目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
21話 ルナ・マーティンたちの寮決め

───校長室 


 第3試験を合格した私とレオナ・アルフレート。


 そして、セド・レナードはミステリウム魔法学園の校長である、ブライアン・コルト校長の転移魔法で、校長室に連れてかれた。


 ある意味、最終試験とも言える寮決めをするために、1人1人校長による質問を答えることとなった。


「これから3つの質問に答えてもらう」


「はい」


「ではまず、1つ目の質問。貴方たちの固有魔法を教えてください」


「俺の固有魔法は『砂魔法サンディ』です」


「アタシは『水魔法ウォーター』です」


 セドとレオナは、自分の固有魔法を校長に答えた。


「ルナ・マーティン」


「は、はい! 私の固有魔法は『氷魔法アイス』です」


 名前を呼ばれ、私は固有魔法を答えた。


 すると、ブライアン校長は、小さく頷いた。


「では次の質問。貴方たちの夢を教えてください」


「俺の夢は…弱者を救うこと。それが、俺の夢です」


「アタシの夢は、皆好きなことを、言葉に出せる世間へと変えることよ!」


 セドとレオナは、何の迷いもなく、自分の夢を答えた。


 2人とは違って私は、少し迷っていた。


 アランさんの『呪い』を解く。


 それが夢。


 だけど、それは


 正直、私の夢はない。自由に暮らせるだけでいい。


 そのために、アランさんの『呪い』を解いて、その後は自由に暮らす。


 アランさんにも、自由になって欲しいし。


 それが、私のだ。


 自分に夢を見つけるまでは、このとして答えていいのだろうか?


 少し、自分の中で整理したのち、ブライアン校長にポツリポツリと、静かに答えた。


「夢は…ある人の呪いを解いた後、自由になることです。その人は私の師で、とある呪いにかかっているんです。その呪いを私が解いた暁には、私も師も自由に過ごせることが、私の唯一の夢です」


 校長の目を真っ直ぐ見つめ、自分の夢を語った。


 すると、校長は何かを考えるように両腕を前に組んだ。


「そうですか。では、最後の質問。何故、この学園に来たのかを教えてください」


 もちろんそりゃ!


「「「を実現させるためです!!!」」」


 私たちの考え方が同じだったらしく、一斉に答えると校長は眼鏡の位置を直し、私たちにこう告げた。


「合格です。貴方たちは、今日からファリス寮の寮生となり、この学園の生徒として認めます。改めましておめでとう。セド・レナードにレオナ・アルフレート。そして、ルナ・マーティン」


 私たち3人は、ファリス寮の寮生として認められた。


 歓喜極まって、セドとレオナとハイタッチをしていると、校長の横に魔法陣が浮かび、そこからルイさんが私たちの前に現れた。


「ルナさん達、改めましておめでとうございます。そして、ようこそミステリウム魔法学園へ」


「ありがとうございます!!」


「今日から寮生活になりますので、一旦解散しましょうか。5時間後、ファリス寮に来てください。監督生を呼んでおきますので」


 こうして私たちは試験に合格したため、一旦家に帰ることとなった。


 ルイさんはまだ試験官として残るため、私だけがルイさんの家へと向かうこととなった。



───ルイの家


 ルイさんの家に帰り、玄関の扉を開けようとドアノブを引くと、次の瞬間。アランさんが、玄関から飛び出して、抱き着いてきた。


「ルナァァァァァ!!」


「やかましいわ! この変態魔術師!」


 アランさんの鳩尾みぞおちに拳を入れると、吐血しながらその場に倒れてしまった。


「やりすぎたか?」


「全く大丈夫さ! これも、ルナからの愛情表現だと思ってるから!」


 アランさんはすぐに立ち直り、右の親指を立てた。 


 こわっ。


 ストーカーになりそうな気がする…。


 てか、もう手遅れか。


「とりあえず中に入りますから、どいてくれませんかね?」


「えぇー」


 まぁいいや。


 立ち直って私の腰をホールドしてきた変態魔術師アランさんを、このまま引きずりながら、中へ入ることにした。


 家の中に入った後、変態を何とか振りほどき、自分の部屋に戻ろうとしたが、何故かおまけでアランさんも付いてきた。


「女子の部屋ですよ? 用事がない限り、入らないでくださいよ変態!」


「変態だなんて…褒めてくれるんだね! ありがとう! 結婚する?」


「いやしねぇよ! 褒めてもないし!」


 アランさんは人には見せてはいけない表情を見せた。


 犯罪臭するんだけど!?


 ルイさんもアノールも不在だし、怖いよー!


 目の前にいる犯罪者になろうとしている師の背中を押し、部屋の外に押し出した。


「いいから出て行って!! じゃないと、もう2度とお話ししませんからっ!」


 私はアランさんに釘をさすと、ショボショボとした雰囲気をかもし出しながら、渋々出て行ってくれた。



 1時間後。身支度を終えた私は、アランさんがいるであろうリビングに向かった。


 すると、コーヒーのいい匂いが漂ってきた。


「昼食にしよう。夕飯はあっちで出ると思うから、最後の昼食を取り給え」


「最後の晩餐みたいに言うのやめません? どうせ、長期休みには帰ってこれるんですから」


 私がそう言うと、アランさんは笑った。


「ふふっ。そうだね」


「いただきます」


 アランさんの前の椅子に腰を下ろし、目の前に出されたホットサンドと野菜サラダを食べ始めた。


 ホットサンドの中身はチーズとハムが入っていて、身体にしみわたって美味しい。


 生前は、ホットサンドなんて食べなかったからな~。


 しいと言えば、サンドイッチしか食べない主義だったし。


 手軽だし、片手で食べられるからパソコン打ちながら、よく食べてたのを思い出す。


「アランさんって、料理できるんですね」


「できるとも! 料理好きだからね、おやつにあとで、クッキーを作ってあげよう」


「楽しみです!」


 すると、アランさんはじーっとこちらを見てきた。


「ねぇ、ルナ。僕、心配なことあるんだけど」


「何ですか?」


 コーヒーをすすりながら、そう言ってきた。


 大事なことかな? と思っていると、予想を超えたことを口にしてきた。


「変な男についていってしまうかって…。できれば、僕だけにしといて」


「へっ!?」


 アランさんはそっぽを向いた。


 そっぽを向いたときに、見えた耳は薄ら赤くなっていた。


「へ、変なこと言わないでくださいよ! 別に私なんか、相手してくれる人なんていませんし!」


「いるさ! ルナは可愛いし! でも、変な虫がつかないようにはしているから、安心ではあるけど」


 何それ!? 虫よけしとるの!?


「ルナは、誰にも渡さないから。弟子でもあるけど、その……」


「その?」


「あぁぁぁもう! 気にしなくていいから! 早く食べて!」


 アランさんは顔を赤くしながら、コーヒーカップを持って、そそくさと洗い場に行ってしまった。


 一体、何だったのだろうか?


 アランさんの言葉に疑問を持ちながらも、昼食を食べ終えた。





───そして、時間になるまで身体を少しでも休めるために、昼寝をすることにしたのであった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?