───次の日。
アランさんの親友であるルイさんに、『魔法』を学ぶこととなった私は、ルイさんの家に暫く、居候することとなった。
今年の春に編入試験があるらしく、それまでに『魔法』と『魔術』の両方の基礎を覚えなければいけない。
セフラン王国の魔法学園に編入するならば、そのくらいやらないと、他の人達に追いつかないというわけで、絶賛ルイさんから魔法を教えてもらい、休憩中である。
ルイさんの家は屋敷で、庭も広い。
そのため、魔法の特訓に適している。
魔法に慣れていないのか、疲れ気味の私は、芝生の上に腰を下ろした。
「疲れたー! 仕事より楽かと思ったら、意外と楽じゃないわね。力が抜けるような感覚が、魔法を使うたびする気が……」
「それは、魔力を消費している証拠だ」
後ろから私よりも身長が高い、黒髪のイケメンが飲み物を乗せた銀のトレーを片手で持ち、こちらに向かって歩いてきた。
「貴方は?」
「アノール。ルイ様の弟子であり、執事でもある。あんたが、アラン殿の契約者か。よろしくな」
「よ、よろしく……」
顔怖いけど、意外といい人みたい。
というか、この人が私と同年代なんだ。
「アノール。こちらは、ルナさんと言います。仲良くしてくださいよ?」
「かしこまりました」
アノールはルイさんと私に、紅茶が入ったティーカップを渡してきた。
一口喉に流し込むと、まろやかな風味が口全体に広がり、ほんのり甘い香りが嗅覚を刺激した。
「ルイボスティーだ。水分補給には丁度いい。ルイ様の好物でもあるから、休憩時間は必ず、ルイボスティーを淹れるんだ」
「そうなんだ。ルイボスティーなんて飲んだことなかったから、今日初めて飲んだわ。以外に美味しいんだ。もう少し、癖があるのかと思ってた」
「苦手な人は苦手だろうな。だが、そう言ってくれて感謝する」
アノールは、フッと笑みをこぼし、ルイさんに一礼した後、何処か行ってしまった。
ルイさんは優雅に芝生の上で正座をしながら、ルイボスティーを飲んだ。
「アノールは
「勿論ですよ。不器用な人間は生前たっぷり見てきましたから。それに、私も色々と不器用でしたし」
嫌なことは嫌だと言えなかったり、他人の仕事を押し付けられたり、本音を言えることなく、1日を終えた。
というか、生涯を終えたと言った方がいいか……。
あーもう! 生前の嫌なことを思い出される。
「その顔を見れば分かりますよ。生前のことは忘れて、今を大切にしてください。
私から言えることはそれだけです」
「ルイさん……」
「さて、そろそろ休憩を終わりましょうか。今度は、氷魔法を教えましょう。先ほど教えた、炎魔法や風魔法など試しましたが、魔力が追い付いていませんでしたから、もしかしたらですが、ルナさんに合わないのではないかと思いました。
ですので、魔力量が多いルナさんには、魔力量を大幅に減少する上級魔法と相性がいいのかもしれませんね。ルナさんのスキルはアランから聞いています。無限に魔力を体内で作り流れている状態なので、魔力を消費しなければ危険な状態になるので、氷魔法が合えば、それを中心として、防御魔法や治癒魔法を教えましょう」
そうなんだ。
てっきり、魔力量が多くてもいいのかと思っていたわ。
でも言われてみれば、ラノベ小説や漫画で、暴走する主人公やヒロインたちが書かれてたりするからな~。
実際そうなのだろう。
「異変がありましたら、すぐに言ってくださいね。中止させますから」
「分かりました。よろしくお願いします!」
私のスキルを活かしてくれるように、ルイさんから氷魔法を教わることとなった。
───不安と期待を心の奥底にしまいながら、練習用の杖を構えたのだった。