───第3試験・討伐試験
第1試験と第2試験を何事もなく潜り抜け、第3試験である【討伐試験】を迎えた。
第3試験では、チームを組んでも良しの自由行動となっている。
魔物からまれに出る赤い魔法石を5つ集めれば、即合格になり、校長による寮決めを行った後、晴れてミステリウム魔法学園の生徒となれる。
試験会場は、学園内にある森の中。
第1試験の際、上級魔法を使用したことにより、魔力量が高いのをみんなにバレてしまった。
そのせいで、コソコソ話していたり、迷惑そうな顔をして見てくる人がいる。
正直、疲れている(メンタル的に)。
まぁいいけどさ。
言いたいことあるなら、直接言えばいいのにと思っていると、第1試験の時に私の膝元に座ってきた、ふわふわ系の女子が、花の杖を持って現れた。
「さっきはごめんね~。痛くなかった~?」
「大丈夫だよ! もう眠くないの?」
彼女は、マリアンヌ・アイリーン。
キャラメル色の髪色が、特徴的な女の子。
眠たそうに目を擦り、小さく
「眠い…。けど頑張る」
「お互いに、頑張ろうね!」
「そうだね~。またね~」
マリアンヌ・アイリーンは笑顔で手を振り、元の位置へと戻って行った。
そして、ルイさんが私たちの前に現れた。
「これより、第3試験である【討伐試験】を開始させていただきます。制限時間は30分。魔法石を5つ獲得したものから、森を抜け出してください。それと、怪我はないようにお願いしますね。
それでは、討伐試験開始です!」
ルイさんが声を上げると、みんな一斉に森の中へと駆け込んでいった。
*
───森の中
私も森の中へ足を踏み入れると、木から5匹のスライムが現れたが、氷魔法をぶちかまし、なんと1個の魔法石がスライムから出てきた。
「これが魔法石? 綺麗…。赤いのに、光に当てれば透き通って見える」
「そうよね~。だって、このセフラン王国は、魔法石が有名なんだもの」
背後から優しい声色が聞こえ、振り返るとそこには、魔力量95で合格した、レオナ・アルフレートがいた。
「レオナ・アルフレート!?」
「こんにちは~。そして、初めまして。レオナ・アルフレートだよ。さっき目が合った優等生ちゃんね! 会えて、嬉しいわ~!」
お、オネエだった!?
両手を合わせて、腰をくねくねさせてるし…。
変人しかおらんのか、この世界は!!
「初めまして。ルナ・マーティンです」
「マーティン? もしかして、ルイ教授の子かしら?」
「し、親戚です。あ、あはははは……」
転生者だというのは、バレてはいけない約束だから、ルイさんが考えた親戚という設定で、なんと隠さないと。
後から殺される! ルイさんに!
内心ビクビクしていたが、レオナ・アルフレートは笑顔で話し続けた。
「そうなのね! だから魔力量が多いのね! 納得だわ~。そうと決まれば、アタシと、く・ま・な・い?」
突然すぎるだろうが!
ルイさんが、引き金になってるじゃん!
どうしろと!?
でも考えてみれば、誰かと組んだ方が早い気がする。最初は誰とも組まない(組む人がいない)だったから、あれだったけど。
制限時間も気にしないといけないから、ここは組むしかない! とそう決断した私は彼? の誘いに乗った。
「いいですよ! 私、今1つ目なんですけど」
「アタシもよ! これからよろしくね、ルナちゃん」
「こちらこそ」
「敬語はなしよ? アタシとルナちゃんの仲なんだから」
いや、どんな仲だよ。
初対面だよね? 一応、頷いておこ…。
「わ、分かった」
「うんうん! じゃあ、行きましょうか!」
私は、レオナ・アルフレートと共に行動することとなった。
そのあと、私たちは次々と魔物を倒していき、魔法石を私が3つ、レオナ・アルフレートは2つ手に入れ、合計で5つの魔法石を手に入れた。
「やっと集まったわ~!」
「そうだね!」
「さぁ、森を抜けましょ!」
私は彼? の後ろをついていくと、その左横から先が尖った砂が飛んできた。
すると、砂が飛んできた場所に水の壁が現れ、攻撃を防いでくれた。
水で出来た杖を構えているのはレオナ・アルフレート。
彼? の固有魔法は水らしく、今の攻撃もレオナ・アルフレートが防いでくれたものだった。
攻撃が治まった後、砂が飛んできた方から、黒髪の青年が現れた。
「ッチ」
青年は攻撃を防がれたことに対し腹が立ったのか、舌打ちをした。
「あら、セドちゃんじゃないの」
「貴様に、名を呼ばれる筋合いはない」
あれ? 知り合いなのか?
それにしても、セド・レナードの態度がそっけない気が……。
「この子はセド・レナード。アタシの幼馴染よ?」
「昔のことだ。それよりも、ルナ・マーティンと言ったな…」
「そ、そうですけど。何かありました?」
私はこの人に何かしたのかと思い、質問を投げるとフンと鼻を鳴らした。
「俺と勝負しろ。どちらが強いのか」
「えっ? 何故?」
「セドちゃんは、強い人と戦うのが好きなのよ。悪い子じゃないから、勘違いしたら駄目よ?」
私が強い?
絶対に違う!! と思いながらも、何故か半強制的に、セド・レナードと勝負することになった私であった。