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6「血と血」

 師匠であり、従姉であり、姉であり………有事の際には法的にも俺の法定代理人でもある。

外部から見れば「従姉」よりも「許嫁」に近い関係性に見られることも含めれば、結衣は常に俺の傍に居てくれる存在。


縁の下の力持ちなんて言葉では足りないくらいに面倒を見てもらっている。


ここまでやってくれた見返りが彼氏彼女、やがては夫婦という関係性だけを求めている節が明確に見えるのが、やはり余計な欲を出さない性格が、流石は結衣だと思う。


普通の男なら、周りからおだてられずとも、据え膳食わぬは男の恥と言わんばかりに応えていくはず。


その据え膳が他の誰よりも良質で、誰からも輝いて見えるものなら尚更。



しかし、俺の場合は、従姉だからという理由だけではないようにも感じている。


男友達の殆どが下半身で物を考える人間が多い中、自分でも不思議に思うくらいに異性に対しての欲求が少ないことも起因している。


初恋が異国の王女であるくらいなのだ。ある程度の欲求はある。そのある程度が平均を大きく下回っていることで、男友達からも異様に映っている。


ただ、言われたところでどうなる事でもない。元々そこまで多くはない欲求を増やすのは無理がある。努力でどうにかなるものでもない。媚薬などを飲めば話は変わるが、わざわざドーピングでもしない限りは増えることはない。


それほどまでに、異性に対しての欲求が少ない。初恋から誰かを好きになったこともない。振られたことが忘れられないのではなく、そこから好きになれる異性が居なかった。


好きになれない理由が異性としての純粋な無関心。人間として面白い人、楽しい人、好意がある人は異性にも沢山会ってきた。仲良くもなってきた。

その沢山の人達の中に異性として見てしまった人は居るのか、という問いについては素直にゼロとしか答えられない。


もはや、初恋ですらも何故好きになったのかを覚えていない。中学二年の夏頃の初恋の俺の心理状態は、5年経った今では完全に記憶から消えてしまっている。


それについても問われたところで答えられない。結衣にも嫉妬されて詰められたことがある。

建前ではなく本音で「何も無かった、何も思っていない」と、何も答えられないことを示しても、なかなか納得してくれなかった時があった。


その時ばかりは言葉の綾として詰められるだけではなく、極道の方々を使って指でも何でも詰められるのか、樹海の土の中に詰められるのかと思ったほどに威圧的だった。


俺への執着が性犯罪者の言動そのものでもあるので、下手に刺激しないような振る舞いが本能的に制御されているのは有難いことではある。


その制御されているところを結衣に引き剥がされることになるのは、果たして………いつになる事やら。


誰かを好きになったことが一度しかなく、結衣以外の異性と二人で出掛けたりなんなりしても、どうにも恋愛感情は湧かない。


どうしたって恋愛にはならないことを見透かされて、異性との交流を結衣に泳がされているのは、流石に多少は恐怖を覚えることもある。

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