その男性の一言が辺りによく響いた。その一言で、先ほどまで横暴を働いていた
そんな男性が一人、居酒屋の店主を脅す奴隷たちの前に現れ、まるで鐘の音のような良く響き渡る声で、彼らを叱責した。
彼の高身長と
「聞こえなかったのか。
早く手を戻せ」
しかし、この白髪の男性の威厳がチンピラ相手にどこまで通用するのか分からない。
彼は百九十センチの高身長といっても、そこまでガタイは大きくない。腰に剣を下げてはいるが、
そこまで年を召してはいないだろうが、頭髪に混じる白髪が光に照らされて強調され、より老人のような印象を受ける。このままこの老人がチンピラたちに斬り殺されてしまうのではないかと、僕は不安になった。
それは周囲も同じであったようで、傍らに立つ
「兄貴!
あの爺さん、あのままじゃ危ないぞ!
助けに入った方がいいんじゃないか!」
これには僕も同意見だ。目立つのは避けるべきとは言え、目の前でご老人が無惨に殺されてしまうのをただ見ておくわけにもいかない。
傍らに立つ
しかし、
「あの方は⋯⋯!
いや、助けはまだ大丈夫だ。
一先ず、事の成り行きを見届けよう」
そう語る
彼の言葉に
「なんだジジイ!」
チンピラたちはドスの効かせた声で、まるで
だが、チンピラたちは相手の様子になにやら気づいた様子で、一瞬、怯んだような声を上げた。
「う、官吏か⋯⋯」
白髪の男性は文官特有の黒服を身に着け、腰からは官吏の身分を表す“
さすがのチンピラたちも、政府高官が相手となれば分が悪いようで、
だが、白髪の男の垂らす
「なんだ、ジジイ。
偉そうにしているが、
我らは大
彼らはそう叫んだ。そう、相手はただのチンピラではない。未来の歴史にも残る高い悪名を残した
どうやら、黒の
「
お前ごとき下級官吏なぞすぐに潰してやるわ!」
だが、その様子を目の当たりにしても、白髪の男性はまるで
「そんな脅しに屈すると思っているのか」
白髪の男性は短いながらも鋭い言葉で、チンピラたちを一喝する。
彼は腰の刀に手を伸ばそうともしない。しかし、まるで死を恐れていない様子で、チンピラたちに対峙する。その威圧感は遠巻きに見る僕らにもヒシヒシと感じるほどであった。
だが、相手を下級官吏と侮るチンピラたちはまるで応える様子を見せない。
そんな中、
「ジジイ、お前、ただの下級官吏ではないな。
名を名乗れ!」
それに対して白髪の男はキッと
「私の名は
その言葉に
「
その名を聞いてチンピラたちの態度は明らかに変わっていた。はっきりと白髪の男に対する
それはそうだろう。
その後についてはよく知らなかったが、どうやら降格されても官吏として働いていたようだ。
相手が
「クッ、今日のところはこのぐらいにしといてやる」
そう捨て台詞を吐き捨てると、急ぎ足でチンピラたちは去っていった。
その光景に周りで見ていた市民は一斉に歓声を上げ、脅させていた店主は
さらに、それに加えて
「先生、さすがです」
そう言って
そうだ、思い出した。
確か、
しかし、随分昔の話なのか。相手の
「お前は⋯⋯もしや、
どうやら、相手の
「あの時の少年が大きくなったものだ」
師弟の感動の再会か。
そう思って事の成り行きを見ていると、突如、
「
《続く》