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VSレイプ魔と逃亡劇と天使様

 ケリィはエリシアが横になったのを見て、ようやくかと思った。寝る前に何か落書きをしていたようだが、冒険者でも無い小娘が警戒しながら寝るなんて芸当はできないだろうからだ。

 ケリィはエリシアの事を女として高く評価していた。エリシアが作ったクヌーのスープは街で食べたスープよりもかなり美味しかったのだ。だから、エリシアはアルフレッドにはもったいないと思った。

 祝福を受けた時点でアルフレッドは冒険者としてエリシアを誘うつもりのようだが、エリシアは難色を示すだろう。だから、メスとしてちゃんと調教して服従させるべきだとケリィは考えた。

 アルフレッドの性格上、まだエリシアには手は出してないだろうから、エリシアはウブだろう。ウブの女をどうやって調服させようかと、ケリィは滾る股間を抑えながら昼間は狩に勤しんだものである。

 時間にしてそれなりに時間が経ち、アルフレッドはケリィに交代を告げる。


「ケリィ、交代の時間だ」

「……ああ、もうそんな時間か」

「ああ、今日も特に何もなくて暇で仕方なかったよ」

「そうか、なら、まあゆっくり寝るといい」

「ああ、そうさせてもらうさ」


 そう言って、アルフレッドは座って寝るための獣の皮を体に巻き、目を瞑る。ケリィは自分の荷物からスクロールを取り出す。通常剣士系統の祝福を受けた人物はその人物に才能がない限りは魔法を使うことはほぼ無い。なので、生活魔法に関する魔法のスクロールは冒険者の間でも生活必需品となっている。ケリィが取り出したのは、《|睡眠《スリープ》》のスクロールである。これを、アルフレッドとヴィレディにかけておくのだ。


「……ふふっ」


 ケリィは実は、ルビーに対してもすでに手を出している。おそらく、ヴィレディとよりも回数が多いだろうとケリィは思っている。連れてくるたびに、ケリィはルビーを抱いていたからである。ヴィレディも気づかないと言うことは、ルビーはそれを言わないと言う命令を守っていると言うことである。

 アルフレッドにエリシアを連れてくるように言ったのはケリィである。ルビーは散々抱いたので、別の女を抱きたいと思ったのがきっかけだ。


「エリシアはどんな声で鳴いてくれるんだろうな?」


 ケリィはエリシアを自分の女にするつもりであった。テクニックは自信があるし、最初はレイプをして口封じをするつもりだが、いっぱい抱いてやれば落ちるとケリィは確信していたのだ。


「じゃあ、よく眠れよ。《|睡眠《スリープ》》」


 ケリィは《|睡眠《スリープ》》をヴィレディとアルフレッドにかける。ケリィは魔力を消費した感覚を感じ、アルフレッドとヴィレディの寝息が熟睡したものに変わったのを確認すると、スクロールを荷物にしまう。

