「この男こそが我が部隊の切り札・
そう
一片の迷いもないといった表情だ。一体、何処からそんな自信が
僕、元日本のジョッキー・
そして、戦場で孤立していた
しかし、喜びも
絶体絶命の
「お、おい、
僕からすれば理由のわからない事態だ。ただ、付いてくるだけでいいというから同行したのに、気付いたら切り札として紹介されてしまっていた。
「シッ!
このまま敵にやられたくなけりゃ俺に合わせろ」
どうやら、僕は
確かに
だが、馬に乗ることしかできない自分が、この戦局を打開する切り札になるとはとても思えない。
しかし、
「
まずは
「それを知ってどうするつもりだ?」
「敵の大将を見つければこちらのものです。
我が部隊でその大将の居所に一斉攻撃を仕掛けます。大将が攻撃されたとあれば敵は浮足立って包囲は
包囲が緩みましたら
そうすれば敵軍は崩壊します!」
あまりにも自信たっぷりにそう言うものだから、僕も思わず
しかし、さすがは一軍の大将というべきか、
「君の策はわかった。だが、それは無謀というものだ。
敵は我が軍より多い五千の兵を率いた
君の兵力はわずか百人。大将の側近くまで接近することすら難しいだろう」
思わず
五千の敵兵にわずか百人で攻めて勝てるものじゃない。
一体、この戦力でどう戦うというのか。
だが、
「ご安心ください!
騎馬隊の最大の強みはその機動力です。しかし、馬を降りて包囲した今はその持ち味を活かせません。
それに包囲であれば攻撃が一極集中することもありません。
なにより、こちらにはこの切り札・
そう言いながら
(そうだった!
彼が切り札として名を出したのは軍神・
この僕だった!
二人に武力で敵わないのは言うまでもない。一体、この僕に何を期待しているというのか!)
僕は劉備の進言に驚いたが、それは相手の
「この者がそれほどの男なのか?」
どうも
「はい、そうです。
この
この劉星が戦陣切って戦えば、敵は|怯《おび
》えて逃げ惑い、包囲は突き崩されることでしょう!」
そんな嘘八百がよくもまあツラツラと出てくるものである。馬はまだしも、僕は剣なんてまともに握ったこともないぞ。
あまりの
「お、おい、
「いいから任せろ」
しかし、
「
上官の
だが、それでも
「はい、彼の馬をご覧ください。
あの馬は先の戦いで
そう言って
確かにこの馬は敵から奪った馬だが、あの敵兵を倒したのは
そんな事実はお構いなしに
それに押されて
「うーむ、あの見事な肉付きは確かに
わかった。
彼の作り話のおかげで、見事、
それにしてもとんでもないことになった。
敵への攻撃をわずか百人の劉備軍が受け持つだけでも大変な仕事だ。それに加えてよりにもよって、この僕がその部隊の切り札になってしまった。
確かに転生者が序盤から無双するなんてよくある展開だが、あれは凄い魔法やスキルが貰えるからできることだ。
僕が念じても火は出てこないし、手から水も発射しない。それどころか剣や槍だってまともに使ったことはない。
あるのは前世の記憶と、この馬・
(こんな僕が一体、どうやって五千の兵に挑めと言うのか!)
陣地に帰ると当然、僕は
「おい、
どういうつもりだ!
僕は馬には乗れても、敵兵を斬り捨てるような武勇はないぞ」
僕の前世は日本でジョッキー(騎手)をしていた。その経験のおかげで馬に乗ることができる。
しかし、現代日本で平和に暮らしていた僕は
しかし、この
「まあ、そう怒りなさんな。あの場はああでも言わなきゃ
それにお前が敵を倒す必要はない」
「倒す必要がない?
何を言ってるんだ?」
「お前さんはただ、剣を持って敵の大将まで馬に乗って全速力で突っ込んでくれりゃそれでいい」
「そんな、無茶な!
五千の大軍にたった一人で突っ込めというのか!
たどり着く前に殺されてしまう!」
「まあ、落ち着きなって。
敵将前までは俺たちが全力で守ってやる。
そこまでたどり着いたら、お前さんはただ馬を走らせて大将めがけて突っ込め。それだけで敵は十分ビビる。慌てふためいて包囲どころじゃなくなるだろうよ。