遅刻確定である朝の時間。教室ではすでにHRが始まっていた。平然とした顔で、後ろの出入り口から2人は静かに教室に入った。
「なんだ、なんだ?珍しい組み合わせだな。堂々と遅刻だけども…。まあ、いいや。漆島と綾瀬ね。すぐに席座って」
担当の先生は、特に強く指摘することもなくさっぱりとした対応だった。雪はホッと一息ついて、桜は次の授業の教科書を出して気持ちを落ち着かせていた。隣にいた菊地雄哉は特に気にする素ぶりも見せずいつも通り、教壇に立つ担任を見ていた。雪や桜のことは見向きもしない。もしかしたら、想像以上に考えすぎていたのかもしれない。雪は右手で左肩をぽりぽりとかき、何だか考えすぎていた自分はおかしかったかなと改めた。
外の空を見ると青空が広がっていた。心が晴れやかになった。桜もほっと安心して、教科書を出して授業の準備をした。
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その頃の亮輔は、ベッドの上、額に熱さまシートをつけて体温計を脇に挟んでくしゃみを連発していた。
「ちくしょー。誰か俺の噂してんのかな」
鼻水がずるずると流れていた。ティッシュを鼻にあてて
ずずーと拭った。ベッドからゴミ箱にぽいっと入れようとしたが、入らなかった。
「今日は全然ついてないな」
ゴミ箱に入れて直して、またふとんを頭からかけて横になった。ラックが近所を走っていた。ガタガタと振動が響いている。