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16話 見学会-後編-

 前回のあらすじ


 アノールと共に『ミステリウム魔法学園』の見学会に来ていたところを、アノールの同級生であるライ・ブレス先輩に遭遇し、女子寮に案内すると言い出し、男子生徒が女子寮を案内するってありえなくないかと思ったが、アノールに自分のクラスに、女子寮の監督生がいるとの話を聞き、そのままアノールたちのクラスに。


 そこで、エレノア・カトレア先輩に運命の出会い(違う)をし、私はエレノア先輩に引き取られ、女子寮に向かったのであった。



───1階・職員室前


 女子寮に向かっている途中、エレノア先輩が『生徒会の書類を提出したいので、ここで待っていてくださいね』と先輩は1人で職員室の中へと入って行った。


 私は、職員室の扉の前で先輩を待つことになった。


 職員室は1階。


 そこから女子寮は近いのか? と内心楽しみにしている私の元に、なんか見たことのある男性が近づいてきた。


 でも、普段着とは違うし、髪型も少し違う気がする。


 一応頭下げておくかと、謎の防衛線を脳内に張り、おそらく先生と思われる男性にすれ違いざまだが、頭を下げると、右肩を掴まれた。


「な、ななななななななんでしょうか?」


 私は恐る恐る顔を見上げると、そこには眼鏡姿のルイさんがいた。


「はぇ?」


 思わず変な声を出すと、ルイさんはニコッと笑った。


「ルナさん。今朝ぶりですね」


「そうですね! じゃないですよッ! な、なんで!?」


「すみません、説明してませんでしたね。私、この学園の教師なんです。しかも、魔法学の担当をしているんですよ?」


 えっ!? じゃあ、魔法を教えていた時の、あの異様なスパルタ力は……。


「教師ならスパルタか」


「何か言いましたか?」


「言ってないです!!」


 首を左右に振って誤魔化すと、フフッと笑われてしまった。


 アランさん…ルイさん怖いよ~。


 今、めっちゃアランさんが恋しいと思った。


 いくら変た…アランさんでも、ルイさんを止めれるのは、アランさんしかいないよー! 


「お待たせしまし…って、教授ではありませんか」


 ??


 誰それ?


「マー!?」


 マーティンって誰? と問おうとしたところ、張り付いた笑みを浮かべるルイさんに足を踏まれた。


 痛い。


「カトレアさん、彼女の案内をしてくださってありがとうございます」


「いいえ。マーティン教授のお知り合いなのですか?」


「えぇ。親戚なんですよ。アノールくん私の親戚というのはご存じなんですよね? 彼女も親戚なのですが、遠い親戚でして。

 ここ最近、独り立ちをしたいと言って、今は私の家で独り立ちの仕方を教えているところなんです。カトレアさんも彼女に色々教えてあげてください。なんせ、世間を知らない箱入り娘だったんですから。ねぇルナさん?」


 話を合わせろと、言わんばかりのドス黒いオーラと、笑みを出すのをやめていただきたい。


 言われなくとも、話し合わせるし! 転生者って言ったら、色々あるかもしれないし。


 誰にも教えないわよ。


「そ、そうなんですよ~。ルイさん。ご迷惑をかけてすみません」


「気にしなくていいんですよ。貴女の成長を見守れてうれしいですから」


 それは本音なのか? と疑いたくなる笑顔やな。


 その笑顔が、私は恐ろしいと思いますけど?


