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28話 騎士部-後編-

───前回のあらすじ 


 ウィザード・セクトの候補者が集う騎士ナイト部の部室を訪れた私たち。


 だが、部室は編入試験の際に使用した森の奥底にある教会が、部室だったということを知り、中へ入るとルーン寮のレオン・ケインに、何故か気に入られたりと色々あったが、何とか部長のルーカス・グレイナから、活動内容や部員の紹介をされることとなったのであった。



───騎士ナイト部・部室


 私は、今騎士ナイト部の部室である教会の中で、アノールとセドの間にある椅子へと腰を下ろし、出された紅茶を静かにゆっくりと飲み進めながら、ルーカス部長から部員の紹介を受けていた。


「まず、僕とレオンの紹介は終えていますので、次はユノ。お願いします」


 ユノと呼ばれた、紫色のボブヘアが特徴的で、小柄な女子生徒が椅子から立ち上がり、ぽつぽつと小さな声で、自分の名を名乗り始めた。


「は、初めまして。私はユノ。ユノ・カトレア、です。ネオと同じ学年。り、リオール寮2年生」


 って、もしかして? と思った私は、ユノ先輩に問いかけた。


「もしかして、エレノア先輩の様でしょうか?」


 と先輩の名前を出すと、ユノ先輩は肩をビクッと震わせた。


 聞いちゃダメだったのかもしれないと悟った私は、すぐさま頭を下げて謝った。


「申し訳ございませんでした!!」


「い、いえ。大丈夫……」


「ユノはエレノアの妹。あまり、エレノアの話を彼女の前で話すの……。分かってくださいますか?」


 ルーカス部長に、意味深なことを言われた私は、大人しく頷いた。


「ご理解ありがとうございます。ユノ、固有魔法を教えてあげなさい」


「こ、固有魔法は風魔法ウィンドです…」


 ユノ先輩は俯きながら、自分の固有魔法を話し終えると、静かに椅子に座った。


「ユノ、紹介ありがとうございます。それでは、お2人もお願いしますね」


 ルーカス部長は、私たちの方に顔を向けた後、ティーカップに口をつけた。


 私とセドは互いに顔を見合わせ、椅子から立ち上がった。


「セド・レナードだ。固有魔法は砂魔法サンディだ」


「もう少し、なんか言ったらどうなのよ……。初めまして、私はルナ・マーティンと申します。固有魔法は氷魔法アイスです! よろしくお願いします!」


「さて、みんなの紹介が終わりましたね。この騎士ナイト部は、1ヶ月に2回だけの活動となっている。今月は、もうこれで2回目ですので、次の活動日は来月となります。活動内容としては、こうして自由に会話をしたり、気を休めるというのが活動内容。

 騎士ナイトになるためには、ウィザード・セクト候補試験を受けなければなりません。試験による精神面や学業の両立などによって受ける疲労で、体調を崩したり、試験を受けるのをやめるという選択肢が出で来ないように、敢えて候補者はこの部活の時だけ、できるだけ自由に気を休めてほしい。そんな校長の願いを叶えた部活なんですよ」


 校長……。


 そこまで考えていたんだ。


「部活の時に、こうして顔を見合わせ、何度も会話をしたりして、互いを知っておけば、試験の時に何かしら攻略ヒントになると僕は思っている。だから、部活の時には手合わせをしてもいいルールにしたんだ。校長はもちろん許可を出してくれた。手合わせの時は、僕や校長が出席している時だけですけどね」


「そうなんですね。それで、今日は?」


「自由にして構わないですよ。僕がいるので、手合わせをしてもいいですし」


 ルーカス部長はそう言うと再び、ティーカップに口をつけた。


 部長の前の席にいるレオン先輩は、真っ先に私の顔を見てきた。


「手合わせしようぜ! ルナ・マーティン!!」


「えぇー。今日は、ゆっくりしたいです!」


 レオン先輩の誘いを断ると、両腕を頭の後ろに組んで『つまんねぇ~』と呟いた。


 すると、私の右横にいたセドが、椅子から立ち上がり、砂で出来た杖を構えた。


「ケイン先輩。俺と手合わせしないか?」


 セドに誘われたレオン先輩は最初、目を見開いて驚いていたが、雷で出来た杖を取り出し、ニヤッと口元を緩めた。


「いいぜ! そんなら、始めようぜ!!」


 レオン先輩がそう言うと、椅子とテーブルが消えた。


「こちらには魔法が飛んでこないように、結界が張られていますから、安心してください。手合わせの際は、教会ごと戦えるようになっているんですよ。ちなみに、結界を張れるのは、というのはお忘れなく」


「だから、部長かブライアン校長がいない時は、手合わせできないという理由なんですね!」


「えぇ」


 もしかしたら、意外と物騒なのかもしれないな、この部活。と、そんなことを思いながら、セドとレオン先輩の手合わせという名のバトルが、始まったのであった。

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