 ケリィがエリシアのそばまで、股間を滾らせて近づくと、爆発音と物凄い光がケリィを襲ったのだった。


 あたしは、すぐに意識を浮上させると、素早く逃げる。誰かは知らないけれど、あたしに近づいた何かがいると言うことだからだ。

 光が戻ると、下半身を露出させてイキり立たせたバベルの塔をぶら下げたケリィが、あたしが寝ていた場所に立っていた。


「警戒して正解だったわね」


 夢の中の人物のそれで見慣れていたつもりだったが、ケリィのモノはそれより大きかった。あれで犯されたら、きっと股が裂けてしまうんじゃないかって思うレベルだった。


「くっ、エリシア! 何しやがった!」

「それはこっちのセリフよ!」


 アルフレッドも、ヴィレディもあれだけの音と光があったにもかかわらず起きる気配がない。何か睡眠系の魔法でもかけられたのだろうとあたしは思った。


「エリシア、あんまりやりたくなかったが、少しお仕置きが必要だな!」

「あたしがお仕置きされる謂れはないわね!」


 あたしは魔法をためらっている時ではないなと感じた。貞操の危機なのだ。だから、あたしはルーン文字を空中に書き込む。


【原初の力よ、全てを焼き尽くす炎よ、我が敵を焼き滅ぼしたまえ──《|火炎球《ファイアボール》》】


 空中に描いた文字列が炎をまとい、ケリィを狙う火炎球に変わる。


「この女、魔法使えるのかよ! てことはアレも魔法か!」


 ケリィはあたしの魔法を上手く避ける。イキり立ったモノはそのままである。ケリィはその身のこなしであたしの元へと距離を詰め寄ろうとする。


「近づかせるか! 詠唱省略|火炎球《ファイアボール》」


 ルーン魔法は本来詠唱は不要である。あたしが詠唱をするのは、ルーン文字だけでは詳細な制御ができないからである。ただ、直前に使った魔法ならば、魔力の感覚がわかるので、詠唱省略をして行使することができる。


「なっ! アルはエリシアははまだ祝福を受けてないって言ってたが、嘘じゃねぇか!」


 ケリィには1発も《|火炎球《ファイアボール》》は当たっていないが牽制にはなっているようである。


「あたしはまだ祝福を受けていないわよ!」

「嘘だろ!」


 魔力がスルスルと体から抜け出ていくが、止めるわけにはいかない。止めれば暴行された上でレイプされるのだ。あたしはそんなのは嫌だ。

 なので、あたしは森の方へと逃げる。どっちにしても朝まで逃げ切らないといけないのだ。ならば獣道まで辿り着ければ無事に逃げられるだろう。方向音痴ではないので、月明かりを信じて進むだけである。

 どっちにしても、最悪の選択ならば、あたしは可能性のある方を選ぶのだ。


 ケリィは焦っていた。祝福もないのに《魔法使い》レベルの魔法の使い手だったエリシアが、森の方へ逃げてしまったのだ。これはまずい。アルフレッドが起きた時にエリシアが居なければ、糾弾されるに決まっているのだ。まさかこんなことになるとは想定すらしていなかったので、ケリィはパニクってしまう。


「探しにいくしかないか!」


 ケリィは服を着て、剣を背負うと、エリシアが逃げた方向に走り出した。


 あたしはケリィを撒くために、あえて無茶苦茶な方角に逃げていた。ゴブリンに道中出くわしたが、全員|火炎球《ファイアボール》の餌食にしている。念のため、湖の水を携帯していて良かったと安堵する。攻撃用の魔法は魔力の消費が大きいのだ。

 時知りの月を見るとおおよそ2時頃だとわかる。方位知り月から合わせて、大体の自分の向いている方向は分かっている。夢の世界とは違い、あたしの世界には月が2つ存在する。時知り月は夜の時間を測るのに、方位知り月は時知り月と合わせて方角を知るのに使われる。これは冒険者であったお父さんから学んだことなので、村の他の女の子は知らないだろうと思う。

 あたしが時間稼ぎのためにしばらく歩いていると、泉があった。その泉は七色に輝いており、幻想的な様子を見せている。


「アレは……魔力溜まりかしら?」


 これはお父さんから聞いた話であるが、魔物が出現する場所に時として不思議な魔力溜まりが出現することがあると言う。そこを訪れる事が出来た冒険者は、成功が約束されるとかなんとか。ただの村娘のあたしには関係がない話だけど、せっかくそう言うレアな場所を見つけたのだから、ちょっと覗いてみようかなと思う。


「改めて見ると不思議な場所ね……」


 魔力が満ちており、木々や草などが七色に輝いているのだ。泉の水も七色に輝いており、不思議な感じである。


『よくぞここにたどり着きましたね』


 不意に声が聞こえる。声の方をみると、泉の真ん中に今まではいなかったはずの女性が水面に立っていた。


『あら、あなた、まだ女神様の祝福を受けていないのね』


 その女性は、いわゆる天使と言うものだろうか? 教会に描かれている天使に酷似した姿をしていた。


「天使……様……?」


 あたしは呆けたようにその自制を見ていた。


『正確に言うと若干違いますが、似たようなものですね。女神様からの貴女に会うようにと言われ、降りてきました。エリシア・デュ・リナーシス』


 天使様はそうニッコリと微笑む。あたしの名前が呼ばれて、さらに驚く。


「え、それってどういう……?」

『間も無く、この世界で勇者が召喚されます』


 どう言う事だろうか? まだ、召喚されていないと言うことなのだろうか?


