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第18話 桜の心境

「ただいま」


 桜は、玄関のドアを開けて、グレーの靴をそろえた。隣には、水色のスニーカーがあった。瑞希の靴だった。中に入るとリビングのソファに座って、瑞希は、バニラアイスを食べていた。


「あ、ずるい。私も欲しい」

「おかえり、桜。残念、チョコアイスならあるよ?」

「桜、おかえり。今日は、遅かったね」

「そうかな。普通にいつも通りの電車で帰ってきたよ。あ、イヤホン、返すの忘れてた」


 桜は左耳につけたイヤホンに気づいた。雪から借りたイヤホンをすっかり返すのを忘れていた。猫のガシャポンの話が盛り上がって、夢中になっていた。最近出たガシャポンでメロンクリームソーダの上に可愛い猫がのっかった置物だった。コーラフロートやラムネソーダもあった。カラフルで可愛いねの話だった。いつの間にか、一緒の電車で雪は立ってつり革に桜は空いていた座席に座って、話しながら過ごしていた。イヤホンはお互いに好きな音楽だった。離れた瞬間に音が消えたことさえも気づかなかった。駅のホームのサイレンが大きかったせいか。心が満足していて、それどころじゃなかったのかもしれない。片方の白いワイヤレスイヤホンを手のひらの上に乗せた。


「あら、何、桜。そんな高級そうなイヤホン持ってたの?」

「ううん、これ。友達の。ゲーセンの景品で500円しないで取れたって言ってた。でも、性能いいよ」

「え?片方しかないじゃない」


 桜の母は、イヤホンをじろじろと手に持ってみた。小さな貝殻みたいだった。


「片方…そう、一緒に音楽聴いてて、すっかり忘れてた。何か、アクセサリーみたいで軽いから気づかなかった。コードあればすぐわかったけど」


 瑞希はアイスを食べ終えて、桜の後ろにまわる。


「ねぇ、それ。友達って、誰」

「え?」

「女子?」


 桜はドキッとした。これは瑞希にバレたくないやつ。


「う、うん。そう、女子女子!」

「え、嘘だ。私、絶対漆島くんかなって思った」


 さすがは双子、勘は鋭いようだ。桜は目を泳がせて、その場から立ち去った。


「え、何、それ。彼氏? 遂に桜にも彼氏ができたの? 母さん、その話詳しく聴きたいな!」

「えー、母さんは知りたがりだなぁ。あのね、桜は……」

「瑞希!!」


 リビングの扉を開けようとした脇から怖い顔で瑞希を睨む桜。それ以上は話すなという顔をしている。


「……本人の許可は取れてないので、正式に彼氏になったら話しよう。ね、母さん。待っててあげて」

「瑞希は何様?!」

「私は瑞希様よ!!」

「そんなの、知ってるわ」


 姉妹の喧嘩が始まった。


「2人とも、うるさいよ!」

「……ごめんなさい」


 コンコンと母に注意されながら、隣同士、背中ではお互いに

つねり合いが勃発していた。双子姉妹もどこの家庭も一緒で喧嘩はするものだった。桜は、雪と帰り際、ライン交換することになった。好きな音楽が一緒と、好きなペットが猫。ガシャポン集めで猫を集めていることを聞いた桜は、興味がわいて、積極的にスマホを出した。雪は恥ずかしそうに、照れながら、スマホを差し出した。


「別にいいけど」


 雪の本当は脳内ではものすごく喜んでいた。少しずつ、2人の距離は縮まりつつあった。







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