「隠れていないでさっさと姿を現せ!」
心の奥底からこみ上げる怒りを必死に抑え込もうとするが、一向に姿を現わそうしない
「ふふふ……
冬夜の怒りなど全く意に介さない創造主。声が響くと全身を押しつぶすような力が空間内を支配し、全員が膝をつく形で必死に耐える。
「ぐっ……いったい何が……」
「私の力を少し見せただけだが……どうした? 誰一人として動くことができないではないか! その程度の力量で我に歯向かおうとは……実に愉快だ!」
歴然とした力の差を見せつけ、身動きが取れない冬夜たちをよそに創造主はメイに向けて言葉を放つ。
「そちらのお嬢さんは
創造主の意味深な言葉に顔から血の気が引き、身震いが止まらないメイ。ソフィーが必死に立ち上がるとメイの前で小さな両手を広げて守ろうとする。
「ふざけるな! 絶対にお前だけは許さない! 必ず
「力をまともに制御できない愚か者に何ができる? 威勢のよさだけは誉めてやろう、せいぜい楽しませてくれたまえ」
そう言い残すと頭の中の声が消える。同時に押し付けられるような圧力からいきなり解放され、膝から崩れ落ちた。冬夜は解放された瞬間に未だ身震いが止まらないメイへ駆け寄る。
「メイ、大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫。なんだかわからないけど、声が聞こえた時、すごく怖かった……でも、ソフィーがすぐそばにいてくれたから……」
「私がメイを守るから!」
小さな体で必死にメイに抱き着き、少しでも心が落ち着くようにするソフィー。周囲の警戒をしつつ、リーゼと言乃花も集まってくる。
「創造主と因縁って何があったの?」
「なんだったの……創造主ってどういうことなの? 何も聞いてないわよ!」
二人は何が起こっていたのかわからず、混乱した様子で冬夜に詰め寄る。できることなら触れたくはなかったが、ここまで事態が動いてしまい、隠し通すのは無理だと判断した冬夜がしぶしぶといった様子で口を開く。
「わかった。過去に俺がヤツと何があったか話せる範囲で話そう」
どこまで話していいのか考えつつ、この場から一時退避することを考えた。
「どう? 歩けそうか?」
「うん、大丈夫だと思うよ。私も聞かせてほしい。何か思い出せるかもしれないから……」
少し気持ちが落ち着いた様子のメイ。冬夜たちは必要としていた本を数冊手に持ち、この場から退避するために出口に向かい歩き始めた。
冬夜たちが迷宮図書館で創造主に遭遇した同時刻。窓際に立ち、外の景色を眺める学園長の背後に音もなく現れる人影。
「おや? こんなタイミングで珍しいお客さんだね。ちゃんとアポイントを取ってくれたら、おいしいお茶とお菓子を用意することくらいできたんだけどな」
「ふん、相変わらずだな。お前と話すのにそんなものは必要ない」
目深くフードをかぶった人物は明確な敵意が込めて学園長を睨みつけるが、一切動じる様子はない。
「冗談はさておき、
「愚か者どもへ直々に挨拶に来てやっただけだ。
勝ち誇ったかのような表情を浮かべ、煙が消えるように姿を消す創造主。
「全く……相変わらずだな、人の話を聞こうとしないところは。
迷宮図書館の方角を見つめ、目を細める。
「冬夜くん、メイちゃん、かなり面白くなりそうだよ。残された時間は少ない、誰も創造できない結末を導いて見せてくれ。早くしないと
窓際に立ちながら不敵な笑みを浮かべる学園長。
あの計画とはいったい何を意味するのか……
創造主と裁定者、学園長の隠された因縁と秘密、そして冬夜の身に起こった事件とは?