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第30話 雄哉の嫉妬、心揺れる桜と雪の恋

 学校の屋上にあるカザミドリが今日は風は無風だとどや顔で止まっていた。雪は、バックの中がカタカタと言って走りながら昇降口に向かっていた。上の方の靴箱から上靴を取ると隣に桜がちょうど上靴を履き終えていた。


「あ、おはよう」

「おはよう。今日はバラバラだったね。車両乗ったの前の方だった?」

「うん、そう。もしかして、寝坊したの?」

「え、なんでわかった?」

「だって、これ」


 頭の後ろの方を手で撫でて直そうとする桜。寝坊をして、寝癖直しをする暇がなかった。


「あ、そっか。寝癖ね。俺、こういうの気づかないで

 来ちゃうことあるのよ」

「知ってる」


 笑って答える桜がかわいかった。


「もう、覚えないで。そういうの」

「いいじゃん。人間らしいよ」

「人間らしいって、 確かにロボットじゃないけど」


 そんな良さそうな姿を見た雄哉は、機嫌が悪かった。バツ悪く、付き合っていた金城深月と別れたばかりで不満がたまっていた。他人のものはうらやましく思うもの。隣の芝生は青く見える。雄哉は、雪のことが憎かった。自分よりもやしのように細いやつがどうして桜と一緒にいるのかと嫉妬した。壁に腕を組んで立っていた雄哉の前をいなかったのように通り過ぎる。

腹が立って、思わず


「おい!!」

「……菊地くん、おはよう」


 桜はいつも通りに挨拶した。雪は、そんな挨拶する関係でもないだろうと無視をした。過去の恨みはずっと消えない。


「無視するなよ」


 雄哉はそれでも雪に話しかけて欲しかったらしい。構ってほしいのか。


「……」


 意地でも話したくない雪は、冷淡な顔で雄哉を見た。


「お前さ、なんだよ、その目。すっげーむかつくんだよな」


 雪は、何も言わずにずっと睨みつけた。


「てか、こっち来いよ!」

 腕をがっちりと掴まれて、誘導されたが、振り払ってはねのけた。


「は?! こっち来いって言ってるだろ?」

「やだ」

「いいから来いって!!」


 雪は雄哉に自動販売機があるラウンジに連れて行かれた。


「来ましたけど、なんの用事ですか?」

「……その態度が気に入らないけどさ」

「……」

「あのさ、お前、桜と付き合ってんの?」

「そうだけど、それが何か」

「もやしのくせに自惚れてんな、お前に桜は釣り合わないよ」

「……んじゃ、誰がお似合いなんですかね。まさか、菊地くんとでも言うの?」


 雄哉は雪の胸ぐらを掴まれて、壁に追い詰められた。まさかのまた壁どんをするのかと覚悟していた。それは、学習能力がある犬と同じで2度はしないようだ。額に額をつけられて、思いっきりガンつけられた。


「桜と別れないとどうなるかわからないぞ。俺は」

「どうなるって、どうするのさ」


 強気で立ち向かう。


「お前に不幸が訪れるな。絶対」

「何、それ。神様か運勢かって不確かなこというのか」


 頬をぎゅーーとつままれて、細くされた。


「調子乗ってるとタダじゃおかないからな」


 口をとがらせながら、


「何、それってお金かかるってこと?」


 地面につばを吐く雄哉。細々と話す雪に苛立ちが止まらない。何も反論せず、教室の方へ向かう。なんだか、桜と付き合うには、障害が多いと感じた。


「雪、大丈夫?」


 少し離れてみていた桜が近づいてきてくれた。


「うん、大丈夫」


 雪は着ていた制服を整えた。バックを肩にかけて、教室に向かう。桜はさっきの様子を見て心配になってくる。


「大丈夫だから。気にしないで」


 雪はそっと桜に話しかける。ちょうどそこでチャイムが鳴り響いた。

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