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25話 ブライアン校長と密会

───1ヶ月後


 ミステリウム魔法学園編入後、放課後に行われるアノールのスパルタ講座を受ける日々を送り、あっという間に1ヶ月の月日が流れた。


 アノールのおかげで、なんとかテストも10位以内……というか、学年で1位と学園内で2位を取ってしまった。


 そのせいで、優等生だと認識されてしまう羽目に。


 ちなみに、マリアンヌは学年で6位、学園内で18位。レオナは学年で4位、学園内で12位。セドは学年で2位、学園内で3位。


 アノールが3年生で1位、学園内で1位だった。


 そう、アノールに負けたのだ。


 悔しさで、いっぱいだったその日。何故か、ブライアン校長に呼び出され、校長室に向かうこととなった。




───校長室


「ルナ・マーティンです」


 校長室に着いた私は、扉を3回ノックし、名前を名乗ると、大きな扉がギギッと音を立てながらゆっくりと開いた。


 中に入ると、モダンなインテリアが充実しており、目の前に大きな黒色のソファーに座って、ティーカップを手に取り、『ここに座りなさい』と言わんばかりの微笑みを向ける、ブライアン・コルト校長がいた。


 私は校長の圧に負け、ソファに腰を下ろした。


 すると、ブライアン校長は指をパチンと鳴らすと、校長と同じであろう紅茶が入っているティーカップが、黒色のローテーブルの上に現れた。


「家にいると思って、くつろぎなさい」


「あ、はい!」


 いや、無理だろ!?


 仮にも、校長の前だぞ!? しかも、この国を治めている支配者(←言い方)だし! 


「どうかしたのかね? 先程から、百面相しているが……」


「いいえ、なんでもありませんいただきますきます!!」


 校長が出してくれた紅茶を一口、口の中に含むと、丁度いい甘さが口全体に広がり、味が濃いのにも関わらず、癖もなく香りも程良くて飲みやすい。


「お気に召したかね? これは、アッサムという紅茶だ。ミルクティーに近いだろう?」


「はい、近いです! というか、もうミルクティーなのでは?」


「そうだ。ストレートだと飲みにくいと思って、ミルクを足したんだ」


 そうだったんだ。今度、アノールに言って淹れてもらおう。


「今度に頼んで、アノールにも紅茶を淹れてもらおうか」


 校長が、ルイさんのことをって呼んでる!?


 しかも、アノールのことも!?


 この感じは、ただの教師と生徒の間柄ではなさそうだ。


「おっと、驚かせてしまったね。私とルイは、この学園がまだ小さかった頃の同級生なんだ。だから、アノールのことも、良く知っている」


 ということは、校長は


 ルイさんと同級生。それならば、アランさんのこともご存じなはず。


 私はブライアン校長に、アランさんのことについて聞いた。


「ルイさんと同級生であれば、アランさんのことも?」


「勿論だ。アランは人間だが、『呪い』で長年生きている。ルイは元々人間ではなく、エルフだ。エルフの特徴は寿命が長い。そして、君が察しているように、私は。時が来れば、また教えよう」


「そうだったんですね。深くは聞きませんのよ。それで、今日はどんな御用なんでしょうか?」


 私は本題を校長に振ると、思い出したかのように『そうだ』と呟いた。


「君をウィザード・セクトの候補者が集まる騎士ナイト部に、入部届を出して置いたから、明日の放課後にでも顔を出しておくと良い」


 校長の爆弾発言を耳にした私は、ローテーブルに両手をバン!! と叩きつけ、ソファーから立ち上がった。


「はぁ~!?」


「そんなに驚くことかね?」


「驚くに決まってますよ!? まず、事後報告がいけません!! というか何故、私を候補者の1人にしたのか聞きたいです!!」


 呼吸を落ち着かせながら、再びソファーに腰を下ろした。


 すると、ブライアン校長はあごに手を置きながら、こちらをじっと見つめてきた。


「な、なんですか……」


「成績優秀。しかも、稀少きしょうな氷の使い手。君なら、アランの呪いをどうにかできるのではないかって」


「呪いのことは、ご存じではないのですか?」


 私はブライアン校長が『呪い』について、何かを知っているのではないかと予測していたが、彼が首を横に振ったことによって、予測は外れてしまったんだと確信できた。


「すまないが、『破滅の呪い』の解呪方法は良く分かっていないんだ。」


「そう…でしたか」


「本当に済まない。一応言っておくが、アランは大馬鹿だ。普段はあーやってやかましいが、色々なものを背負っている。君なら、アランのことを任せられる。それを見込んで、私は候補者の1人にしたんだ」


「……あの人のこと、あまり理解できていませんが、校長の言う通り、時々思いつめたりする時があるんです。何かに囚われているような感じで。何もできない私が悔しい。あの人に、何かをしてあげたい。だから、この件引き受けましょう!」


 校長のダークチョコレート色の瞳と、私の赤い瞳が交わった。私は目線を逸らさず、真剣な眼差しで見つめた。騎士ナイト部に入部することを決意した私を校長は、口元を少しだけ緩ませ、ぬるくなった紅茶に口をつけた。


「呪いについては詳しくないが、何か分かったらその都度、ルナさんにお伝えしよう」


「ありがとうございます!」


「期待しているよ」





───こうして私は、ブライアン校長公認で騎士ナイト部に入部することとなった。活動内容が不明な部活で、生き残れるのか不安な私でもあったのだった。

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