───夏休み・ルイの家
ウィザード・セクト候補試験前に、夏休みが始まった私たち。
ある日、アランさんから長文の手紙(私に対する愛の告白)が届き、内容を解読すると、『夏休み期間だから1度帰って来て』という内容だと気づき、マリアンヌたちと共に、ルイさんの家に帰所した。
玄関を跨ぐと、アランさんに抱き着かれたり、アランさんとセドがにらみ合ったりと、なんやかんやあったのだった。
*
アランさんとセドの喧嘩? がやっと終わり、ただいまティータイムに突入して過ごしている。
向かいに座っているルイさんは、『学園生活はどうですか?』と私に尋ねてきた。
「楽しいですよ! みんなとこうして、一緒に居ることが、私にとって幸せです!」
ルイさんにそう答えると、マリアンヌたちは嬉しそうに笑った。
すると、アランさんが突然、泣き喚き始めた。
「ルナに、友達がでぎでよがっだ」
「アラン……。すまないね。アランはルナさんのことになると、うるさくなるんですよ。慣れてしまったルナさんを見てごらん。ほら」
「アノール、チョコサンドあるけど食べる?」
「食う」
私はアノールにチョコサンドを渡して、自分もチョコサンドを頬張った。
「慣れてるわね~」
「そうだねぇ~」
「麻痺してるの、間違いじゃないのか?」
泣き喚いた後のアランさんに、抱き着かれながらも、完全無視してチョコサンドを食べている私を、見たマリアンヌたち。
セドだけが、今日だけでも3回くらいドン引きしている。
この中でも1番の常識人なのだろう。
「もう気にしないようにしてるの。いちいちツッコんでいると、こっちが疲れるから」
「だろうな」
「えへへ」
「褒めてないが?」
セドと良く分からないやり取りをしていると、アランさんがガルルルと、セドのことを
私はそんなアランさんに、満面の笑みで顔をアランさんの方に向けた。
「アランさん? 喧嘩しないって、言ったよね?」
「あっ、はい」
アランさんは、さっきのこともあって、素直に威嚇行為をやめた。
すると、ルイさんは呆れながら頭を抱えた。
「全く…。アランも懲りないですね。ところで、ルナさん」
「何でしょうか?」
「今回の滞在期間は、どうしますか?」
そういえば、外泊届は取れたから、最低でも2日滞在しようかしら?
「2日間くらい、居てもいいですか? 迷惑でしたら、今夜にでも帰りますけど……」
ルイさんにそう言うと、首を左右に振って『そんなことありませんから、いくらでも居てください』と許可を貰った。
「ありがとうございます!」
「いいえ。アノールの部屋に、レナード君とアルフレート君の2人は、寝泊まりしてください」
「じゃあ、私の部屋でマリアンヌとお泊りだね!」
「楽しみ~!」
私の部屋でお泊りだと決まった瞬間、マリアンヌが頬擦りしながら抱き着いてきた。
マジ、可愛い! 天使!
「マーティン教授? 今夜、このリビング貸してもらってもいいかしら?」
レオナが突然、ルイさんにリビングを貸してほしいと頼んできた。
ルイさんは微笑みながら『良いですよ』と答え、許可が下りた。
「やったわ~! ルナちゃん、マーちゃん! 今夜は、女子会よぉ~!!」
「わぁ~! ルナちゃん、初めての女子会だよね~?」
「う、うん!」
マリアンヌに頷くと、レオナと顔を見合せ、ハイタッチを交わしたマリアンヌとレオナ。
「お菓子作りからしましょ!」
「それなら俺も手伝う。ルイ様よろしいでしょうか?」
「えぇ。好きにしなさい。アノール」
「ありがとうございます。ルイ様」
アノールは、ルイさんにお礼を言い、マリアンヌとレオナに腕を引っ張られ、そのままキッチンに、連行されていった私であった。
*
───夜・リビング
お菓子作りをして夕食を食べ、パジャマに着替え、大体22時頃に、再びリビングへと集まった、私とマリアンヌにレオナ。
そして、スペシャルゲストとして、この方をお呼びした。
「初めましてだわ! 私はシュネー! ルナの使い魔で、氷の妖精族よ!」
そう! 私の
彼女も、いくら妖精であろうとも女子だからね!
