チキンだけでお腹いっぱいになりそうな私とは違って歩くんは残さず全部食べてくれた。
「大丈夫? あとまだケーキもあるよ? 食べれる? 出すのやめよっか?」
「大丈夫ですよ、まだ食べれます。もしかしてケーキも彩葉の手作り?」
「いやいやいや、ケーキはちょっとね、まだハードル高いわ! あ、でも来年こそは! それまでに結城さんに習っておくから!」
「そこまでしなくてもいいですよ。というより来年も一緒に過ごしてくれるんですね」
「え……、うん。私はそのつもり……。歩くんは?」
「もちろんです。来年も、再来年も、ずっとずっと一緒に」
少しだけ甘い雰囲気に変わる。これはケーキを出す雰囲気ではないけど、これ以上甘く甘くなってしまう前に先にプレゼントを渡さなきゃ。
「あのね歩くん、これ」
そう言って横に置いていた紙袋からラッピングされたプレゼントを差し出す。
「ありがとうございます。開けていいですか?」
「うん」
開封作業にドキドキする。気にいってくれるかな? もし趣味に合わなかったらどうしよう?
包装紙のペリペリという音と心臓のドクンドクンという音が重なる。
「あ」
中身が見えた瞬間、私は生唾を飲み込んだ。
「手袋だ」
濃いブラウンのカシミヤ手袋。
「あったかそ」
早速というように嵌めてくれる歩くんが装着して見せてくれる。
「どうです?」
「うん、似合ってる」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「実はね、それ色違いで私とお揃いなの」
そう言って私は紙袋の底からミルクティー色の同素材の手袋を出した。
「お揃いなんて、嫌?」
「いえ、嬉しいです。カレカノな感じで。じゃあ僕からのプレゼントも受け取ってください」
「うん」
「返品は受付けませんよ?」
「え? 何? 歩くんからのプレゼントを返品する訳ないじゃん?」
言いながらもだんだん嫌な予感がしてくる。
返品を受付けてくれないものって、何だろう?
目の前に出されたのは手の平ほどの四角い箱。
「はい、首輪です」
「えっ!?」
待って、待って、待って!!
首輪って何? 犬? 犬の首輪?
確かに実家にはワンちゃんがいるけどさ……
嫌な予感が的中したのだろうか……、そう思いながら恐る恐る受け取りリボンをほどいていく。
ある意味、自分が渡す時より動悸が激しいかもしれない。
そおっと、箱の蓋を持ち上げた。