1ヶ月の月日が流れ、アランさんたちと共にセフラン王国の外にある森の中で、大量発生している魔物を討伐する依頼を門番から受け、現在森の中を散策中。
───だけど、ここで1つ問題が発生。
それは…。
「魔物すらいない気がするんですが?」
そう、魔物の気配を一切感じないのだ。
一体、どういうことなのだろうか?
「気配遮断を持つ魔物が存在しているのかもね」
私の横にいるアランさんが、淡々と口を開いた。
気配遮断ってチート級のチートやん! そんな魔物いたら意外とやばくない?
「そんな魔物居たら、大変なことじゃないですか!? 知らない間に、セフラン王国に入ってきたら……」
「前にも教えたはずだけど、セフラン王国は魔物を寄せ付けない結界が張られている。まぁ、今は大丈夫だけど、あと1、2年くらいしか持たないかもしれないけどね」
「だからですよ! 弱まっている結界に、その魔物たちが押しかけてきたら、大変じゃないですかッ!」
「そうだねー。でもほら、何とかなるでしょ!」
「いやなんねぇよ!」
この人…無責任すぎない?
何が『何とかなるでしょ』だ!
私は無責任変態魔術師の横にいる、その親友に助けを求めた。
「ルイさ~ん、この人になんか言ってくださいよ~」
ルイさんは、苦笑いを浮かべながら首を傾げた。
「うーん、そうですね……。アラン、あまりルナさんを困らせないでくださいね?」
「分かってるとも!」
ぜっっったい分かってないわ、この魔術師。
まぁいいや、ルイさんの横にいる、執事兼弟子のアノールも呆れているし。
さっさと見つけて終わらせ……!?
───貴様らは人間か? エルフもいるのか?
私たちの背後に、
「
アランさんは、ただの鬼人ではないと思ったのか、鬼人の正体を暴こうとしていた。
私は目の前にいる鬼人を見つめていると、音もなく静かに鬼人は、私に近づいてきた。
すると、鬼人は私にとあることを問いかけてきた。
「そこらの鬼人に見えるか? 小娘よ」
「見えません、けど?」
鬼人は私の顎に人差し指を置き、全女子が喜びそうな『顎クイ』をした。
全く、嬉しくもないけど。
男×男の『顎クイ』を見るのは美味しいし、楽しいわよ?
でも、今の状況×訳の分からないイケメン鬼人の組み合わせでは、なんということも無いわ。
だって、この世界に転生してきたとき、
しかも、イケメンと毎日会話しているし、
「面白そうな小娘だな!」
出たよ! 『面白れぇ女』みたいなやつ!
少女漫画とかであるある! キュンともせんわ。
中身は30のおばさんよ? 無理もないわ~。
「そうですか? 貴方も面白そうな鬼人ですねー」
「フハハハハハハハ! そうかそうか! 小娘よ。名を名乗れ」
鬼人はどこか楽しげに、私の名前を問いかけた。
アランさんと、ルイさんは黙ってこちらを見つめ、アノールは警戒しながら冷や汗を流している。
私は普通に、名を鬼人に名乗った。
「ルナ。それが私の名前だよ」
「ルナ。ルナか。いい名前だ。気に入った! 我はクロノス。神鬼人
「
アノールは慌てながら、私を後ろに隠した。
神鬼人って上級クラスの魔物だっけ?
こんな森に、1匹でいるって…どういうことなのかしら?
「目的は分からないけど、この子を渡すわけにはいかないよ」
「そうですよ。申し訳ありませんが、死んでいただきます!」
アランさんとルイさんはそう言うと、杖を構え始めた。
だが次の瞬間。
クロノスは指をパチンと鳴らすと、
風も雲も動くことなく、ただ私とクロノスの2人だけの時間が流れた。
「小娘よ。さぁ、来るがよい!」
一体、どうすればいいんだ!!
───そう心の中で叫んだのだった。
〈続く〉