僕は
盗賊と
彼らの環境させ整えてやれば、まだまだやり直せるはずだ。
僕はそれを
「
彼らには更生の機会を与えるべきだ」
息巻く僕に対して、
「
僕は冷水をぶっかけられ、一瞬止まってしまった。だが、ここで諦めてはいけない。僕は必死に頭を回転させて考えた。
「そうだな、うーん……。
そうだ!
捕らえた盗賊たちをその空き家に住ませ、荒れ果てた田畑を耕させるんだ。そうすれば彼らに新たな生活基盤を与えることができるんじゃないか?」
僕は自身でも名案だと思うこのアイデアを伝えた。
だが、それに対して
「なるほど、悪くない案だ。
だが、田畑を耕してもすぐに収穫できるわけではない。その間の彼らの食糧はどうする?」
そこまでは気が回っていなかった。僕は再度、必死に考えた。
「え? えーと、周辺の村の蓄えを分けてもらうとか。それに盗賊の
だが、その案には
「周辺の村に分けるほどの余裕はねぇよ。
それどころか盗賊に奪われて村の分の食糧さえ足りない状況だ。盗賊の蓄えた食糧は村に返してやらねぇと、今度は村が飢えていくぞ」
「そ、それは……」
その反応を見て、
「ここ何年か、冬はめっきり寒くなった。春も秋も無い。夏ですら涼しい日々が続く。
何年か前には六月に
こんな気候が続くせいで連年、
さらに加えて戦乱だ。今や全てを養っていくだけの食糧はない。少なくともこの地域にはない。
だから、盗賊は処刑するか、中央に連行して強制労働させるしかない。この片田舎に奴らを食わせてやるだけの余力はねぇ」
そう言えば、僕がこの世界に来て初めての感想は『寒い』であった。地域的なものかと思っていたが、どうやら相当深刻な状況であったようだ。
「なんで俺が軍団全員を
今や国中どこもかしこも食糧難だ。優しさだけで養っていくなんてとてもできねぇ」
ここまで言われては何も言い返すことはできない。
異世界転生なんかでは転生者が出すアイデアでドンドン問題を解決したりするが、なかなか上手くいかないようだ。
僕はすっかり黙り込んでしまった。
その様子を見て、
「お前の温情もわからんでもない。提案も悪いわけじゃない。
だが、今の俺たちにはできねぇことだ」
「すまない。無理を言った」
僕は彼に謝った。
確かに
だが、それは今できないというだけのことだ。
歴史の通りなら
この世界の人を救うためにも僕は
ただ、今目の前の
僕が心を痛めているのを察してか、
「
農民とは苦しいものだ。どんなに頑張っても戦乱や天災でその
奪うことを覚えた者に土地を与えたからと言って早々、農民に戻れるものではない」
だが、それ以上に経験豊富なのか、色々なことを知っている。今回の盗賊討伐も彼の知識に随分助けられた。
それは
「
今回はほぼ
今回の功績第一が
「盗賊というのは余程の大規模でない限りは県兵と真正面から戦うことはありません。
奴らのやり方は大体どこも同じです。村々を襲い金品や女を奪う。県兵が来るとすぐに退散し、その道中で奪った金品や女の一部を捨てて逃げる。そうすれば県兵は金品や女を我が物にしようと拾うのに躍起になって、その隙に逃亡してしまう」
彼の言葉に僕は思わず反応してしまった。
「県兵なのに金品とかを自分のものにしてしまうのか?」
ここで言う県兵は警察のことだ。
だが、僕の問いに、
「
県兵も盗賊も同じ。元をたどれば村の食い詰め者に過ぎない。運の良い者が兵士の仕事にありつけ、悪い者が盗賊に身を落とす。根本はそう変わるものではない」
「県兵も盗賊がいれば臨時収入を得ることができる。
だから、本気で取り締まる者は少ないってことだ」
そう言って話に入ってきたのは
「だが、俺は県尉で一生を終えるつもりはねぇ。だから、本気で取り締まる。
そのためにお前らを連れてきた。お前らが目を光らせていれば、県兵もそう手を抜かんだろう」
そう語る
「ならば、今回教えた私のやり方が良いかと思います。
盗賊の情報を集め、奴らが村を襲撃する前に参上すれば、
そして、逃亡することを前提に、その逃亡先を予想して兵を配置する。
そうすれば大方は捕らえることができるはずです」
それからの僕らは
普段から近隣の村々を回り、村民を
そうやって僕らは次々に周辺の盗賊を捕縛して回っていった。
こうして
そんなある日、僕らの元にとある一報を伝えられた。
「おい、
そう言いながら駆け込んで来たのは、
「
よし、俺たちの有能な仕事ぶりを見せつけてやるか」
その報告に大将・
だが、僕は『
その言葉は前世で読んだ三国志の物語に登場していたはずだ。
「
確かこの先の展開は賄賂を要求した
まずい! このままじゃ
僕はここでようやく、ここがどういう場所なのかを思い出した。
《続く》