粉雪が降っていた。
もう春だというのにまだ寒い。
ダウンジャケットが手放せない。
手袋の上に雪が舞い降りた。
よく見ると結晶の形になっている。
漫画やポスターなどのイラストに
結晶の形が描かれるが、凝視しないと見れないものだ。
大きく描くのはなんでだろうと疑問を感じる時があった。
可愛いデザインだからまあいいか。
耳に骨伝導のイヤホンを付け直す。
空から降る雪を見てから、右側に目をやると桜が満開だ。
ひらひらと粉雪と共に桜の花びらが舞っている。
今年も、冬と春が一緒の季節だ。
寒くても桜が咲く。
「さくらー、早く行こうよ。 電車乗り遅れるよぉ」
「うん、わかってる。 だって、雪がつかめたから」
高校の最寄りの駅まで通学する。
「ねぇねぇ、やっぱ姉妹だと同じクラスにはなれないよね」
「そりゃぁ、無理っしょ。同じ顔では先生が困るから」
「そうだよね。クラス違うのいいけど、また好きな人、一緒にならないといいなぁ」
「努力するよ」
「好きな人って努力して決めるの? 桜、変だよ」
「なんとでも言って。それが、私の生き方だから」
姉である桜は双子でも我慢することが多い。中学時代に瑞希と好きな人が同じで同時に告白して同時に振られた。同じ顔じゃ決められないと断られた。もう同じ失敗したくない。青春は謳歌したいのだ。姉として、多少我慢しても本命じゃない誰かと付き合いたいものだ。
「そういう生き方もあるんだね」
瑞希は姉の桜の気持ちなんて知りもしない。双子でもわからないこともあるのだ。電車の発車ベルが鳴る。ホームに粉雪が舞って風が強く吹いた。
今日も足先まで冷える寒さだった。