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第13話 100件

家の玄関ドアを開けると、スマホを確認した。雪は、着信履歴に驚愕した。今日は金城深月と一緒に出かける約束していた。デートの誘いだったはずだったのだ。桜と一緒にいて話したことで満足したようで行きかけたデートをすっぽかした。

約束の時間は午前10時に駅の中のベンチで待ち合わせだった。

そもそも駅にも行ってない。確かに駅前であったが、さらに奥で全然遠いところだ。


そして、自宅に着いた今の時刻は午前11時半。これからお昼ご飯を食べるかという時間だ。スマホの着歴はなんと新記録の100件ラインメッセージもこめたものだ。

『今どこ?』から始まって、

『事故にでもあった? 大丈夫?』になっている。

 金城の妄想は膨らんでいるようだ。雪は、電話をかけてみた。コールが何度もかかる。もう飽きられてしまったのだろうか。全然出ない。雪は、もうスタミナ切れのようで、自分の部屋に戻り、ベッドにどんと寝っ転がった。桜との会話で心が満足していた。お腹が空かなかった。そのまま、夕日が部屋に差し込んでくるまで眠ってしまっていた。

またループするようにスマホには金城のラインメッセージが大量に送られてきていた。




___翌日の学校にて

電車に乗ったが、席には座れず、吊り革をつかんでいた。隣には亮輔がいた。一つ、あくびをした。


「大丈夫か?」


「ふわぁ……。夕方まで寝ちゃってさ。夜眠れなくなって、寝たの午前2時だったわ」

「あー、そっか。よく起きられたな」

「妹の目覚まし時計に助けられた」

「あー、もう、家族みんなに見放されてるな。前は起こしてくれたろ?」

「うん、たぶん。俺、起きるまで時間かかるから。自分の目覚まし時計2個とスマホのアラームと、たまたま今日は妹がね。セットしてくれたみたいで。でも、起こしてくれてもいいじゃんね」

「起こす作業も大変なんだぞ」

「……だよな。気をつけます」


 雪は、なぜかぺこりと亮輔に謝った。


「俺に言われてもな、困るけど」

「……悪い悪い。って言うけど、お前もちょいちょい寝坊するだろ?」

「まあな。似たもの同士ってことで」


 雪と亮輔は、電車が停車すると、出口に颯爽と向かった。バックを肩に持ち直した。


「今日さ、俺、弁当忘れたんだよね。亮輔、購買行かない?」

「えー、別にいいけど。おごってくれる?」

「パン1個くらいならね」

「マジか。冗談で言ったんだけど」

「んじゃ、買わない」

「いや。ごめんなさい。買ってください。お願いします」

「そう? いいよ。おごっちゃる。屋上いこうよ、たまには」

「いいね、それ。バチクソいいね。俺は、たっぷりランチだな。弁当もあるし」

「おう」


  朝はご機嫌で過ごせた。亮輔とゲームの話で盛り上がりながら話して駅から学校まで30分を歩いた。昇降口に着いてすぐ、金城深月に会った。


「漆島くん!!」


 至近距離まで来て、何をされるかと思った。いきなり、頬をバシンと叩かれた。


(あれ、俺って金城と付き合ってたっけ。ただ、会おうよって約束しただけ。なんで叩かれる?)


「え?」


 叩かれた頬を自分の手で触れた。


「あのさ、無視するって良くなくない??」


「え、あ、ごめん。返事返さなかったこと?」

「あとさ、用事があるなら、前もって連絡するでしょう。

 ちょっと、先約あるなら初めっから言ってもらっていい?

 サイテー」


 話の趣旨がわからない。雪は混乱した。


「漆島くん、綾瀬さんと付き合ってるの? 駅前の自販機でイチャイチャしていたの友達が見たって言ってたよ。私と友達になってる場合じゃないよね」

「へ? は? あ?」


 とてつもなく混乱する。それを聞いた亮輔も裏切られたようで鬼のような顔になっている。


「おい、雪。どういうことだ。話聞いてないぞ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待てって。誤解だって。俺と綾瀬は……」

「うわ、呼び捨て。仲良さげだわ」


 なぜか、オカマスタイルになって、亮輔は金城に同意を求めに行く。金城も一緒になってこちらを見る。



「ちょちょちょっとー。マジ、勘弁してくれない?」

「あ、漆島くーん!!」


 校門から走ってくる綾瀬桜が手を振っていた。桜の横には瑞希もいる。今ここに来たら、余計にややこしくなると感じた雪は、その場から逃げ出した。校舎の中に入っていく。亮輔と金城は納得できずに追いかける。手を振った桜は、恥ずかしくなって後ろに手を隠した。


 「桜、何かやらかしたの? 漆島くんだっけ。逃げていくよ」


 双子の妹の瑞希はボソッと言う。桜は、頬を赤くさせて、ごまかした。


「べ、別に、何もないよぉ」


 妹にはまだ話していなかった。部活での出来事を教えたくなかったからだ。いつも通りに何もない様子を醸し出した。桜は、佐藤佳穂が横切ったときは、顔がひきつって何も言えなくなっていた。その表情を見落とさなかった瑞希は、なんでだろうと不思議で仕方なかった。



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