───自室
氷の妖精・シュネーを使い
*
ベッドから起き上がると、ステンドガラスの窓から外を見ていたシュネーが私に気づき、こちらに飛んできた。
すると、いきなり頭を思い切りぺしっと、叩かれてしまった。
「痛っ!」
「契約魔法した瞬間に意識なくしちゃって! もう! 運ぶの大変だったんだからねッ!」
「私、倒れたの?」
「そうよ!」
やっぱり……。意識なくしてたんだ。
なんか、シュネーやアランさんに迷惑かけてしまったな~。
「ごめんね」
「まぁ、ルナだからいいわ! これがあの魔術師だったら氷漬けにして、魂事食べてたわよ!」
い、意外と怖いこと言うのね……と思いつつ、アランさんたちがいないのかと辺りを見回した。
「ルナ? どうしたの?」
「アランさんたちは?」
「ルイの部屋かしらね。呼んでくるわ!」
シュネーはそう言うと、部屋のドアを魔法で少し開き、ルイさんの部屋に向かっていった。
シュネーって、案外と器用なのかもしれない。
そう言えば、夢の中? に不思議な女の子と会った気がするけど……。
なんか、言ってたし。
何だっけ? と両腕を前に組み、頭をひねらせていると部屋のドアが開いた。
「ル、ナ?」
何故か、ドア前で突っ立っているアランさん。
すると、次の瞬間。
アランさんが猛ダッシュしてきたと思ったら、ガバッと効果音が付きそうなくらい勢い良く、抱き着かれた。
その光景をアランさんの後ろにいたルイさんとシュネーが、一瞬だけ
「ルナさんから離れなさい!」
「いーやーだぁぁぁ!! ルナがいなくなったら、僕生きていけないもん! 数日間の空白の時間を堪能させてよぉ~!」
「変態かッ! ルナどうする! こいつ殺る?」
シュネーは、アランさんの頭をぺしぺしと叩きながら、黒い笑みを浮かべた。
シュネーに首を左右に振ると、『つまんなーい』と言われてしまった。
「ご迷惑をおかげして、ごめんなさい。もう大丈夫です。あと、アランさん落ち着いて」
「うう……」
アランさんは目を擦りながら、ベットの横にある椅子に座り、ルイさんとシュネーはソファーに座った。
本当にこう改めてアランさんの行動や言動を見てたりすると、子供にしか見えない。
精神年齢低いのかしら? とそう思わざるを得ない。
すると、ルイさんは小さくため息をついた後、『目を覚まされて良かったです』と言ってくれた。
「本当にごめんなさい。ルイさんたちにも迷惑をかけてしまって……」
「気にしないでください。疲れが溜まっていたのが、突然出たのでしょうから」
「それと、私はルナと使い魔になったから、いつでも呼んでくれれば、どこにいようが飛んでいくわ!」
契約破棄されてなくて良かったぁ~!
儀式の際に倒れたなら、自動的に契約破棄になってたら、どうしようかと思ってたわ。
「ルナと一緒に居たいと思ったから…。感謝なさい!」
「ありがとうございます女神様! 流石、シュネー様ですわ!」
ベッドの上で土下座をすると、シュネーは嬉しそうに口元を緩めた。
「もっと褒めてもいいのよ~!」
「そこまでにしなさい。全く、シュネーは相変わらず、我が儘お嬢様ですね」
ルイさんがそう言うと、シュネーは突然、林檎の様に顔を真っ赤に染めた。
「う、うるさいわよ! お、お、お嬢様なんて言葉、妖精に使うんじゃないわよ! ルイの馬鹿ぁぁぁ!」
シュネーはルイさんのおでこを、ポコポコと叩き始めた。
『痛いですよシュネー』と優しく言うルイさん。
でも、どこか何時ものルイさんとは違う感じがした。
まるで、好意を持っている女性に対して接するような……。
ん? もしかしてと思い、アランさんに耳打ちをした。
『アランさんアランさん』
『ルナからの耳打ち!? 僕、死んでもいいかも』
『はいはい。それよりも、ルイさんの雰囲気甘くないですか?』
ルイさん達の方に目線を向けるアランさん。
すると『だってルイ。シュネーのこと好きだもの』と爆弾発言をした。
『私の予想通り。あの感じ、シュネーもなのかしらね?』
『そうとも。でも互いに気づいていないんだ』
『この長年で!? ある意味凄いわよ』
両想いなんだ……。
こんな身近な場所で、両想いの人たちに会えるとは。
なんか羨ましいな~。
私もいつかは…なんてね。
「そこで、コソコソ話さないで、言いたいことがあるなら話してください」
ルイさんは、じーっとこちらを見て言ってきた。
「なんでもないよ。ね、ルナ?」
「え、えぇ」
アランさんの言う通りに頷いた。
「まぁ良いですけど。それよりも、今度ミステリウム魔法学園の見学会がありますけど、ルナさん見に行きませんか? アノールがついていくと思いますので」
「ミステリウム魔法学園? マジですか!?」
「マジですよ。それでどうします?」
「行くに決まっているじゃないですか!」
私が編入したがっている学園。
───ミステリウム魔法学園
見学できるなら、見学したいに決まっている!
「それではアノールに伝えておきますね。それまで、疲れを取ってください。見学会以降、魔法の基礎知識を頭に叩き込んでもらいますから。それと、実践も交えていきますので…覚悟していてくださいね」
この人もスパルタだった!!
師がこれだったら、弟子のアノールもスパルタなのがよく分かった。
───確かに、弟子は師に似るって本当なんだと、改めて思い知った私だったのであった。