───次の日。
そして、次の日の早朝。
私は、マリアンヌたちと共に、街へと出かけた。
買い物をしたり、小物を見たりと生前、友達やクラスメイトと遊んだことのない私にとって、この出来事や時間は、貴重なものとなっていった。
*
───昼
カフェで昼食を取った後、レオナとマリアンヌは突然、席から立ち上がった。
「セドちゃん! がんば!!」
「おい、レオナたちはどこに行く? それに何を頑張るんだ?」
「アタシとマーちゃんは、コスメを見に行ったりする約束をしてるから、ルナちゃんとセドちゃんで、ゆっくり過ごしてねっ! あと、何を頑張るのか、セドちゃん次第よ~!」
「そうだよぉ~。ルナちゃん! お土産待っててね~」
マリアンヌとレオナは、キャッキャウフフと手を繋ぎ、スキップをしながら、カフェから出て行ってしまった。
セドは心当たりがあるのか、頭を抱えながら、ため息を深くついた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ…」
「えっ、大丈夫?」
「なんでもねぇよ。それで、貴様はどこか行きたい場所はないのか?」
セドはコーヒーを
行きたい場所ね……。と、暫く悩んでいると、ある場所にセドを連れて行きたいと思い、セドに言うと、コーヒーカップをテーブルに置いた。
「そんな所、あるのか?」
「あるから、私がいるんだよ。だからさ、
私たちはカフェを出て、
道中、人の気配を感じながらも、目的地へと歩いた。
*
───1時間後
私の言う、
「貴様が言う場所か……。美しいな」
「でしょ? 私が初めて、この世界に転生した時の場所。氷の結晶で出来た洞窟よ。私の
「……そうか。1つ気になったんだが」
セドは私の方に身体全体を向け、こう言った。
「貴様……。いや、
どこか寂しそうで、悲しそうな表情を見せたセド。
私の覚悟は決まっている。
アランさんと出会った頃から。
だから、この答えは──。
「勿論だよ。君たちがいるのであれば、私の存在意義もあるし、なにより居心地が良いし。マリアンヌは優しいし、レオナは何でも教えてくれて、セドは……」
「お、俺は?」
「うーん、1番頼れる? 言ってしまえば、私たちの中でも1番実力もあるし、常識人だし。初めて出会った頃は最悪だったけど、今となっては、良い思い出だよ!」
私は、ありのままに思っていることを素直に話すと、口を右手で押さえながら目線を背けた。
「セド?」
「俺も、ルナのこと頼れるし、なんっつーか……その」
「ん?」
セドの顔を覗き込もうとした瞬間、私の右手首を掴まれ、彼の胸元に抱き寄せられた。
一瞬の出来事に混乱していると、セドはいつもより小さい声量で、声を震わせながら言葉を発した。
「1度しか言わない……からな」
「う、うん?」
「ルナ・マーティン。俺は
「ふぇ!?」
久々に変な声が出てしまった私は、恥ずかしくてしょうがなかった。
初めての告白。
どんな顔をして、今度からセドと会えばいいのか分からない。
あの戦闘狂(仮)のセド・レナードが、私のことを……。
今の私の顔は、昨晩のシュネーみたいに、林檎の様に顔が赤くなっているのだろうと思っていると、私の瞳がセドの黒い瞳に映った。
「ルナがどんな姿になったって、俺は想い続ける。
「せ、セド……」
「アランという魔術師ばかり見てないで、俺のことも見てくれ、ルナ。じゃないと、おかしくなりそうだ」
抱きしめているセドの腕が、一段と強くなった気がする。
セドの心臓の音が、段々早まっている。
本人は、隠しきれていると思っているが、呼吸音も乱れているため、全てお見通しだ。
「それに、宣戦布告にもなると思うしな。そこにいるんだろ?」
セドはそう言うと、後ろから
「僕のルナに、手を出さないでくれるかい?」
透き通る声。
振り返らなくても分かる。
───そう。アランさんだ。
「抜け駆けだと思っているのか?」
「勿論だとも。クソガキ」
「フン。告白したもん勝ちだろう?」
アランさんとセドは、バチバチと火花を散らしながら睨み合っている。
身動きの取れない私は、この状況をどうやったら乗り越えられるのかを模索していた。
だが、それは諦めるしかなくなった。
「仕方がない。僕も言うとするかね。ねぇ、ルナ」
アランさんは私の名前を呼ぶと、後ろから私に近寄り、左人差し指と親指で顎を持ち上げ、自分の方に顔を向かせた。
何時ものアランさんとは違う、大人の色気がある雰囲気を漂わせ、私を口説き始めた。
「ルナ。僕ね、君のことが好きだ。初めて出会った頃から」
「あ、アランさん…」
「ルナ、僕を選んで。こんなガキじゃなくて、僕を」
今日、男性2人から告白されてしまった私。
1人はクラスメイトであり、ライバルでもある男性に。
2人目は、『破滅の魔術師』である師匠に。
初めての出来事に、ますます混乱し、頭を悩ませた結果。
私は2人にこう言い放った。
「今日のところは、お引き取り願います!!!」
と。
すると、2人は私から離れ、了承してくれた。
だが、その後が大変だった。
その日はマリアンヌとレオナに詰め寄られて、今日の出来事を強制的に吐かされ、ルイさんやアノールにドン引きされ、たまたまルイさんの家にいたシュネーは、その話を聞き、アランさんの殺害計画を企てようとしていたので必死に止めた。
アランさんに惚れたのは惚れたさ!
それは師として!
弟子を想う師だって思ってたさ!
でも
ミサンガの意味だって知りもしなかった。
セドに関しても!
ライバル視してたのかと思っていたら、こやつもアランさんと同じ気持ちだったんだって。
セドも、アランさんと同じでそんな素振りなかったじゃん!! と皆に言うと、何故か呆れられた。
*
───次の日。
学園に戻って、夏休み期間なのに帰省していなかったレオン先輩に、そのことについて相談をすると……。
「鈍感すぎねぇ? 不思議ちゃんよぉ…」
と言われた。
鈍感なのかしら?
しかも、アドバイスはなく、『まぁ、頑張りな?』と他人事のようにあしらわれたため、氷漬けにしてきた。
───相談する相手、間違えたな~と思いながらも、今日もどちらを選ぶのか、悩みに悩んだ私だったのであった。