次の日。
洞窟内で1泊過ごした私と、アランさん。
寒くて寝れるか? と思っていたが、アランさんの炎属性の魔法のおかげで安心して寝れることが出来た。
氷で出来た床なのに、炎属性の魔法を使っても溶けないのか心配だったけど、アランさん曰く、あの洞窟は
そのヌシと遭遇してしまえば、一瞬で氷漬けにされるということで、私たちは洞窟から外の世界へと、足を踏み入れることにした。
*
外の世界は雲1つない晴天で、小鳥たちのさえずりが聞こえ、とても心地良いものだ。
それに、アランさんも昨日よりご機嫌な様子だ。
「アランさん。これからどうするんですか?」
そう。私は、アランさんの呪いを解くために旅をすることにしていたんだけど、アランさんも一緒に旅をしながら、私に魔術と魔法を教えてくれることとなったまではいいけど。
どこに向かうのか、聞いていない。
隠しているわけでもなさそうだし……。
「あぁ、そうだったね。今から僕の
「親友いたんですね」
私は思わずそう呟くと、アランさんは肩を下げた。
「友達ゼロみたいな感じで言わないで? 友人の1人2人くらいいるよ。あいつのところに、君と同年代の魔法使い見習いがいるから、互いに何かと高め合えると思うよ」
私と同年代か……。
生前は、友人や幼馴染なんていなかったからな~。
意外と楽しみにしている自分がいる。
だけど、性格悪かったら最悪だけど。
「大きな学園があるんだけど、まだあの
「えっ、ということは…。アランさん、おいくつなんですか?」
呪いが解けなければ、死ぬことが出来ないって言ってたから、何百年とか生き抜いた魔術師なのかと思ってたけど、親友も生きているんだったら……。
「ん? 僕の歳かい? これでも100歳だよ! あいつはエルフだからね~、僕と同じ歳なんだ!」
アランさんはその場に立ち止まり、私にドヤ顔をかましてきた。
だが、そんなアランさんに動揺せず、スタスタと前を歩いた。
「反応が欲しいな~」
「へー(棒)」
「聞いた本人だよね? ねっ? ねぇってば~」
成人男性が成人前の少女に後ろからダル絡みしながらピッタリくっついてくるって、異常過ぎん?
これ、私がいた世界だったら、セクハラで訴えられてるよ。
「しつこい。うるさい。エルフの特徴なんて知ってますから、相手がエルフだって分かったら、動揺しないですよ。人間だったら、多少は動揺しますけど」
「えぇ~。つまんないな~」
子供か! ついつい声に出しそうになるのをグッとこらえた。
「それで? その学園はどういうとこ……ろって、この魔物なんですか?」
森の中を歩いていると、巨大なぷよぷよしたモノが、私たちの前に立ちふさがった。
なんだかとっても可愛い。
青くて、ぷよぷよ……。
もしかしてこれって、かの有名な『スライム』というものじゃないか!?
「この魔物は『スライム』。通常のスライムはこんなに大きくないけど、これはスライムの親分だね。巣が近くにあるんだろう。いい機会だ! 君に『魔術』を見せよう!」
アランさんはそう言うと、身長と同じ長さの杖を右手に掲げると、スライムの上に魔法陣が現れた。
「
アランさんが魔術を唱えると、魔法陣から謎の光が、雨のようにスライムに向かって降り注いだ。
すると、スライムはそのまま消滅してしまった。
「あの巨大なスライムを一瞬で!?」
「今使った魔術は『白魔術』と言って、相手を癒すのが『白魔術』なんだ。でも、今のは相手を癒すのではなく、
凄い物を見せてもらった気がする……。
この人から色々教わるなんて、昨日の私に言い聞かせたいわ。
ただの変態魔術師ではなくて、立派な魔術師なんだって。
「そろそろ、目的地に着くさ。魔物が襲ってきても安心し給え!」
「分かりましたから、またくっつこうとしないでください! 変態魔術師!」
さっきの言葉は撤回する!
やっぱし、この人は変態魔術師だっ!
───そう心の中で叫びながら、また後ろからくっつこうとするアランさんから逃げながら、彼の親友がいる国を目指したのだった。