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第39話 心の支えはやっぱり

ふとんの中はあたたかい。そして裏切らない。寒さから守ってくれる。ぬくぬくから抜けられない。食事をまともに摂ったのはいつだろう。寝返りを打って、部屋を見た。のっそりと大きい体の亮輔が静かにあぐらをかいてた。


驚きすぎて、体にかけていたふとんをすっ飛ばした。さっきまでふとんと友達というか恋人だったのにあっさり離してしまう。


「な、な、なんで、ここに? 亮輔。不法侵入だぞ」

「バカかって。雪の母さんに許可は得てるよ」

「う、うそ。いつ入ってきた?」

「んー? 30分くらい前?」

「いやいや、その時に起こせって。長すぎるだろ。なんだ、その30分」

「起こしたよ。揺さぶっても起きねぇからこうやって、スマホゲームして待ってたんだろ」

「ああ、ああ。そうですかそうですか。お待ちいただきまして、ありがとうございますとでも言えばいいのか?」

「ん? 大丈夫か、雪。俺は、声かけたんだぞ。返事しないのはそっちだ」


 雪は、起き上がって、パジャマ姿のまま亮輔の前に正座で座った。


「まぁ、そうですけどもぉ。てか、なんで、俺のうちに?」

「ノートと宿題プリント持ってきた。ほらよ」


 バックから、丁寧に板書したであろうノートとクリアファイルに入ったままのプリントを受け取った。デジャブ。いつかもこういう瞬間があった。そう、それは中学のいじめの時、不登校になった。またその時と同じ道を辿ろうとしているのか。雪は、フラッシュバックする。


「うぅ……。頭痛い」

「横になればいい」


 何か変なことを考えたんだろうと雪をベッドに誘導する亮輔。何もかも知ってる亮輔は雪にとっては、 欠かせない人の1人だ。


 そのはずなのに、例の彼女を付き合ってると思うと近寄りがたくなる。気持ちが揺れる。


「俺は、想像以上にお前を心配してるんだからな。わかねぇかもしんねぇけど」


「……」


 頭痛を和らぐようにと、ふとんの中にまたもぐった。こんなダメ人間になっても、放っておかない亮輔がいて、救われる。雪は、涙が出そうになる。桜と付き合わないで、自分のことをずっと見ててと言いたくなるほどだ。


「学校は大丈夫だから。安心して来いよ。待ってるから」

「……でも、お前が…桜が…」

「知ってるよ、そのことで悩んでるのも。良いから、明日は絶対来いよ!?」

「……最善を尽くす」

「嘘っぽいな」

「努力する」

「それは本当っぽい」

「俺の何がわかるんだよ」

「わかるよ、だいたいな。んじゃ、俺帰るから」

「え、もう?」

「俺はお前の彼氏じゃない!」

「知ってるつーの」


 雪は亮輔に枕を投げた。バタンと閉めたドアに当たる。

 本当は来てくれてものすごく嬉しかった雪だった。階段をおりる亮輔も笑みを浮かべていた。言い忘れていたことを思い出した。


「あ、雪、忘れてたんだけど、桜が、ラインの返事よこせって。心配してるぞ」

「え? 桜が?」

「ああ、忘れるなよ。じゃぁな」

「……ああ。わかった」


 少し気持ちが落ち着き始めていた。

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