「私はマリアンヌだよ。よろしくねぇ~」
「アタシはレオナよ~! よろしくね! シュネーちゃん!」
「よろしくされたわ! それで、女子会って何するのかしら?」
そうか、シュネーは女子会というものを知らないのか。
「女子会というのはね~」
「コイバナをするのよ!! もちろん、お菓子を食べながらねっ!」
レオナはシュネーに片目を閉じると、一瞬体が震えたように見えた。
そして、私の耳元に飛んできて、耳打ちをしてきた。
『レオナって、男よね?』
『……乙女よ』
『なるほどね。了解したわ』
シュネーは、今ので理解したのか、これ以上追求せずに、レオナを
「さぁー!! コイバナよぉ〜!! マーちゃんは、気になっている男子いないの?」
「いないよ〜。それよりも、ルナちゃんが気になるの〜」
「アタシもよ!! それで、いるの? いないの??」
「どうせ、アランじゃないの? 私が許さないけど!」
レオナとマリアンヌは、期待の眼差しを私に向けた。
そういえば、恋愛なんて生前からしたことないし。
そう聞かれても、良く分からない。
「うーん。良く分からないって言うのが、正直なところよ。生前なんか、恋愛なんて1度もしたことないもの」
ミルクティーを飲みながら、独身だったことを明かした。
すると、この場にいた全員が、信じられなさそうな顔で私に詰め寄った。
「えぇぇぇぇぇ!? 嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ、マリアンヌ。だから、恋愛とか分からないの」
「でも、何かしらきゅんとしたことないの?」
レオナの言う通り、きゅんとしたことなんて……。
「ないけど、アランさんからこのミサンガを貰った時、ふと何故か、安心したような気がしたのと、セドと話をしていると、なんだか楽しいって思えるよ?」
「それって!? きゃぁ~!! セドちゃんファイトよぉ~!! それに、このミサンガの意味って!」
レオナは、私の左手首に結んである、赤とピンクのミサンガを見て驚いた。
「ホントだぁ~! ルナちゃん、この意味わかる?」
私は首を振ると、3人は互いに顔を見合わせ、ミサンガの意味を教えてくれた。
「赤色は情熱・勇気・仕事・勝負よ」
「ピンクは恋愛・結婚だよぉ~」
「そして、左手首に付けさせた意味は
3人から意味を教えてもらった私は、一気に体温が高くなった気がした。
「ルナちゃん顔赤いわよ!? もしかして、気になっちゃった感じかしらね~! それこそ、お・と・めの証拠よー!! キャーッ!」
「ルナちゃん。頑張って~」
「アラン許すまじ!!」
リビングが、カオス状態なんだけど……。
「セドちゃんに、勝ち目無いのかしら? どうすればいいのかしらねぇ~?」
「何で、さっきからセドが出てくるの?」
レオナの口から、何故かセドの名前が出てくるのを、疑問に思っていると、唇に人差し指を当て、『な・い・しょ!』と言われてしまった。
「私よりも、シュネーが気になるんだけど? ルイさんのこと、好きなんでしょ?」
私は、シュネーの頬を突っつきながら問いかけると、顔を林檎の様に真っ赤に染め、あわあわと慌て始めた。
「る、るるるるるるるるルイ!? なんで、そうなるのよ!!」
「だってー。ルイさんと話してるときー、幸せそうだったもの。ルイさんも……」
「私がどうかしましたか?」
後ろから、寝間着姿のルイさんが現れた。
「ルイさん!」
「女子会はいいですが、もうそろそろ寝なさい。女性は寝た方が、美容にもいいんですから」
「それもそうね。じゃ、今夜はお開きにしましょうか!」
こうして、ルイさんの言葉で女子会は終了し、物を片付けてから私たちは、自分たちの部屋に戻り、眠りについた。
シュネーも今日は、私の部屋にお泊りしていった。
───私たちが就寝した後、ルイさんはリビングで、1人顔を赤く染めて悶絶していたのであった。