『あなた、いや■■■■はこの世界とは違う神にとあるスキルを渡されました。あなたはまだ、そのスキルに目覚めていないようなのですがね』


 誰の名前だろうか、よく聞き取れなかった。いやおそらくあたしだけには聞き取れなかったのかもしれない。


『あなたが渡されたスキルは、【魔女術ウィッチクラフト】と言います。祝福を受けていないにもかかわらず、あなたが魔法を、たやすく行使できるのは、このスキルの影響ですね』

「は、はぁ」


 確かに、夢の中の人物は神様と自称する人物にスキルをもらっていた。だけれども、それが今のあたしとなんの関係が……?


『ただ、このスキルに彼は耐えられなかった。召喚時の物質の分解時に、彼の肉体は完全に崩壊してしまったのです。だから、時間を遡ってエリシア・デュ・リナーシスとして転生させました』

「え、ええっ!?」


 異世界転生ものは、普通赤ん坊の頃から前世の記憶を持っているのが定石である。だけれども、あたしは別に12歳になるまでは普通に村娘として生活していた。


『今のあなたなら、■■■■の最後の瞬間までバッチリと覚えているはずです』

「いや、ええ……」


 どうやら、あたしは夢の中の人物の転生体だと言う事らしい。と言うことは、本来のエリシアの魂は?!


『それなら安心してください。もともとエリシアは流れる予定でした。■■■■の魂が入ったとしても、問題はありませんよ」

「え、声に出してないのに……」

『私はそう、あなたたちが言う天使様です。これくらいなら私でも出来ますよ』


 どうやら心が読まれるようだった。


『さて、エリシアには女神様からの天啓と、これを授けることにしましょう』


 天使様はそう言うと、泉から美しい剣を取り出した。


『■■■■の世界では例えばエクスカリバーと名前が付けられていることがありますが、これはこちらの世界のいくつかある聖剣の内の一振りです。銘はありませんので、エリシア・デュ・リナーシスがつけて構いません。これをあなたに授けます』

「え、えええ!?」


 何が起きているのかはわからないが、あたしの世界が急激に変化していることはわかった。

 不意にその聖剣が天使様の手から消えると。あたしの中に何かが入ってきたような感覚を感じた。


『その聖剣は、鞘がありません。なのであなたの中に仕舞っておきますね。大丈夫、あなたが念じれば聖剣として手元に召喚されます』


 あたしは言われて、聖剣を取り出すように念じてみる。要するに魔力と同じだ。ルーン文字を手のひらに書くイメージで念じると、右手に先ほどの剣が出現する。


『そうそう、上手上手。エリシア・デュ・リナーシスが魔法の才能に溢れているのはスキル【魔女術ウィッチクラフト】の影響だけではなさそうですね。大変喜ばしいことです』


 色々ありすぎて、あたしの頭はオーバーヒートしそうだった。

 こう言うよくわからない言葉がスラスラ出てくるのも、あたしがその人の転生体だからなんだと言うことで納得がいく。


『では、最後にあなたに天啓を。

【エリシア・デュ・リナーシスは世界を広く知りなさい。冒険者でも、それ以外でも、とにかくリナーシス村を出て、世界を知りなさい】

 と言うことらしいです。祝福は例え冒険者となるにしても不足のないものを用意しておくとおっしゃられていましたよ』

「あ、ありがとうございます……」


 あたしは天使様に対して、膝をついて祈りを捧げるようなポーズをする。これが天使様たちへの敬礼だとお母さんから教えてもらっているのだ。


『ついでに、あなたを森の入り口まで送って差し上げましょう。レイプ魔からレイプをされたくないでしょうしね』


 それは助かるなとあたしは思った。ショートカットできるならばショートカットしたいのは事実なのだから。


『では、エリシア・デュ・リナーシス。後悔しない選択を……』


 天使様がそう言うと、あたしは光に包まれる。そして気づいたらあたしは森の入り口に呆然と立っていたのだった。

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