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第43話 偽りの閨*

夫婦間の行為の描写と、最後の方に男性の自慰の描写があります。


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 今晩、ルイトポルトは例の香を使ってパトリツィアを抱く振りをすることにした。最後までしていない事は、早晩宰相に露見するだろう。だからルイトポルトも単なる時間稼ぎだとは分かってはいる。それでもパトリツィアを守るためならルイトポルトは何が何でも足掻く。子供を作る努力をしなければベネディクトがパトリツィアを殺すつもりというのは多分、単なる脅しではない。


 でも子供ができたとしてもパトリツィアの命の危険はなくならない。ベネディクトは、無事に世継ぎの王子が生まれたら、あまり思い通りにならない用なしの娘を処分するかもしれない。パトリツィアは父親の言いなりになる振りをして害にもならない――ベネディクトにとっては役に立たない――報告をしている。


 だからその場しのぎと分かっていても、子供ができないように、でも宰相には子作りをしているように思わせるために抱いている振りをするしかない。


 ルイトポルトは、パトリツィアが来る前に例の香を夫婦の寝室に仕込んだ。そしてパトリツィアが寝室に来てから何食わぬ顔で戻った。最愛の女性を騙す事に良心の呵責がない訳ではない。でもパトリツィアを守るためだとルイトポルトは心を鬼にした。


「パティ、今までごめん。今日は君を最後まで抱くよ」

「ルイ兄様、それは嬉しいけど……急にどうしたの? お父様に言われたから? 無理しないで……」

「違うよ、君をいつだって抱きたいと思ってる」


 ルイトポルトがパトリツィアの中に挿入せず、子種を出していない事に気付いた時、パトリツィアはとても傷ついた。だが彼女はルイトポルトに仇なす宰相の娘であるため、辛いけれどそれも仕方ないと思うしかない。だからもう最後まで抱いて欲しいと夫に迫るのは止めていた。


 ルイトポルトはそれ以上、パトリツィアに何も言わせず、いきなり口づけた。角度を変えて何度も彼女の唇を貪り、舌を割り入れて絡めた。唾液を飲み込めなくなったパトリツィアの口角から透明な液体が垂れてくると、それに沿ってルイトポルトは唇を這わせ、彼女の白い肌を舐めた。


「に、兄様、くすぐったい……ああ……」

「気持ちよくない?」

「ん……わかんない」


 ルイトポルトは、パトリツィアの夜着の胸の中に手を入れた。するとルイトポルトはもう我慢できず、パトリツィアの夜着を乱暴にはだけ、彼女に喰らいついた。


「パティ、大好きだよ……」

「ああ、兄様、兄様!」


 ルイトポルトがパトリツィアの全身を舐めて愛撫し続けると、パトリツィアは何度も達した。彼女の顔は蕩けきって目も半分閉じ、断続的に喘ぎ声を出していた。それを確認すると、ルイトポルトはパトリツィアの膝裏をぐっと持ち上げ、雄を押し付けて挿入する振りをした。彼女は挿入されているような感覚があるようでひときわ大きく喘いだ。


「あああああっ!」

「ごめん、痛い?」

「ああ……」


 パトリツィアからは明確な返事がなかったが、ルイトポルトは腰を押し付ける動きを止めた。でも彼自身、暴発寸前だ。


「パティ、大丈夫?」

「ああ……ああ……」


 パトリツィアは目を完全に瞑っていて半分開いた口からは唾液が垂れてきていた。更にルイトポルトが反応をうかがうと、彼女の身体から徐々に力が抜けていった。今度は完全に気を失ったようだった。


「すまない、パティ……」


 ルイトポルトは反応のないパトリツィアの身体を抱き締め、その言葉が届かない事を承知で詫びた。罪悪感の前にさっきまでの興奮が嘘のように引いていき、昂ぶりは収まっていた。


 ルイトポルトはパトリツィアの身体を布巾で拭い、彼女を少し起こして夜着を着させ、寝台にそっと横たえた。


「パティ、本当にすまない……でも君を守るためなんだ。許して、パティ……」


 ルイトポルトはパトリツィアの額にそっとキスを落とし、内扉から自分の寝室に戻った。


 ひんやりとした寝台に1人きりで横になると、パトリツィアが自分の愛撫で達して千々に乱れた様子がルイトポルトの脳裏に浮かんで離れない。罪悪感のせいで萎えたはずの股間は再び熱を持って寝間着のズボンの前を持ち上げていた。ルイトポルトは無意識にズボンをずり下げて股間に触っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……ああっ」


 パトリツィアと最後までしたらどんなに気持ちよかっただろうか、パトリツィアはどんな風に乱れただろうか――ルイトポルトはその思考から離れられなかった。


 パトリツィアを散々愛撫していた時にルイトポルトは既に限界近くになっており、すぐに自分だけで達してしまった。左手で自分の子種を受け止めると、途端に罪悪感が襲ってきた。


「クソッ!」


 妻を騙して最後まで抱かなかった癖にその痴態に興奮して自慰をしてしまった。ルイトポルトは、自分が汚らしく感じて仕方なくなった。

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