「マケール様、私その時間はピアノのレッスンしていたのですよ?なのに、どうやって男爵令嬢と会えたというのです?」
「マケッ?」
気が付くと卒業パーティの最中だった。またマケールはここに戻って来たのだ。
いや、正確にはこの世界は前回の世界を女神が再現したパラレルワールドなのだが、マケールはそんなの知った事じゃ無いし、目の前の悪役令嬢も何か雰囲気違うけど誤差の範囲なので、婚約者っぽいコイツをざまぁ出来ればマケール的には満足なので何の問題も無かった。
「さあマケール様、反論があるのならおっしゃって下さい」
「マケーッ!」
マケールの返答はチート発動だった。見た目に変化は無いが、何か魔術的な事をしてそうだと思った悪役令嬢が殴りかかって来た。
「何か良からぬ事をしてるみたいですが、暴力は全てを解決しますわ!」
カキーン!
「はうあ!」
殴りかかった悪役令嬢の方が鼻血を出して吹っ飛んだ。
「マケケッ」
チートが正常に発動したのを確認し、マケールはほくそ笑む。今回、彼が女神に頼んだチートは、『物理全反射』。その名の通り、自分に対して向かって来る物理エレルギーを全て真逆に跳ね返す能力だ。
「撃てー!悪役令嬢様を守るのだー!」
衛兵達が一斉に矢を放つ。既にパーティ会場に居る連中は全員悪役令嬢の味方だった。だが、マケールに向かって放たれた矢は全て射手の方へ戻って来る。
「マケーッ?マケーッケッケッケ」
このチートはマケールの意思とは関係無くオートで発動する。つまり、不意打ちされようが、寝てる最中に襲われようが、マケールが傷を負う事は決して無いのだ。
「マケマケ」
自分を裏切り馬鹿にしてきた連中が絶望するのを見て気分が良くなったマケールはその場で喜びの舞を踊るが、その足が突然床から浮き上がった。
「マ、マケ?」
マケールの身体がゆっくりと上昇し始める。ジタバタと手足を動かして戻ろつとするが、グングンと加速して、天井を突き破って大空へと飛び立った。
「マケーッ!マケ〜ッ!マ…ケ」
マケールは二度と祖国には戻れなかった。宇宙へと飛び出した彼はたちまち凍りつき即死した。そして、肉体の耐久力は据え置きだったので、帰ろつと思っても帰れないので考えるのを辞めるとか、そんな暇も無く死ねた事こそが彼にとっての最後の幸運だったのかも知れない。
■ ■ ■
天界に死に戻りしたマケールは、自分が宇宙に飛び出した事について当然文句を言った。
「マケケ!マケケ!マー!ケー!」
「だって、物理エレルギーをオートで全反射でしょ?貴方に掛かる重力も反転するに決まってるじゃ無い」
「マッケー!?」
そこは融通きかせろよと怒るマケールだったが、注文通りのチートを作ったと言われ、またしても引き下がる。なんせ、この女神は大声一つでマケールを殺せるぐらい強いのだ。そんな女神を見てマケールは閃いた。
「マケーッ!」
「ふふ、どうやら次のチートを思い付いた様ね。がんばれ♡がんばれ♡」
パーティ会場の人々は知る事になるだろう。デカい奴には勝てないという事を。