目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第57話 クラスがバラバラになる

悪夢は突然訪れる。それはクラス発表の日。


雪にとって、史上最悪の悪夢だと言っても過言ではない。


一緒のクラスになるべき人となれなかった。そして、なりたくない人と一緒となる。それは菊地雄哉。そして、綾瀬 瑞希。

彼女の桜と、親友である亮輔とはバラバラとなってしまった。


学校に通うのが嫌になりそうだった。

後ろから脳天を叩かれたようにがっかりした。

これからどうクラスで過ごそうかとモヤモヤ考える。友達なんていない。今までの過ごし方とは難しい。心が小さいとか、男だろとかよく言うけど、男だって、嫌なものは嫌なのだ。


陰キャラのまま過ごすしかないかと顔を腕の中に埋める。


石川亜香里という過去との関わりで濃厚な時間を過ごした女子だ。同じクラスになってしまった。厄日だ。


「雪ちゃん、よろしくね。1年間いっしょのクラスぅ」


 ピースサインをしてこちらを見る。何が悲しくて、この嫌なメンバーと過ごさないといけないのか。大人しく徹するしかないだろう。陰キャラを召喚してやると決めた雪だった。


「亮輔くん。雪とクラス離れちゃったけど、心配なんだよね。

フォロー頼んでいい?」


桜は同じクラスの亮輔に懇願する。自分自身ではフォローしきれない何かがある気がした。


「それは俺もそう感じていた。隣のクラスだけど、教室内でのことはわからないからな。できるだけのことはするけどな。俺も頑張るけど、桜、お前もな」


「あ、うん。それはそのつもりだけどさ」

 頷いて相槌をうつ。


「桜、ほら、いくヨォ」

 早速、クラス内で女友達を作った桜は、呼ばれていた。そっちの方は心配なさそうだ。


「うん、今行くよ。ごめんね、亮輔くん。よろしくね」

「ああ」


 ポケットに手をつっこんで、教室内を見渡した。人のことを考えるほど余裕のないのは、亮輔も同じだ。友達作りを積極的に作る自分でもない。1人でいるのは苦痛な方。誰か声かけてこないかなと思ったりする。


「伊藤亮輔くんって、東中だよね?」


後ろの席から声をかけてきたのは、丸ぶちめがねをしているまるで魔法使いのような男子だった。


「ああ、そうだけど」

「俺、西中だよ。共通点が今の所、見つけられないけど、

よろしく」


よくわからない感じに声をかけられて、なぜかほっとする。


「お、おう。よろしく。えっと……」

「田崎 瑛太郎。えいちゃんって呼んで」

「えいちゃね」

「りょうちゃんって呼んでいい?」

「お好きにどうぞ」

「てかさ、りょうちゃん頭いい?」

「いや、人並みだけど」

「人並みか。同志だな」

「そ、そうなのか?」

「まあ、いいさ。お互いがんばろな」


 亮輔は雪以外の友達ができて安心する。自分のことも考えておかなきゃと思った矢先だった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?