***と***の間は濡れ場です。抵抗のある方は飛ばして読んで下さい。
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パトリツィアは、赤ん坊の時から決められた婚約者ルイトポルトと結婚できて幸せだった。でもそれは、権力欲にまみれた実父の陰謀の上に成り立っていた偽りの幸せだった。
彼女は、愛する夫ルイトポルト――クレーベ王国王太子――のために身を引こうと心に決めた。これから断罪される宰相の娘が次期国王の妃でい続けていいはずがない。優しいルイトポルトが王太子としての責任とパトリツィアへの愛に挟まれて苦しむのをこれ以上見ていらなかった。
でも身を引く前に1度でもいいから身も心も彼の妻になりたいとパトリツィアは切望する。週1回の閨でパトリツィアは愛撫されているだけでいつも気を失い、ルイトポルトは宰相の手前、パトリツィアを最後まで抱いた体を装っている。それにパトリツィアは気付いてしまったのだ。
革命の機運が高まってくると、ルイトポルトは半幽閉状態になり、パトリツィアは彼と会えない日々が続いて気が気でなかった。側近アントンの協力でこっそり会えることになり、ルイトポルトは夫婦の寝室にやって来てパトリツィアに宰相の断罪を予告した。パトリツィアを信頼している故の告白だ。彼はパトリツィアと幼い弟ラファエルは保護すると約束したが、パトリツィアは覚悟を決めて幼馴染でもある夫に懇願した。
「ルイ兄様……私を本当の妻にして……お父様の断罪後、私は罪人の娘……兄様と私は2度と会ってはいけないの。お願い。兄様の愛を私の身体に刻み付けて……兄様に会えなくなっても思い出せるように……」
「あ、会えなくなるなんて、そんなことはないよ」
「いえ、そんな訳にいきません。だから今だけ……お願い、兄様」
上目遣いに涙が溢れそうな顔で懇願されてルイトポルトの理性は振り切れそうになり、パトリツィアを突っぱねていた腕の力が抜けた。すかさずパトリツィアがルイトポルトに抱き着き、彼女の甘い香りがふわりとルイトポルトの鼻腔をくすぐった。その瞬間、頭の中が空っぽになり、ルイトポルトはいつの間にかパトリツィアの唇を貪っていた。
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ルイトポルトはパトリツィアの肌に唇を這わせ、時々赤い花びらを散らした。するとパトリツィアは我慢できずに嬌声を出してしまった。
「はぁ……パティ、かわいいよ。もっと声を聞かせて」
「いやぁ……」
「嫌じゃないでしょう? 僕の愛撫で気持ちよくなってくれてる証拠なんだ。こんなに嬉しいことはないよ」
ルイトポルトは、まだ純潔を保っていた妻を焦らずにじっくりと時間をかけて愛撫した。彼女の身体がルイトポルトを受け入れる事ができそうになってやっと2人は結ばれた。その瞬間、これからの困難を忘れて多幸感に酔いしれ、ただひたすら抱き合ってキスをした。
だが、やがてルイトポルトに限界が近づき、動いてもいいか許しをパトリツィアに得てゆっくり動き始めた。
「パティ、パティ、パティ……大好きだよ、愛してる……」
「ああっ、あああ……兄様、兄様、愛してる!」
パトリツィアは、ルイトポルトが達しそうになった瞬間、脚をがっしりと彼の腰に巻き付けた。思ったよりも力強く巻き付くパトリツィアの脚にあらがえず、彼は欲望を彼女の最奥に吐き出してしまった。だが、彼は宰相を倒してその傀儡となっている父王を廃する前にパトリツィアを妊娠させる訳にはいかない。パトリツィアに避妊用の丸薬を渡し、彼女が口にするのを確認した。
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子種を掻き出している間、パトリツィアの痴態を見て、ルイトポルトは再度沸き起こる欲望に必死に耐えなければならなかった。そのため彼は、彼女が口の中から何かを出したのに気付かなかった。
その後、2人はルイトポルトの寝室へ移動し、ルイトポルトはおやすみのキスをパトリツィアの頬にした後、疲れていていつにもなく早く寝入った。ルイトポルトの寝息が聞こえるようになると、パトリツィアは眠れないまま愛しい夫の穏やかな寝顔をじっと見つめた。
「兄様、ずっと愛してる。ありがとう……さようなら」
パトリツィアの瞳から一筋の涙が頬に流れた。
翌朝、王太子妃パトリツィアの姿は王宮から忽然と消えていた。