「仲がよろしいんですね!」


 よろしくないですと言いたかったが、ルイさんのドス黒いオーラには敵わず、そっと心の奥底にしまった。


 「あっ、ルナさん。そろそろ、女子寮に案内しますね。女子寮は校内にあるのではなくて、いくつか建物があり、そこが各寮になります。1階は1年生。2階は2年生。3階は3年生になってます。今回は1階にある1年生の女子寮に案内しますね」


「じゃあ、ルナさんをよろしくお願いしますね。私は書類を片付けなければなりませんので。では、また」


 ルイさんはそう言うと、職員室の中へ入って行った。


 そして、私は校内から寮に行ける廊下を歩き出した。


「寮は5つあるの」


「5つもですか!?」


「えぇ。説明するわね」



 リオール寮……知識と真実を追求する寮。一般家系が多い。進路は自由に選べる。


 ルーン寮……古代などの歴史や魔法を学べる寮。研究員の家系が多い。進路は研究家や教師。


 アデル寮……貴族の血を引き、リーダーシップと威厳を兼ね備えた人にふさわしい寮。進路は家業や後継ぎ。


 ケストレル寮……自由と独立の精神を持つ人に適した寮。歴史的な家系が多い。進路は教会や聖騎士。


 ファリス寮……光と真実の導き、正義と誠実さを持ち、正しい道を示す人にふさわしい寮。白魔法が得意とする家系が多い。進路は教会や魔法使い、魔術師。



「寮は5つとも建物で別れています。ちなみに私は、ファリス寮の監督生です。各寮に監督生がいますから、寮が決まったら、その監督生に従ってくださいね」


 寮が5つあるのか。憧れるわ~。


 学園モノと言ったら、寮選択よね! 青春してる感じがする!


 まだだけど。


「ルナさんは、どこの寮に入りたいですか? 寮決めは、編入試験で校長自ら、決めてくださるんです」


「校長が……。私はリオール寮もいいですけど、魔法使いになってあることをしたいと思っているので、ファリス寮ですかね?」


「したいこと?」


「はい。詳しくは、話せないんですけど……」


 アランさんの『呪い』を解くためだからな~。


 気を許した人にしか話せない。


 先輩には申し訳ないけど、こればかりは……。


「そうでしたか。全然構いませんよ。ルナさんには、ルナさんなりの事情があるのは分かりましたから。でも、いつでも頼ってくださいね? 私はルナさんが困ってる時があれば、助けますから」


 エレノア先輩はそう言って、微笑みを私に向けた。


 眩しい……。


 サングラス必要なのではと疑うくらい、女神のような輝くを持っている。


 編入後はサングラス常備しないと。


「ありがとうございます。そうなれば、頼らせていただきますね」


「はい。さて、ここがファリス寮になります」


 いつの間にかファリス寮にたどり着いていた。


 ステンドガラスのシャンデリアに、女神像の左右に階段があり、階段を上っていくとガラスの扉がある。


 そのガラスの扉は中が透けない、すりガラスになっていた。


 壁は一面白く、正しくファリス寮にふさわしい雰囲気を出していた。


「綺麗ですね!」


「喜んでもらえて何よりです。右の階段は女子寮、左は男子寮になります。自由にどちらの寮にも行き来できるので、アノールたちにもし会いたいときは、男子寮に行けますよ」


「そこは自由なんだ……」


「はい。少し探索してみますか?」


 どうしようかな~。でも今日は学園の中を見てみたいから編入後の楽しみにとっておこう!


「今回はいいです! 楽しみにとっておきます!」


「それもそうですね。では、校内を案内させていただきますね」


 ファリス寮内を見学した後、私はエレノア先輩に校内を案内してもらった。


 部活も委員会もあって、しかも学食もある! これこそ、青春じゃないか!


 屋上にも行けてさ! もう最高! もう1度、学園生活を送れるんだと、夢にも思わなかった。


 でも、アランさんの呪いを解くことは忘れないし、それが目的で学園に編入するんだから。 


 頑張らないと! 



───数時間後


「今日はお疲れさまでした。今年の編入試験…受かってくださいね?」


「善処します!」


「ふふっ、元気があっていいですね。では、また」


 ミステリウム魔法学園の見学会が終わり、エレノア先輩に見送られながら私は、この学園に絶対編入すると意気込んで、ルイさんの家へと歩き出したのであった。


人生行路編~完~

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