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15話 見学会-前編-

───1週間後


 シュネーと契約を果たし、あっという間に1週間が経った。


 ルイさんから、『ミステリウム魔法学園』の見学会があると誘われ、誘いに乗った私は、アノールと共にミステリウム魔法学園に来ている。


 アノールは、今年3年生らしいので……。


「アノールパイセン! お願いしゃす!」


「やかましい」


 頭を下げると、その頭をぺしっと叩かれてしまった。


「痛い」


「目立つからやめろ」


「えぇ~」


 アノールをジト目で見ると『なんだ』と睨まれた。


「目つき悪いね」


「……知らん」


 アノールはそう言うと、そっぽを向いてしまった。


 怒ったかしら? と思っていると、背後から元気が良い声が聞こえた。


「おーい! アノールー!」


 後ろを振り向くと、赤髪の癖毛が特徴の青年が、手を振って走ってきた。


 青年を見たアノールは、ため息をついた。


「はぁ…。コケるぞ」


「大丈夫だ!」


「そう言って、コケるだろうが毎回」


「そうだったわ!」


 青年はアノールに注意され、走るのをやめ、こっちに歩きながら向かってきた。


 アノールの友達っぽい感じがするなと思いつつ、青年に頭を軽く下げた。


「おっ!? なんだ~? アノールに彼女いたのか! 教えてくれよ~」


「……。彼女じゃねぇ。

「違います! ルナと申します! 今年の編入試験を受けるために、見学をしに来ました! アノールとは兄弟でも恋人関係でもありません! 彼の家に居候しているだけの関係です!」


 あっぶな!?


 こいつ、変なこと言いだすのさ!


 居候は本当だし。でも、これだけだと、なんで居候? ってなりそう!


 どうすればぁぁ!!


 脳内パニックを起こしている中、青年は何かを察したのか『そっか!』と笑顔で頷いただけだった。


「違うのか?」


「ちゃうわ!!」


 素でツッコミを入れると、青年は満面の笑みでこちらを見つめてくる。


 ま、眩しい!


「な、なんですか?」


「仲いいなーって! おっと、僕の名前を教えていなかったな。僕はライ! ライ・ブレス! よろしくな!」


 ライ・ブレス先輩は自己紹介を終えると、手を差し伸べてきたため、その手を取り、握手を交わした。


 アノールよりも体温が高い気がすると思っていると、ブレス先輩は私の手を握ると『冷たい』と呟いた。


 氷魔法を得意としているのが原因とかってあるのかしら? と内心思っていると、アノールが『だろうな』と言った。


「こいつ、氷魔法の使い手だ」


 アノールが私の得意魔法を勝手に答えると、ブレス先輩は顔を近づけ、私の顔をまじまじと、興味津々に見てきた。


 アランさんとは又もや違う、イケメン顔や!?


 若干、モブ顔だけど、モブの上級クラス的な感じだ!


 先輩に見つめられていると自然に、体温がだんだん高くなっていく感じがする。


 きっと顔、やばいことになってそう……。


「な、なんでしょうか?」


「氷魔法って稀少なんだ! だから、こうして出会えてうれしいよ!」


「あ、アハハハ……。そうですか~」


 やばっ。イケメンに微笑まれたんだけど! 


 悔いなしと心の奥底でイケメンの微笑みを保存していると、アノールが私とブレス先輩の間に無言で入ってきた。


 それを見たブレス先輩は、ニヤッと笑った。


「ライ」


「ハイハイ、分かってる分かってる~。それで、ルナちゃんは見学しに来たって言ったね?」


「は、はい」


「んじゃ、まず女子寮の部屋を見に行こうか!」


 そっか、だもんね。寮があって当然か。


 ん? でも、男子生徒が女子寮に入るのってなんか違和感が……。


「あんたが、思っていることは何もない。女子寮に行く前に、俺たちのクラスに向かう。そこに、女子寮の監督生がいる。そいつに、女子寮の案内をしてもらうから安心しろ」


「エスパーなの? アノールって」


 そう言うと、アノールは小さい声で『馬鹿なことを言うな』と、あしらわれてしまった。


 なんだかんだ、面倒見がいいお兄さん的ポジにいるなと改めて思った。



───3年教室


 そして、3階にあるアノールたちのクラスに着くと、1人の女子生徒が何やら、資料みたいなものと睨めっこをしていた。


 教室に入るとブレス先輩が大声で、女子生徒の名前を叫んだ。


「おーい! エレノア!」


「静かにしてください。今、生徒会に資料をまとめているところなんです」


 エレノアと呼ばれた女子生徒は、こちらに首だけを向けた。


 紫色の細いフレームの眼鏡。


 薄紫色の髪色をポニーテールに結んでいるのが、特徴的な女子生徒。


 如何いかにも生徒会長っぽい感じが溢れている。


 しかも、美人!


 こんな美人に出会ったことがない!


 こりゃー。イケメンと美人さんに対する免疫力をつけないと、多分この学園では過ごせない気がする。


 本能的に! いくらアランさんやルイさん、アノールに慣れていようとも、初対面は無理や。


 話しかけられたら失神モノや! どう生活しろというのかね!?


 今すぐにでも、この感情を表に出したい! 出したら社会的に死ぬけどさ!


「ちょっと、こいつに女子寮の案内をしてやって欲しいんだが?」


 アノールはエレノア先輩? に私の顔に指をさしながら言った。


 おい、人に対して指をさすんじゃないわよ。


 学校で習わなかった? と言いたいけど、今は我慢だ。


「あら、今年の編入試験を受ける子かしら? 初めまして。私はエレノア・カトレアと言います。貴女の名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 エレノア先輩は椅子から立ち上がり、私に自己紹介をしてきた。


 背も高い! 美人! 良い匂いっ! 最高すぎん? 


 そんなことを思いながら、エレノア先輩に頭を下げた。


「初めまして、ルナと申します。以後お見知りおきを」


「礼儀正しいですね。ルナさんよろしくお願いします」


 私はそのままエレノア先輩に、右手を握られた。


 美人と握手できるとは!! この手一生洗わん! そう誓った私だった。


 まぁ、それは冗談として(少しは本気だったけど)。


 自己紹介を終えた後、私はそのままエレノア先輩に引き取られ、女子寮に向かったのだった。


 続く

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