悪夢は突然訪れる。それはクラス発表の日。
雪にとって、史上最悪の悪夢だと言っても過言ではない。
一緒のクラスになるべき人となれなかった。そして、なりたくない人と一緒となる。それは菊地雄哉。そして、綾瀬 瑞希。
彼女の桜と、親友である亮輔とはバラバラとなってしまった。
学校に通うのが嫌になりそうだった。
後ろから脳天を叩かれたようにがっかりした。
これからどうクラスで過ごそうかとモヤモヤ考える。友達なんていない。今までの過ごし方とは難しい。心が小さいとか、男だろとかよく言うけど、男だって、嫌なものは嫌なのだ。
陰キャラのまま過ごすしかないかと顔を腕の中に埋める。
石川亜香里という過去との関わりで濃厚な時間を過ごした女子だ。同じクラスになってしまった。厄日だ。
「雪ちゃん、よろしくね。1年間いっしょのクラスぅ」
ピースサインをしてこちらを見る。何が悲しくて、この嫌なメンバーと過ごさないといけないのか。大人しく徹するしかないだろう。陰キャラを召喚してやると決めた雪だった。
「亮輔くん。雪とクラス離れちゃったけど、心配なんだよね。
フォロー頼んでいい?」
桜は同じクラスの亮輔に懇願する。自分自身ではフォローしきれない何かがある気がした。
「それは俺もそう感じていた。隣のクラスだけど、教室内でのことはわからないからな。できるだけのことはするけどな。俺も頑張るけど、桜、お前もな」
「あ、うん。それはそのつもりだけどさ」
頷いて相槌をうつ。
「桜、ほら、いくヨォ」
早速、クラス内で女友達を作った桜は、呼ばれていた。そっちの方は心配なさそうだ。
「うん、今行くよ。ごめんね、亮輔くん。よろしくね」
「ああ」
ポケットに手をつっこんで、教室内を見渡した。人のことを考えるほど余裕のないのは、亮輔も同じだ。友達作りを積極的に作る自分でもない。1人でいるのは苦痛な方。誰か声かけてこないかなと思ったりする。
「伊藤亮輔くんって、東中だよね?」
後ろの席から声をかけてきたのは、丸ぶちめがねをしているまるで魔法使いのような男子だった。
「ああ、そうだけど」
「俺、西中だよ。共通点が今の所、見つけられないけど、
よろしく」
よくわからない感じに声をかけられて、なぜかほっとする。
「お、おう。よろしく。えっと……」
「田崎 瑛太郎。えいちゃんって呼んで」
「えいちゃね」
「りょうちゃんって呼んでいい?」
「お好きにどうぞ」
「てかさ、りょうちゃん頭いい?」
「いや、人並みだけど」
「人並みか。同志だな」
「そ、そうなのか?」
「まあ、いいさ。お互いがんばろな」
亮輔は雪以外の友達ができて安心する。自分のことも考えておかなきゃと思った矢先だった。