今し方出会った人物が、三国志の特級有名人、
しかし、今更ながらお互いを
やはり、この世界で生きていくなら
でも、あんまり
えーと、確か、将来、
こんなことならもっと熱心に覚えておくべきだった。
僕が頭の中でこの時代の偉人の
そんなことを考えている間に、
僕は
「おい、
戻ってきた僕らを
「今回はいい役人が来てくれたが、早々あることじゃないからな。
気をつけろよ。
お前は無茶をしすぎだ」
さて、次はこの少年をどうするかだ。
馬を盗まれた
僕は先ほど
少年の対処に困っていると、一人の青年がこちらに向かって駆け寄ってきた。
「すみません!」
声をかけられ、僕らは一斉に振り向いた。
現れた青年の歳は十四、五。まだ、幼さ残る顔立ちに、目は
カラフルな刺繍の入った黄色い服に、下半身はズボンに革靴のスタイル。頭には頭巾をかぶり、腰には刀を下げている。身綺麗でありながら活動的な印象を受ける格好だ。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
その子供は私の
身綺麗な青年は頭を下げながら、そう言って僕らの中に入ってきた。
その青年を見るなり、奴隷の少年は気不味そうな様子を見せて逃げようとしたが、すかさず青年は少年の腕を掴んでその場に押し留めた。
「すみません。少し目を離したばかりに、私の
何か壊れたものがありましたら弁償させていただきます」
「君が主人か。
ここでは周りの目もある。
一連の騒動で僕らは道行く人々からジロジロと見られている。こんな道中ではとても落ち着いて話なんてできそうにない。それに一応、
僕らは市場に戻って、客の少なそうな居酒屋の隅の席に着いた。
席に着くなり、その身綺麗な青年が奴隷の少年の肩に手を置きながら語って聞かせてくれた。
「この子は元は浮浪児でした。かつて、私の馬を盗もうとしたところを捕えて
まだ、昔の癖が抜けなかったようです。失礼致しました。馬はお返しします。その他、問題がありましたらおっしゃってください」
青年は丁寧な応対で、態度に余裕が感じられる。
その様子に、
「君は若いのにしっかりしているね。
俺は
「申し遅れました。
私は
そんな彼の自己紹介も、僕は別のことを考えながら話半分に聞いていた。先ほどからこの時代の
彼の自己紹介を聞いても、
「そうだ、
そう思いついた僕は、ついついその名前を口に出してしまった。
次の瞬間、身綺麗な青年の目はギラリと光った。それと同時に彼はダンッと机に飛び乗り、僕の首スレスレに刃を突きつけてきた。
青年からは先ほどまでの丁寧な物腰は消え去り、ギラつく野性味のみが全身を覆い尽くしていた。
「何故、俺の本当の名を知っている!」
僕の首筋に刀の切っ先がわずかに振れる。あまりに突然の事態に僕は呑み込めぬまま、ただ汗のみがジワリと垂れていった。
彼との間合いはわずか数十センチ。青年の顔は直ぐ側まで迫っている。彼が冗談や悪ふざけでこんなことをしていないことはその目を見ればわかる。これと同じ目をかつて戦場で見た。人を殺す奴の目だ。わずか
「君は⋯⋯まさか⋯⋯本当に⋯⋯本物の⋯⋯
その問いかけに、相手の青年は答えない。だが、決して手を緩めることもない。
「もう一度聞く。
何故、俺の名を知っている!」
「そ、それは⋯⋯」
やはり、この青年が
しかし、何故と聞かれても困ってしまう。まさか、未来から来たので君の将来の活躍を知っているからですと言うわけにもいかない。
僕は言葉を詰まらせてしまった。
しかし、僕以上に困っているのが周りの
「待て、こんなところで騒ぎを起こすつもりか」
「すでに騒動になった。今更、もう関係はない」
だが、
とても、話が通じる状態ではない。
「おい、
先ほど、お前が口にした
僕はその質問に困った。しかし、当然来る質問だろう。
だが、僕の知っているのは未来の話だ。未来の
しかし、そんな未来の話をここでするわけにもいかない。下手に言ったために未来が困ってしまうなんて事態は避けねばならない。
しかし、何も言わないままではこの状況が変わりそうにない。僕は必死に頭を動かして、この時代でも言えそうな情報を探しに探して叫んだ。
「この子は
僕は
その名を聞くと、
「
その名は聞いたことがある。確か、反乱を起こした男の名だ」
「なるほど、反乱者の息子ってことか」
どうやら、この時点で
つまり、知らず知らずの内に僕は彼が反乱者の息子であることを暴露してしまっていたんだ。そりゃ殺されそうになるよな。余計なことを言うものではない。
事態を呑み込んだ
「待て、
《続く》