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第55話 自暴自棄なペーター*

自暴自棄なペーターが最低なヤリ〇ン野郎になっていますので、ちょっとそういう描写があります。


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「ペーターさん! こっち、こっち」


 シャウエンブルク辺境伯家の侍女がペーターを手招きし、リネン室に入った。彼女の後を追ってペーターも中に入った。


 侍女はペーターに抱き着き、唇を貪った。ペーターは彼女を壁に押し付け、乱暴にスカートをまくって股間をまさぐった。優しさなど全く見えない手つきなのに、侍女は喘ぐ。ペーターはトラウザーズの前を寛げ、侍女を突き上げてからしばらくして呻いて身体を離した。侍女は名残惜しそうにペーターに抱き着くが、ペーターは鬱陶しそうに彼女を突き放す。その目は虚ろだ。


「これを飲め」

「一緒になれば、飲まなくてもいいでしょ」

「俺は結婚する気はない。後腐れない関係しか持てないと最初に言ったはずだ」

「なんで? 私達、相性いいじゃない」

「ああ、でも身体だけだな。でもそのぐらいの女は他にもいる」

「……いいわよ、飲むわよ。アンタみたいなクズの子供、欲しくないもの!」


 侍女はペーターから渡された丸薬を飲み込み、ペーターの股間を蹴った。


「ぐうっ!……な、何、するんだ!」


 侍女は、七転八倒するペーターを尻目にリネン室を出て行った。その姿を廊下の端で見かけた侍女ヨハンナは、眉間に皺を寄せて親指を噛んでいた。


 アントニアが離婚して辺境伯家を出て行って以来、ペーターの私生活は、据え膳食わぬは男の恥、去る者は追わず来る者は拒まずの様相で実に爛れている。


 元々、見目がよく、当主アルブレヒトの覚えのよいペーターに言い寄る使用人女性は多かった。彼が好意を隠さないアントニアがいなくなって以来、言い寄る女は増えたが、女性の扱いが酷くて関係は大抵長続きしない。それでもフランチスカのヒステリーにやられて辺境伯家の侍女の入れ替わりが激しいので、とっかえひっかえしてもペーターの女は途切れない。1年以上続いているのはヨハンナぐらいなものだ。


 だが、ペーターはヨハンナとも結婚する気はなく、どの女とも後腐れのない身体だけの関係を求めている。もし女が途切れるのなら、娼館に行って性欲を発散しただろう。最近開発されたばかりでまだ比較的高価な避妊用の丸薬を用意しても娼館より安いし、色々なタイプの女を楽しめるので、侍女を抱いているだけだ。


 リネン室から出てくる他の侍女を見たその日の晩、ヨハンナはペーターの部屋に夜這いした。


「ペーター、ペーター!」

「ハッ?! 何の用だ、ヨハンナ! どうやってここに入って来た?!」

「そんな事、どうだっていいじゃない。それよりいいことシましょ」


 ヨハンナはペーターの局部を寝間着の上からスリスリと擦った。数時間前にリネン室で欲を発散したにもかかわらず、すぐに柔らかい盛り上がりは芯を持ち始めた。


「うぉっ、や、止めろ!」

「止めろって貴方のアソコは言ってないわよ。貴方は何もしなくていいからじっとしていて」


 ヨハンナはペーターのズボンをずり下げ、その上に乗って毬のように弾んだ。しばらくしてペーターが呻くと、ヨハンナは動きを止めた。


 ペーターはヨハンナをどかすと、ナイトテーブルの引き出しから例の丸薬を出してヨハンナに渡した。ヨハンナがそれを口の中に入れたのを確認すると、ペーターは彼女を部屋から追い出した。


 翌月、王都からペーターの両親がなぜかヨハンナを連れてやって来た。


「お前ももう父親になるんだ。年貢を納めなさい」

「はぁ?!」


 ヨハンナは夜這いの後、避妊用の丸薬を舌の下に入れて飲み込まず、ペーターの部屋から追い出されてから吐き出していた。彼女はそうまでしてもペーターを自分の物にしたかったのだ。


 結婚すると言って両親を送り出してから、ヨハンナと2人きりになるとペーターは宣言した。


「子供ができたから結婚するけど、俺は自分の生活を変えるつもりはない」


 ヨハンナはショックを受けたが、子供が生まれればペーターも変わってくれると思っていた。


 だがその認識は甘かった。ペーターは相変わらず爛れた男女関係を続け、時にはメンヘラ女がヨハンナや娘に危害を加えようとする事すらあった。


 結婚してから10年、ヨハンナは耐え続けたが、次第にペーターへの愛はすり減り、その頃にはもうほとんど情はなくなっていた。一方、ペーターは次第に容色が衰えて以前のように女をひっかけられなくなってイライラして酒浸りになる事が多くなった。


「おい、酒、持ってこい!」

「もうそのぐらいにして!」

「黙れ!」

「キャア!」


 ペーターが投げた空の酒瓶がヨハンナのすぐ横の壁にぶつかって割れた。


「うるせえ!」

「うるさいのは貴方よ! 子供が起きちゃうでしょ?」

「お前が夜這いして勝手に作った子供なんてどうでもいい!」


 その手段を取った事にヨハンナはずっと罪悪感を覚えていたが、いつか子供と3人で乗り越えられないかと微かな希望を持っていた。だが、それも砕け散ったようだった。


 翌日、日も傾きつつある頃になってようやくペーターは目が覚めた。仕事はさぼってしまったが、主人アルブレヒトは当主を引退した身で、その個人的な侍従を務めるペーターには大した仕事がないので、咎められない。


「おい、酒を持ってこい! おい!」


 いくら呼んでも誰も返事をしない。ヨハンナは仕事に行っているのだろうと思ってペーターは二度寝する事にした。


 翌朝、流石に仕事に行こうと思い、朝食を作れとヨハンナを呼んだが、家の中にはペーターしかいなかった。仕事から帰れば妻と娘はいるはずだと思ったが、その日の夜も2人は家にいなかった。


 それから1週間経って流石にペーターも2人が家を出て行った事に気付いた。ヨハンナの実家や友人に連絡して2人がいないか聞こうとして愕然とした。ペーターはヨハンナの両親にも友人にも会った事がない。結婚前に紹介したいと言われたが、ペーターが拒絶したのだ。


 ヨハンナは辺境伯家の侍女の職もいつの間にか辞めていた。ペーターは使用人達にヨハンナの行き先を知らないか、恥を忍んで聞いたが、冷ややかな反応しか返ってこなかった。

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