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第17話 会いに行かなければならない

 街の喧騒の中、澄矢は歩道を人混みをかき分けて、走っていた。部活以外のところでこんなに必死になって走ったのは何年振りだろう。

 額に汗がほとばしる。ショルダーバックがあっちにこっちにと振り回されて、体にぶつかる。横断歩道の歩行者信号は、赤信号に切り替わった。急いで行きたくて、その場を足踏みをした。今すぐにでも行きたい。人の視線なんて気にしてない。澄矢は、青信号になってすぐに駆け出した。

 たくさんの人に嫌気がさすが、今はそんなことを考えている暇はなかった。


――回想シーン――


「失礼します」


 職員室に静かに入室した。 つい数分前、放課後の校舎にて

 放送された。澄矢のお呼び出しだった。担任の齋藤先生がデスク周りの整理整頓

 しながら、澄矢を待っていた。澄矢が職員室に入るのが分かると、出入り口付近まで駆け寄った。


「先生、放送してまで呼ぶって俺、何をやらかしたんですか」

「ん? お前はやらかすようなことでもしてんのか?」

「いえ、何もしてないですけど、たぶん」


 つばをごくんと飲み干した。


「まぁまぁ、落ち着けって」

「いや、俺は、普通に落ち着いてますって」

「あのな、この間、お前さ。水城雫羽のこと気にしていただろ?」

「え、まぁ、そうですけど……」


 斉藤先生は耳打ちでそっと情報を教えた。


 『個人情報だから、あまり大ぴらにしちゃだめなんだけどさ、その水城? 知ってると思うけど、ずいぶん前から入院してるのよ。そんでさ、容態がやばいらしいんだわ。余命何ヶ月とか前から言われてたらしいけどさ。今日、峠かもってさっき担任の佐々木先生言っててさ。今から見舞い行くらしいって……どこに行くんだよ!?』


 小声がだんだんと大きくなる齋藤先生。職員室の情報は近くで電話で話してる

 ため、間近で聞こえるらしい。澄矢は話の途中で職員室を出ようとした。急いで、行かないと行けない気がした。


「あ、その水城の病院に行こうかなって」

「場所も調べないで行くかよ??」

「そうだった。それもそうですね」

「ちょっと,待ってろ。今メモ書いてやるから」


 齋藤先生は、ノートの紙を乱暴に破って、走り書きで雫羽の入院先である病院の名前と住所を書いた。 


「あー、今更言うんですけど、スマホで写真撮れば良かったんじゃないですか?」

「確かに…仕方ないだろ!? まだアナログが抜けないんだから。デジタルな人は良いですね!!本当。ほら,良いからここに行けよ。大事な人なんだろ?」


 斉藤先生は結局のところ、スマホの画面からメモに書きうつして、澄矢に渡した。 


「先生、俺、何も言ってないですよ。大事な人なんて……」

「いいから。行けよ!」


 澄矢の背中を押して、グッとな指を出す。先生からの情報がなければ、雫羽のところには行けなかった。感謝はするが、なぜそこまでしてくれるのか不思議だった。今日は何曜日だったかと確認しようとしたが、それどころじゃないと首を振った。


――回想シーン終了——


 額に汗が飛び散る。着ていたシャツで拭う。目的地である市内の総合病院に着いた。自動ドアが開き、入院病棟を探したが、雫羽がどこに入院しているかを確認するのを忘れていた。後ろから肩を誰かに叩かれた。

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