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8話 氷魔法使いの誕生-後編-

 ───セフラン王国外


 セフラン王国の外にある森の中で魔物が発生しているので、討伐をして欲しいと門番に頼まれた私たちは、森の中を散策していると、神鬼人オーガロードであるクロノスに遭遇してしまった。


 何故か、クロノスに気に入られた私は、彼の能力スキルで、私と彼以外の全ての時が止まってしまい、ただいま口説かれピンチに陥っている。


「小娘、我れの元に来るがよい!」


「すみませんが、お断りさせていただきます。私はまだまだ未熟者で、この人たちに教えてもらうことが、たくさんあるので」


「ほほう? それだけの理由か?」


「そうですけど、何か?」


 私の言っていることは本心だし、クロノスについて行く必要性なんてない。


「そうか。貴様は、そやつらとは違う雰囲気がする。そんな貴様を! 我の嫁にする!」


 よ、め?


 今、嫁って言った?


「嫁? なんで?」


「嫁にし、我の物にするためだ!」


 意味がわからない!


 この世界の人たち(人外も含む)は、みんな変人だらけなのさ!


 いや、ルイさんとアノールは違うけど……。


「とにかく! 私は誰の物にもならないです! 絶対に!」


「……ならば!」


 私が求婚拒否? すると、その場の空気が一瞬にて、凍りつき始めた。


 これは、戦いを避けられない! 


炎の雨フレイム・レイン!」


 アランさんと同じく、空の上に魔法陣が現れ、炎が降り注いできた。


 避けても森が燃えるだけだと思った私は、氷で作られた杖を構え、魔法陣を展開した。


霜の壁フロスト・ウォール


 魔法陣が霜へと変化し、私の周りを囲むように壁ができた。


 クロノスは、氷が炎に弱いことを私に突きつけてきた。


「フハハハハハ! 貴様、弱点を知らんのか? 氷は炎に弱いとな。炎は氷に強い! 常識であろうが!」


「知ってるわよ。でも、この壁を壊すことはできないわ。絶対にね」


 私の言う通り、空から降ってくる炎の雨フレイム・レインは、壁を破壊することはできなかった。


 威力を強めても、壁はビクともせずに、攻撃を防ぎ終えたことで、クロノスは動揺を隠せずにいた。


「どういうことだ」


「どうもこうもない。ただの霜の壁ですよ。それでどうします? 降参してくれたら、手出しはしません」


「力ずくでも、我の物にするッ! 火炎の弓ブレイズ・アロー!」


 クロノスは、炎で出来た弓と矢を作り出し、私に向かって矢を放った。


 それも、私の氷の壁フロスト・ウォールを壊すことが出来ず、クロノスは笑い狂った。


「面白い! 面白いぞルナ! 良い! ますます気に入ったぞ!」


「それはどうも。でも、もうお終いにしませんか? 貴方は、私を倒すことはできない。私は『破滅の魔術師』の弟子ですから」


「『破滅の魔術師』。もしや、貴様は転生者なのか!?」


 クロノスは、先ほどまでの余裕をなくしたかのように、後退りをした。


「そうですけど?」


「転生者は、我ら魔物の天敵。そして、


「神?」


「そうだ。これもまた、なのかもしれぬな!」


 クロノスは何かを悟ったのか、再び火炎の弓ブレイズ・アローを私に放とうとした。


「もういいでしょ? 運命なのかは知りませんけど、私は自由になるために、アランさんの呪いを解くために、前を進むだけです! これで、もう終わりです! 絶対零度アブソリュードゼロ!」


 杖の先から魔法陣が現れ、吹雪がクロノス自身をとらえ、クロノスは私より早く魔法を放てず、そのまま氷漬けにされ、綺麗に砕け散っていった。


 そして、クロノスを倒したことによって、止まっていた時間が動き出し、アランさんたちもやっと動き出した。


「おっとと……。どうやら倒したみたいだね。この魔力量は上級魔法を使用したみたいだね。ルナ」


 慣れていない魔法を使った私は疲れ果て、倒れそうになったところを、アランさんが受け止めてくれた。


「疲れました。寝ていいですか?」


「良いとも。僕が運んであげるから君は、少し休みなさい」


「お疲れさまでした。ルナさん」


「ルイさん……」


「……」


 私は無言で心配そうに見つめてくるアノールに目線を向け、そのまま意識が飛んだのだった。




───これが、氷魔法使いの誕生秘話となることを知らずに。

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