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4「踊る勇者」

 アイドル性の高い弁護士である結衣は、自然と周りに下心無しで歩み寄ってくる人間が多いため、自然と仕事などが上手くいく。何かあっても誰かが助けてくれる。


まず、結衣の弁護士としての仕事能力が高いこともある。分家とは言え、宗家の資産の恩恵が受けられないだけであり、鷹司家の一員なのは変わることのない事実。


そこに付随する繋がりと言うこともあり、弁護士の幅を超えた仕事までもこなすこともある。


その仕事が裏稼業である特殊詐欺だ。


俺が中学を卒業する手前から色々とやり方を教えてくれたのも結衣だ。警察との繋がり方、政財界や裏社会へのアプローチの仕方、極道との交流に関するマニュアルを作って提示してくれたのも全て結衣のお陰だ。


誰もが思わず下心無しで仲良くしたくなる人となりと、鷹司家の一員としての様々な繋がりを利用し、特定のルートから案件を仕入れ、その案件になぞらえた詐欺を行う。


案件というのは、別の特殊詐欺や半グレの組織から始まり、度を越している闇金業者や不正を行う国会議員………小規模で言うならば、個人間融資によるトラブルや、依頼人の情報に基づいた上での復讐屋など、多岐に渡る仕事も請け負っている。


その仕事を最初は結衣個人で行い、徐々に協力者が増えていき、組織化。その組織の一部を俺が任されているような状態から始まり、俺は俺なりのやり方で大きくしていったというもの。


つまり、詐欺を始めた切っ掛けそのものは結衣の影響が全てと言っていい。そして、結衣と同じように、法の中では裁き切れない連中への報復を行うための特殊詐欺グループのリーダーをするまでになったのも、結衣の後ろ盾があってこそ。


俺の努力も勿論ある。俺の努力も無ければ、俺には人は付かずに組織としては空中分解する。それが起こらないのは、俺の努力もあってこそ………更に、結衣の存在もあって強固な基礎が出来上がっている。


弁護士という法を扱うプロの目線で見えた闇を少しでも、自分なりに消化しようと行動した結果だと言える。


ちなみに、結衣が俺を詐欺師として育て上げたのは俺への下心だけではなく、俺が独自に築き上げた次世代のロスチャイルド家やイギリス王室を担う人間………世界を牛耳る組織の後継者との繋がりが強かったこともあって、鷹司家の穴でもあった外交力を十分に補えるだけのポテンシャルを持っていると見越されたことも理由の一つ。


一人の人材としても優秀だと言われ、高校時代は入学当初の時期から既に、休日や部活の無い日には付きっきりで多くの大人の関係者に「弟分」として紹介されてきたもの。


結衣が手塩にかけて育てた人材ともなれば、必然的に期待値も上がる。その期待値以上の結果を出すために寝る間も惜しんで努力を続けた。


その努力の甲斐あって今が至る。最低限の学力があればいい。大学なんて行かなくともどうにでもなるというのは、こういう背景もあり、大学については「行けるほどの時間の余裕が無かった」と言うのが正しいかもしれない。



どんなにタイムマネジメントをしていても、1日24時間という制限は変えられないので、その制限に苦労し続けたことが「俺には大学に行く時間はない」と悩むことはなかった。


大学でダラダラと学業に励むよりも、既にある仕事に向き合うことの方が大切だと答えを導き出したまで。





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