「マケール様、貴方は既に廃嫡されてましたのよ。ですから私とは婚約してないし、そこの男爵令嬢も王妃にはなれませんわ」
なるほど、今回はそういう理由で婚約破棄失敗したパターンなんだな。マケールが思ったのはそれだけだった。既に彼は、婚約破棄や真実の愛などどうでも良くなっていた。彼の目的はここから逆転してざまぁする事のみ。
「マケー!」
マケールが本日のビックリドッキリチートを発動させると、衛兵が掴みかかって来るビジョンが見えた。
そう、今回選ばれたチートは未来視。時間操作系はどれも強力な反面デメリットが多いので、一番リスクの少なさそうなこれが選ばれたのだ。
「マッケー!」
衛兵の動きを先読みしたマケールはその場に倒れ込み、衛兵に掴みかかられる未来を回避した。そうしたら、マウントポジションを取られてボコボコにされた。
「マケー?」
マケールが未来を変えた事で、衛兵の行動も変わったのだ。というか、衛兵からしてみたら、マケールが勝手に不利な体勢になってくれたので、捕まえやすくなっただけである。
「マケマケ!」
再度未来視を発動するマケール。マウント継続して顔面殴る衛兵が映し出された。
「マケッマケ!」
マウントを出る知識も技術も無いマケールは、なおも未来視に頼る。変わらず衛兵はマウントハンチを続けていた。
「マケ…」
未来を見てもマウントハンチ、現実時間でもマウントハンチ。マケールは体感二倍の時間殴られ続け精神が崩壊していった。
■ ■ ■
「チートが無いと何も出来ない未来を見ても、チートが無いからざまぁされるだけだよね」
「チートが無いと何も出来ない未来を見ても、チートが無いからざまぁされるだけだよね」
女神が二回同じ言葉を繰り返したのを聞き、マケールはこの場所に戻って来た時も一瞬だけチートが消えずに残ってるのかなと思った。
「それで、次回のチートはどうするの?」
「マケケ」
今回は早々に詰みの状態になってしまったから、その分次回のチートを考える時間があった。マケールは、衛兵にマウントされながら考えていたチートを宣言する。
「マケケマケケケ」
「こりゃまた、随分シンプルなチートね。でも、頭の良くない君にはこのぐらいのが良いかも知れないわね。じゃあ、行ってらっしゃい。私は白米食べて見てるから」
マケールは学習した。これまでの敗因は、女神がチートの意味を履き違えていた事や、マケールがチートの内容を正しく理解していない事や、単純にそのチートに状況を打開する力が足りなかった事がある。
だから、今回は女神もマケールも解釈間違いがしようが無い、そして間違いなく強いチートを選んだ。