「どうやら話は
そう言って、馬商人・
「
そのやり取りに
「では、これからは商談と参りましょう」
「追加でもう一頭、馬をいただきたい。
後は
「わかりました。
そちらは
慣れたやり取りなのか、両者はポンポンと話を進めていく。
「ああ、それで頼む。
それと新たな馬具を用意してもらいたい」
「ほぉ、馬具ですか。
どのようなものですかな」
「それについてはこの
ようやく僕の出番だ。
「この
そして、それが付けられるだけの強度をもった
僕は
「ほぉ、これは初めて拝見しますな。
これはどういうものなのですかな?」
「これは馬の乗り降りを助ける馬具です。
さらに騎乗中は体を安定させるのに使用します、
一度、見てもらった方が早いかもしれません。今から使って見せますので、少し待って貰えますか」
僕は愛馬・
それを一目見ると、
「なるほど。乗る時にここに足をかけて、乗りやすくするわけですな」
「はい、さらに騎乗中にも足場として使え、戦場ではより戦いやすくなります」
「これは面白い。
あなたがお考えになったのですか?」
自分の発案かと聞かれると困ってしまう。あくまでこれは未来の知識だ。それに
「いや、乗り降りする器具の存在を聞いて、それを改良しただけですよ」
とりあえず、
「今使っているものは木を削って作ったものですが、それを壊れないように金属で作って欲しいんです
形も単純な輪ではなく、より足が起きやすいように平たい面を作って欲しい」
しかし、メモの最中でもちゃんとこちらの言葉に反応してくれるあたりは優秀な商人という感じを受ける。
「ふむふむ。
ご要望の形のものを作ること自体はそこまで難しく無さそうですな。
それと
「この
そういう硬い
「貴方の欲しているものは『
それを
「本当ですか。
やはり、プロ……専門家に頼むのが一番ですね」
さすが、商人といったところか。話しがスムーズに進んでくれて助かる。
「しかし、面白いものを欲しがる方ですな」
「そうだろう。
「ええ、それは構いません。
ところで、
例えば良い馬はどこで見分けますか?」
世平殿はまるで試すかのように僕に尋ねてきた。その質問に僕は戸惑いながらも答えた。
「そうですね。
馬格(馬の体格)とか
見た目だとこの辺りが主な馬の見るところだろうか。後は歩き方なんかも見どころか。
しかし、僕の回答に
「なるほどなるほど。
どうやら貴方の見方は我流のようだ。
それが悪いとは申しませんが、知識があるに越したことはございません。
貴方にこちらを差し上げましょう」
「これは……?」
世平殿より渡されたのは一冊の本であった。
「こちらは?」
随分と年季の入った本だ。いわゆる
「こちらの書物は馬相を見る達人であった
「『
しかし、自分はこの時代の本は……」
本を渡されても、元日本人の僕に漢文だけのこの時代の本なんて読めるわけがない。そう思いながらも、差し出された本を1
「まあ、漢字なら所々はわかるかもしれないし……
ん? んん?
『牛馬はその力量を考え、寒暖、飲食をその天性に適うように気遣えば肥え太らせることができる』
読めるぞ! 漢文のはずなのに何故か読める!」
何故だか漢文が読める。そう言えばこの世界に来たばかりの時は言葉も聞き取れなかったのに、頭痛がしたかと思うと、言葉が聞き取れるようになっていた。文書もあれで読めるようになったのだろうか。転生特典なんだろうか。地味だがありがたい能力だ。
「
「この『
僕は早速、意味のわからない箇所を
「それは古来よりの
つまり、牛馬の飲食をケチってはいけないということです
「なるほど、読めはするけど、古文のような言い回しもあるし、単語もわからないところがちょこちょこある。スラスラ読むとはいかないか。
それでも読めるだけありがたいことに変わりはない」
「この『
この知識を得れば貴方の助けとなるでしょう」
僕は新たな知識に触れて、興奮気味に
世平殿から差し出された一冊の本・『
《続く》