◇ボヘミア国 元貴族城
コンコン
「...セバス様ですか?」
「はい。入っても良いですか?」
「どうぞどうぞ」と、扉を開けにくるアモン。
「あと数日は調査を行うと聞いていましたが...」と、私の後ろにいた5人の奴隷たちを見て眉を顰める。
「...イレギュラーですか?」
「...まぁ、そうですね。申し訳ありませんが、彼女たちをここのメイドとして雇っていただけませんか?」
「...随分変わりましたね。悪魔より悪魔なんて言われていたあのセバス様が...。メイドの件は念の為ラン様に確認を行いますね。あの方であれば喜んで受け入れるでしょう。というより、セバス様がそのような行動をとったことを何より喜びそうですが」
「...そうですね。では、私はこのまま戻りますから。頼みましたよ」
「はい」
◇1日後
翌日も奴隷商人のところに行き、販売価格やその環境について調査を行っていると...。
「...あれぇ、誰かと思えば昨日のおじさんじゃないですかぁ?」と、似合わない高級な時計を見せつけ相変わらず女を侍らせたうえ、どうやら屈強なお仲間も連れてきている様子。
肌に真珠とはまさにこのこと。
「...はぁ。またあなたですか」
「あぁ、また俺だよ。悪かったなー、また俺で...。シュバルフ...お前はいつまでこんな商売してんだ?奴隷もこんな安値で売って...お前のことだから撒布金も馬鹿正直に奴隷共に配ったんだろうな」と、懲りずにバカにし始める。
「そ、それが...ルールですから...」
「ルールなんて破るためにあるんだろう!」と、奴隷を思いっきり蹴るルックロード。
「ぐっ!!」と、苦しそうな声をあげるが全てを諦めて受け入れているような顔をする彼女。
見ないふりをするシュバルフさん。
恐らく...この界隈の元締めがこいつということなのでしょう。
「...はぁ...一度までも二度までも。ラン様は確か仏の顔も三度までなんていうことを言っていた気がしますが、私は2度で限界のようです」
「おっと!いいのか!俺の後ろにいる二人はこの国のギルドの中でも最上クラス...Aランクのギルドのメンバーなんだぜ?」
「へへへ」と、5人ほどの男がニヤニヤとこちらを見ながら気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「...はぁ、面倒ですね。本当に...」と、手袋を脱ぐ。
「おいおい、このおっさんやるらしいぜ!」
「別に私は気が長い方ではないんですよ、元々。割と喧嘩っぱやくて...今でもそれはそんなに変わってないのです。だから、あなたたちを見ていると本当に昔の自分を思い出してしまい...ワクワクしちゃいますね。ファラス、手は出さなくて結構ですよ」
「ぁ?ファラス?お前の仲間なんかどこにい」と、話している最中にまずは一発お腹にぶち込む。もちろん、軽いパンチを。
「うごっ!?」と、血だか涎だか胃液だか分からないものを吐き出しながらうずくまる豚。
そのまま、3人の女性にビンタをして気絶させ、残りの5人のギルドメンバーとやらに拳を構える。
「ぐっ!このおっさんやるぞ!気を引き締めろ!」
どうせ十二月にもなれない程度の実力しかないのに、よく大口を叩くものだ。
確かこれも言っていましたね。
「井の中の蛙、大海を知らずでしたっけ?」
「【支援魔法:魔攻武装!】」
「【召喚魔法:ブラッドドッグ!】」
「【火魔法:ファイアーボルト!】」
「【秘技:抜刀】」
「【防御魔法:ペーパーバリア!】」
それぞれの役割を正確に理解している。
ふむ、素晴らしい連携だ。
しかし、どうやら私から見れば紙のように薄い連携だが。
「【拳闘術式:5速】」でまずは後方支援魔法使いを倒す。
「なっ!?」と驚く前方魔法師に「【支援魔法:金縛り】」で拘束をし、召喚魔法師を「【風魔法:疾風迅雷】」で吹っ飛ばして気絶させる。
「...残り二人」
「て、てめぇ!舐めやがって!やってやる!防御魔法を張れ!」
「は、はい!【防御魔法:物理防御】」
「はっ、これでテメェの攻撃は「もう勝負はついていますよ」
「...はぁ?」と、言いながら倒れ込む。
「【支援魔法:自己加速Ⅴ】」を使って手刀を入れていたため、そのまま膝から倒れる二人。
「ファラスさん、こちらの方々をお願いします。この豚は...私の方で処分いたします」というと、「ひぃ!」と怯え始める男。
「何か言い残すことは?」
「か、金をやる!だ、だから見逃してくれ!な!100万ガリル...いや、200万だそう!」
「それがあなたの命の金額ということですね」
「ち、ちがっ...わ、分かった!1000万!それでどうだ!?」
「...そうですか。あと、何か勘違いされているようですが、あなたを殺してお金を奪えばそれで済むのですよ。だから、金銭の交渉など端から意味がないのですよ」
「ゆ、許して!「そう言って懇願してきた奴隷をあなたがどう扱ってきたかは言うまでもありませんね。【拳闘術式:20速】」
そうして、跡形もなく吹き飛ぶ首。
ドサっと重そうな音を立てながら、体が倒れる。
そんな様子を見ていたシュバルフさんが怯えながら私に質問する。
「...あんた...一体...」
「...ただの旅人ですよ。少しお茶目なね」