 私の言う、に着き、その美しさにセドは、驚きを隠せずにいた。


「貴様が言う場所か……。美しいな」


「でしょ? 私が初めて、この世界に転生した時の場所。氷の結晶で出来た洞窟よ。私のが創り上げたんだって。この身体の持ち主を想ってね」


「……そうか。1つ気になったんだが」


 セドは私の方に身体全体を向け、こう言った。


「貴様……。いや、は転生者で、この先。あの言い伝えのような未来が訪れて、【呪い】を受けたとしても、俺たちのそばにいてくれるのか?」


 どこか寂しそうで、悲しそうな表情を見せたセド。


 私の覚悟は決まっている。


 アランさんと出会った頃から。





 だから、この答えは──。

















「勿論だよ。君たちがいるのであれば、私の存在意義もあるし、なにより居心地が良いし。マリアンヌは優しいし、レオナは何でも教えてくれて、セドは……」


「お、俺は?」


「うーん、1番頼れる? 言ってしまえば、私たちの中でも1番実力もあるし、常識人だし。初めて出会った頃は最悪だったけど、今となっては、良い思い出だよ!」


 私は、ありのままに思っていることを素直に話すと、口を右手で押さえながら目線を背けた。


「セド?」


「俺も、ルナのこと頼れるし、なんっつーか……その」


「ん?」


 セドの顔を覗き込もうとした瞬間、私の右手首を掴まれ、彼の胸元に抱き寄せられた。


 一瞬の出来事に混乱していると、セドはいつもより小さい声量で、声を震わせながら言葉を発した。


「1度しか言わない……からな」


「う、うん?」


「ルナ・マーティン。俺はが好きだ。だから、俺と付き合ってくれ」


「ふぇ!?」


 久々に変な声が出てしまった私は、恥ずかしくてしょうがなかった。


 初めての告白。


 どんな顔をして、今度からセドと会えばいいのか分からない。


 あの戦闘狂(仮)のセド・レナードが、私のことを……。


 今の私の顔は、昨晩のシュネーみたいに、林檎の様に顔が赤くなっているのだろうと思っていると、私の瞳がセドの黒い瞳に映った。


「ルナがどんな姿になったって、俺は想い続ける。


「せ、セド……」


「アランという魔術師ばかり見てないで、俺のことも見てくれ、ルナ。じゃないと、おかしくなりそうだ」


 抱きしめているセドの腕が、一段と強くなった気がする。


 セドの心臓の音が、段々早まっている。


 本人は、隠しきれていると思っているが、呼吸音も乱れているため、全てお見通しだ。


「それに、宣戦布告にもなると思うしな。そこにいるんだろ?」


 セドはそう言うと、後ろからの気配を感じた。


「僕のルナに、手を出さないでくれるかい?」


 透き通る声。


 振り返らなくても分かる。



───そう。アランさんだ。



「抜け駆けだと思っているのか?」


「勿論だとも。クソガキ」


「フン。告白したもん勝ちだろう?」


 アランさんとセドは、バチバチと火花を散らしながら睨み合っている。


 身動きの取れない私は、この状況をどうやったら乗り越えられるのかを模索していた。


 だが、それは諦めるしかなくなった。


「仕方がない。僕も言うとするかね。ねぇ、ルナ」


 アランさんは私の名前を呼ぶと、後ろから私に近寄り、左人差し指と親指で顎を持ち上げ、自分の方に顔を向かせた。


 何時ものアランさんとは違う、大人の色気がある雰囲気を漂わせ、私を口説き始めた。


「ルナ。僕ね、君のことが好きだ。初めて出会った頃から」


「あ、アランさん…」


「ルナ、僕を選んで。こんなガキじゃなくて、僕を」


 今日、男性2人から告白されてしまった私。


 1人はクラスメイトであり、ライバルでもある男性に。


 2人目は、『破滅の魔術師』である師匠に。


 初めての出来事に、ますます混乱し、頭を悩ませた結果。


 私は2人にこう言い放った。


「今日のところは、お引き取り願います!!!」


 と。


 すると、2人は私から離れ、了承してくれた。


 だが、その後が大変だった。


 その日はマリアンヌとレオナに詰め寄られて、今日の出来事を強制的に吐かされ、ルイさんやアノールにドン引きされ、たまたまルイさんの家にいたシュネーは、その話を聞き、アランさんの殺害計画を企てようとしていたので必死に止めた。


 アランさんに惚れたのは惚れたさ!


 それは師として!


 弟子を想う師だって思ってたさ!


 でもとしての話だというのは初耳だし、そんな素振りもなかったし!


 ミサンガの意味だって知りもしなかった。


 セドに関しても!


 ライバル視してたのかと思っていたら、こやつもアランさんと同じ気持ちだったんだって。


 セドも、アランさんと同じでそんな素振りなかったじゃん!! と皆に言うと、何故か呆れられた。



───次の日。


 学園に戻って、夏休み期間なのに帰省していなかったレオン先輩に、そのことについて相談をすると……。


「鈍感すぎねぇ? 不思議ちゃんよぉ…」


 と言われた。


 鈍感なのかしら? 


 しかも、アドバイスはなく、『まぁ、頑張りな?』と他人事のようにあしらわれたため、氷漬けにしてきた。




───相談する相手、間違えたな~と思いながらも、今日もどちらを選ぶのか、悩みに悩んだ私だったのであった。

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