目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
29話 レオン・ケインとセド・レナード

───騎士ナイト部・部室


 騎士ナイト部を見学をしに来た私たちは、部活動に参加することとなった。


 しかし、活動内容は息抜きとして自由に過ごすという、聞いたことも無い内容であった。


 部長であるルーカス・グレイナ部長か、顧問であるブライアン校長のどちらかが、部活に出席している時は、部員同士で手合わせも可能ということで。


 早速、レオン・ケイン先輩が、私に手合わせの相手として指名されたが、あまり勝負事をしたくない私は、その誘いを断った。


 その後、何故かクラスメイトのセド・レナードが、私の代わりに手合わせをすると、自然とレオン先輩とセドの手合わせという名の勝負バトルが始まってしまった。


 今のところ、雷が効かないセドが、有利な状況。


 だが、彼らの固有魔法に対する相性を気にし始めた私は、左横にいたアノールに、相性について聞くことにした。


「ねぇ、アノール」


「先輩な? んで、なんだ?」


「固有魔法にも、相性があるんだよね? 水だったら草に弱いとか。その代わり、炎に強いとかさ」


「あぁ。見ての通り、セドの固有魔法は砂。レオンは雷。優位としては、セドの方が上だろう。なにせよ、砂は雷及び、電気を通さないからな。だが、1つ工夫すれば、一挙いっきょにレオンが有利になるかもな」


 アノールは彼らに指を指し、再び私は、セドとレオン先輩に目線を向けた。


 すると、レオン先輩はローブの内ポケットから、水が入った手のひらサイズのガラス小瓶を取り出し、それをセドに投げつけた。


 避けようとしたがもう遅く、砂化となって、レオン先輩を追い詰めていた、セドの右肩にガラス瓶が当たり、ガラス瓶が割れ、ローブは濡れてしまった。


 そして私は、アノールの言葉を思い出し、セドの名前を呼んだ。


「セドッ!!」


 次の瞬間、レオン先輩はにんまりと笑みを浮かべた。


電撃イレクトゥリックショック!」


 魔法陣がセドの真上に現れ、電撃がセドに貫通した。


 膝をついたセド。その姿を確認したルーカス部長は、指を鳴らすと、結界が解けていき、私はセドに駆け寄った。


「セド!!」


「ッツ……痛ぇ」


「痛ぇって。そのほかに症状はないの!?」


「右手が痺れるだけだ。おかげで立てない」


 セドに肩を貸し、ゆっくりと立ち上がった。


 そんなセドを見かねたレオン先輩は、セドに向かって杖を振ると、ローブに染みた水が、一瞬にて消えていった。


「治癒魔法と制服。乾かしておいたぜ。一応、手加減したつもりだが、大丈夫だったか?」


 レオン先輩は申し訳なさそうに言うと、『平気だ』とセドは答え、私から離れた。


「そうかよ。だが1つ先輩としてのアドバイスだ。弱点が少なくとも、油断は禁物だ。俺みたいに、弱点をカバーする奴や、弱点を固有魔法で突いてくる奴は、たっぷり存在してやがる。

 だから、お前も魔法やら物で、カバーしてみるのもありだぜ?」


 セドはレオン先輩からアドバイスを貰うが、なんだか難しそうな表情を見せた。


「物か…。それも、ありなのか?」


 セドはアノールの顔を見て、首を傾げた。


 そして、続けてアノールは、私の顔を見ながら首を傾げた。


 そんな2人を見ていたネオ先輩が、笑いをこらえていた。


「私を見ないでよ…。レオン先輩が言っている通り、魔法でもいいと思うけどね」


「そうか。考えておこう。しかし、課題が増えたな」


「良いことですよ。課題をこなしていけば、いつかセドの夢にも辿り着くと思いますよ」


 ルーカス部長は、セドの右肩に手を置いた。


 セドは自信を持ったのか、少し表情が緩んだ気がする。


「というか、レオン先輩って意外と律儀りちぎな方なんですね!」


「お前、俺のことどう見えてたんだよ…。まぁ、いいや! 不思議ちゃんは、変な事情をお持ちらしいからな~。あとで、魔法見せてみろ。案外、課題が多いかもな!」


 レオン先輩は、ワインレッド色の瞳で私を見つめた。


 『変な事情』というのは恐らく、私の正体に気づいている。ということなのだろうか。


 いつバレたのかと、頭の中がぐるぐると回り、めまいを感じながらも、レオン先輩に対抗するようにワインレッド色の瞳を捕らえ、見つめ返していると、ユノ先輩が声を上げた。


「あ、あの! もうそろそろ、部活の終了時間になりますけども……」


「そうですね。それでは、本日の部活動を終了とします。来月またこの場所で、お会いましょう」


 ルーカス部長の言葉を終了の合図とし、部活動は無事に終わりを告げた。




「それで、セドとルナは部活に入るのか?」


 ユノ先輩とネオ先輩がいなくなった後、アノールは私たちに問いかけてきた。


「私は、校長に入部届け出されているから、半強制だよ。だから部活に入る。セドはどうするの?」


「俺もこの部活に入る。だが、候補者として認められないと、部活には入れないんだよな?」


 推薦を貰っていないセドは、悔しそうに唇を噛んだ。


 すると、レオン先輩がある発言をした。


「候補者だろ? 俺が推薦してやる。それでいいだろ。ルーカス部長よぉ?」


 レオン先輩はルーカス部長にそう言うと、部長は深いため息をついた。


「ふぅ……仕方ありませんね。今日からルナ・マーティンとセド・レナードは、この騎士ナイト部の部員として登録しておきます。来月から、部員として参加してください。

 部活に参加できない時は、ネオや僕。無理であれば、レオンやユノに伝えてください」


「ありがとうございます!」


 私とセドは、騎士ナイト部の部員として認められた。


 これから待ち受ける、ウィザード・セクト候補試験に臨むため、あらゆる課題をこなしていくことになるのであった。






───そして、数日後。私はレオン先輩に呼び出されることを、まだ知らずにいたのであった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?