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二鷹の欺瞞譚
結城斎太郎
現実世界裏社会
2024年09月07日
公開日
14,380文字
連載中
裏社会、政財界共に太いパイプを持つ資産家の本家である両親のコネクションを使い、特殊詐欺グループの長に齢十九歳という若さで君臨する"鷹司(たかつかさ)和也(かずや)"。

数多の業界に強い繋がりを持つため、警察との癒着もあり、どんな犯罪行為も取り締まられることは一切無い地位を築いている。


金、コネ、地位を全て10代のうちに手に入れた和也。しかし、現状に満足できなくなった和也は、更なる1歩を踏み出す。


「自分の力を使って陰で日本を………世界を、自分の理想で動かしてみせる」という大きな野望を掲げる。


その過程で、母親の実姉の実家である、分家で育った七歳差の弁護士である従姉の桑久保(くわくぼ)結衣(ゆい)の思惑を聞き、政治家に仕立てようと考える。

政財界の繋がりを利用し、身内を政治家にすることで、いずれは国のトップに立たせ、世界単位での裏の繋がりを持つことを企てるが・・・・?


始まり、初まり






✡ ー ー ー ー ー ✡







詐欺師。


それは、世間的には悪質な犯罪者として取り上げられる。他人に対して偽りの情報を流布し、不安感や恐怖心を煽り、金品を騙し掠め取る。


確かに、どう考えても悪質極まりない下劣な行為なのは、実際に生業として活動している俺からも十二分に理解している事だ。


今年で19歳。

高校を卒業し、大学には進学せずに、犯罪に手を染めているようなクズみたいな人生。


両親が放任主義な事もあり、大学に行くか行かないかは勝手にしろというスタンスだった。大学はおろか、高校に行くか行かないかも自分で決めろということを中学時代に言われていた。


小中は義務教育であるため、そこの教育課程は必ず踏まなくてはいけない。サボる……ということも出来たが、世渡りをそれとなくやっていく上での最低限の学力は必要と判断したので、高校までは真面目に通っていた。


小学校は体調不良で何回か休んでしまったが、中学と高校は両方とも無遅刻無欠席で皆勤賞を貰うほどには学業と向き合っていた。


真性の馬鹿として生きていけるほど世の中は甘く出来ていないことは、19年という短い人生の中で見てきた。


両親の背中を見ていれば、それは分かることでもあった。馬鹿という弱者が、いかに強者に食われ続けるという現実を………


子供の頃から自分で行動一つ一つを考える癖が無く、それを育てようという意思すらも持たないと、体がデカくなっていった時には既に手遅れになるという一回り、二回り以上も年上のピーターパン症候群の奴等を何人も見せられてきた。


馬鹿は簡単に吊るし上られては、簡単に潰される。何も持たざる者として産まれ落ちた凡人同士でも、ソーシャル・ネットワーキング・サービス内で散々のように潰しあっているほどだ。


底辺の同レベル間だからこそ、決定打が無く潰し合いというよりは殴り合いのようになり、下らない泥沼の戦争を繰り広げているだけだが………俺みたいに、産まれ落ちた時からの環境が自他共に認めるほどに恵まれていると、こちら側が一方的に潰すことが出来る。


俺の両親は資産家。

資産家とは言っても、田舎の成金やどこぞの陳腐な旧家やら名家やらと言った矮小なものではない。


世界的な大富豪、資産家とも謳われるロスチャイルド家、ロックフェラー家………まではいかなくとも、世間では大々的には名前が上がらないだけであり、政財界、裏社会では日本国内外問わずに名の知れている一族。


特に宗家……俺が産まれた家系が一族全体の利益の九割九分を保持しているため、宗家の力だけを見れば、上記の一族ともそれなりに張れるほどの力を持っている。


それが鷹司宗家である。分家は鷹司の苗字を名乗ることが出来ないので、血縁上は鷹司の者であっても、分家に属する者は成人後には男女問わずに婚姻後には必ず配偶者側の苗字を名乗ること。独身である場合には強制的に苗字を変えられるまでも平気で行われる。


当然だ。鷹司の人間は宗家だけで十分なのだ。宗家だけが正義であり、宗家以外は部外者でしかない。


では、年功序列で下の兄弟は理不尽に蔑まれるのか?と問いが投げ掛けられることもある。それは全くの見当違いの問いである。


表面上でしか物事を判断しようとしない、先入観と固定概念で洗脳された無能の象徴とも言える問いかけであろう。



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