───ルイの家・自室　

　編入試験を合格した私は、一旦ルイさんの家に戻り、今夜から学園で過ごすために、荷造りをすることにした。

　荷造りと言っても、そんなに荷物ないんだけどね。

　そして…あっという間に、ミステリウム魔法学園に向かう時間となってしまった。

＊

　玄関前で、アランさんはどこか寂しそうに、私を見つめた。

「ルナ…もう行くのかい？」

「はい。また帰ってくるので、心配しないでください。ちゃんと、お手紙も書きますから」

「うん。ルイからも、ちゃんと聞くからね！　僕はしばらく、ルイのところで世話になってるから、何かあったら頼ってね」

　アランさんは私に優しく言いながら、頭を撫でた。

「はい！　では、行って来ます！　アランさん！　いや、師匠！」

「行って来給え！」

　私とアランさんは数秒見つめ合った後、私は玄関から外の世界へと、足を踏み込んだのであった。

＊

───ミステリウム魔法学園

　ミステリウム魔法学園に辿り着いた私は、ファリス寮に向かうよう言われていたのを思い出し、荷物が入ったカバンを右手に持ちながら、ファリス寮へと向かった。

　その途中、編入試験の時に、私の膝の上で眠ろうとしていた、マリアンヌ・アイリーンの姿があった。

「マリアンヌ・アイリーンさん！」

　マリアンヌ・アイリーンは私に気づくと、ふにゃと笑った。

「ルナちゃん～」

「アイリーンさんも……試験。もしかして！？」

「合格したよ～。ルナちゃんも、合格したんだねぇ～」

　マリアンヌ・アイリーンは、嬉しそうに抱き着いてきた。

　彼女に答えるように、私も抱きしめ返した。

「可愛い！！」

「ルナちゃんも可愛いよ～」

　互いに抱き合っていると私の頭に、軽く痛みを感じた。

　マリアンヌ・アイリーンから離れ、後ろを振り向くと、そこにはセド・レナードとレオナ・アルフレートがいた。

「セド！　叩かないでよ～。今、可愛さの補給してたのに！」

「どんな補給だよ。アイリーンもファリス寮か」

「あら、女子が増えて嬉しいわ！　後で、女子会しましょ！」

　女子って。レオナは……。

　考えるのやめた。

「そうだよ～。マリアンヌって、呼んでねぇ～」

「俺はセド・レナード」

「アタシはレオナ・アルフレートよ！」

　セドたちは互いに握手を交わした後、皆でファリス寮に向かった。

＊

───５分後。

　ファリス寮内に無事辿り着いた私たちは、寮の中を見渡した。

「見学会で来たことあったけど、綺麗なところだよね！」

「そうだね～！」

　マリアンヌ・アイリーンと寮の共同スペースを見ながら呟いていると、『ルナさん』とあの美少女の声が聞こえ、横に振り向くと、アノールの同級生であり、このファリス寮の監督生であるエレノア・カトレア先輩が、本を片手に持ちながら、微笑んで立っていた。

「エレノア先輩！！」

　私はエレノア先輩に駆け寄ると、口元を右手で隠し、上品にクスッと笑われてしまった。

　その仕草が尊いせいで、倒れそうになったところを何とか耐えきり、エレノア先輩に合格したことを報告した。

「私たち試験合格しました！」

「おめでとうございます。それで、このファリス寮に来たということは？」

「ファリス寮生になりました」

　私の後ろにいたセドが、エレノア先輩に言うと、先輩も嬉しそうに口元を緩めた。

「それはそれは。では、寮の説明をしなくてはなりませんね。改めまして、私は３年A組のエレノア・カトレアです。生徒会長と、このファリス寮の監督生を務めています」

　エレノア先輩は、改めて自己紹介をした。

　私たちも先輩に自己紹介をした。

「初めまして。俺はセド・レナード。固有魔法は砂魔法サンディです」

「アタシはレオナ・アルフレートよ！　固有魔法は水魔法ウォーターで得意なことは、料理とお裁縫が得意だわ～」

　レオナの得意なこと知ってしまった…。

　完全に乙女やん！

「私は、マリアンヌ・アイリーンです～。固有魔法は花魔法フラワー。好きなことはお昼寝です～」

　本当に、お昼寝好きなんだ。

　そこも、可愛いポイントやな。

「私はルナ・マーティンです。固有魔法は氷魔法アイスになります。えーっと、好きなものは、可愛いものとお菓子です。特技は、お菓子作りです！」

「あら、ルナちゃんお菓子作りをするのね！　アタシもお菓子作りするわ～。後で作って、女子会しましょ！」

「私もやる～！」

　マ・リ・ア・ン・ヌ・とレオナは楽しそうに笑ってる。

　そんなに女子会したいんか。

　まぁ、やりたいけどね！

「その時は、私もぜひ呼んでくださいね。恋バナ好きなので」

「勿論だわ！」

　私とセド以外のメンバーは、なぜかハイタッチをした。

　セドと私は呆れながらも、その様子を見守った。

＊

　更に５分後。女子会の話が終わり、エレノア先輩は何かを思い出し、近くにあったカバンから、何かを取り出してきた。

「では、この制服を貴女方に託します。これは、ファリス寮の制服になります。今着ているのは、予備制服です。例えば、洗濯をして乾かなかったとか、破けたとかの理由であれば、着て構いません」

　先輩がカバンから取り出したのは、白色のローブと男子には黒色のズボン。

　女子には、黒色の膝関節の少し下くらいまであるスカートを渡してきた。

「明日からで、お願いしますね。それでは、ファリス寮の共同スペースについて説明しますね」

　エレノア先輩から寮の説明を受けた私たち、ルールもいくつかあったが、簡単に言うと、みんな仲良くねと言うことだった。

　そして、そこにアノールが通りかかり、アノールはセドとレオナを連れ、男子寮を案内されて行かれた。

　私たちはそのまま、エレノア先輩に女子寮を案内された。

＊

───ファリス寮・女子寮

「ここが、貴女たちの部屋となります。ルナさんとアイリーンさんは、同室になりますから、互いに助け合って生活してください。何か困ったら、私の部屋に来てくださいね。では、今日はゆっくり休んでください」

「ありがとうございました！」

　エレノア先輩は私たちの部屋から去って行った。

　これから、憧れの学園生活が始まるんだ！

　学園生活の楽しみな感情と、アランさんに言われたもう１つの試験に、合格できるかの不安な感情があるが、今はこの瞬間を味わって楽しもうと、心に誓って荷物を片付け始めたのであった。