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第3話 クラスでの自己紹介

カザミドリがカタカタと鳴った。


体育館での入学式を終えてゾロゾロと教室に戻る。

初めてのクラスメイトにみんな緊張していた。

担任の先生が教壇に立つ。


「はい!おはようございます。1年A組の担任の

 五十嵐 透いがらしとおるです。 入学式でも紹介ありましたが、 1年間よろしくお願いします」

「1年A組の副担任 佐々木美由紀ささきみゆきです。

 まだ新任ですが、精一杯頑張ります!」


 拍手がわき起こる。


「そしたら、順番に自己紹介して行こうか。あいうえお順でね。よし、綾瀬からかな」


 あまり自己紹介が好きではないクラスメイトたちはざわつき始めた。


「ほら、静かに。人の話はきちんと聞こうな」


 五十嵐先生はなだめている。


「はい。えっと東中学から来ました。

 綾瀬 桜です。隣のクラスに双子の妹の瑞希がいます。一卵性双生児なので、間違わないようによろしくお願いします」


 あどけない笑顔で自己紹介する桜は、恥ずかしそうに教壇から席に戻っていく。トップバッターで注目度の高い双子情報だった。雪は頬杖をついて眺めていた。桜の後ろの伊藤亮輔は、

 面白いネタは無いかと探したが、見つからずシンプルな自己紹介で終わった。 雪は、亮輔が桜の後ろの席でよかったなと

少し嬉しそうだった。そういう雪の席は、後ろの方だった。

教壇に立って自己紹介する。頭をぼりぼりとかいて話し出す。


「えっと、漆島 雪うるしまゆきです。女の子みたいな名前とよく言われますが、れっきとした男です。よろしくお願いします」


 右腕の筋肉を見せつけて、男をアピールすると笑いが起こった。そこまでの筋肉ないだろという亮輔のツッコミが入る。

長く付き合ってきてるから尚更だった。小さい声でうっさいと話して、席に戻る。亮輔を見つつ、桜の顔を見ると同じように笑っていて嬉しかった。何気ない仕草を見ているだけでホッとした。この瞬間、何かが始まった気がした。雪は、毎日学校を通うのが楽しみになった。中庭ではほんの少しの粉雪と桜の花びらが舞っている。寒い空を2羽のトンビが飛び交っている。


 かざみどりがカラカラと鳴っていた。



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