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第21話

金曜、恒例の【みやびの日】


陽菜と一週間の疲れを乾杯に変えると、カクテルに口を付けた陽菜が、それで? と聞いて来る。


「ん? なにが?」

「とぼけないでいいから、川辺もあんたも何かおかしくない、今週?」

「げっ」

「げっ、て何なの? 言えないこと?」


陽菜に正直に打ち明けるか悩みつつも、川辺との事は話す事にする。


「川辺が私の事、……その、……」

「とうとう告白されたの?」

「えっ!? 知ってたの!?」

「うん」

「いつから?」

「えーー、入社してすぐくらい?」

「えっ……」


陽菜は何だそんな話しか、と言わんばかりにカクテルを飲み干して、高い声で雅くんを呼ぶ。


「雅さん、これ美味しかったです! 同じのまたもらっていいですか?」

「良かった〜、陽菜ちゃん好きだと思ったんだよね! ちょっと待っててね!」

「お願いしまーす」


雅くんの背中を追う陽菜が、はあ、と熱い溜め息をこぼす。


「雅さん、今日も格好いい……」

「陽菜のタイプってあんなの?」

「あんなの、って言わないでよ。格好いいでしょ!」

「まあ〜、……そうかもね」

「雅さんのタイプって、どんな女の子かな?」

「さあ? 知らないけど? 聞いてみる?」

「えっと、……今日はまだ駄目。心の準備が出来てからにして!」

「はいはい」


それから雅くんが、お待たせ、と言って陽菜にカクテルを出す。それを受け取る陽菜はいつもより少し可愛くて、乙女だなと感じた。




スマホが鳴っていると気付いたのはベッドの中。

カーテンの隙間から雨が降っているのが見える。どうりでぼんやり暗い訳だ。スマホ画面の右上に小さく

『10:03』と表示され、ど真ん中には見知らぬ番号がある。


「ん? 誰?」


通知ボタンをスライドさせて、はい、と出る。


『あ、彩葉ちゃ~ん! 友梨です。歩の姉の松岡友梨です』

「えっ、友梨さん?」

『おはよう、突然ごめんね、今大丈夫だった?』

「はい」

『歩から聞いたよ、彩葉ちゃんがまた遊びたいって言ってくれてるって』

「ああ、そうなんです。でも友梨さんたちが忙しくなければ……」

『うん、じゃあ来週の日曜日にする?』

「来週の日曜日?」

『あ、ダメだった? じゃあ……』

「いえ大丈夫です。予定ないので、来週の日曜空いてます!」


私がそう言うと、友梨さんは本当に嬉しそうなのが分かる声で、良かった、というと、今度はどこに行くかという場所決めに話が移る。


無難なデートコースを二人で羅列してくと、電話の向こうで友梨さんが、全部行きたいな~、と言い始める。


「じゃあ来週は遊園地にして、また四人の予定があう日に違う所もいきましょうよ?」

『そうだね! 日本にいる内に日本で行きたい所は全部行こうね! あっ、……そうなると、泊まり掛けで遠出もしたくなるよね~?』

「いいですね! 温泉とか?」

『温泉! 行きたい、行きたい。なんなら彩葉ちゃんと二人でもいい!』

「ははっ、友梨さん。そこは私より湊さんとじゃないんですか?」

『そうだよね、彩葉ちゃんだって歩と一緒じゃなきゃ楽しくないよね……』


それはないです、と友梨さんに向かって否定できない私は、「じゃあやっぱり四人で行かないとですね」と濁した。





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