◇
お店をしばらく歩いていると...「シャー!!」と言う声が聞こえて路地裏に目を向ける。
そこには野良猫とまじ喧嘩しているガープの姿があった。
「...何してるんですか?」
「シャー!!って、セバス様にゃん。にゃたしは今まさに情報収集しているところにゃん」
「...野良猫にですか?」
「にゃんですか!もしかして、猫を舐めてにゃす?猫はいろんな情報を持ってるんだにゃ!」
「...そうですか。...頑張ってください」と、私は半ば諦めたように呟きそのまま奴隷商人の元に向かう。
そのまま路地裏を通るのだが、両脇には壊れかけの建物に...そこで寝ている人々。
生活が改善してるようにはやはり見えないな。
先ほど言っていた通り、撒布金はまだこれからも配られ続ける。
しかし、やはり配り方については再考しないといけないようですね。
そうして、そんな寂れた路地裏を抜けると、綺麗で大きなお店がそこにあった。
その店先に立つボロボロな服を着た彼女達...。
すると、中から豪勢な服を着たおじさんと綺麗な女性たちを侍らせて外に出てくる。
そして、何が気に食わなかったのか急にその店先にいた女の子を蹴る。
「くっさいんだよ、お前」と、すると周りの女もケタケタと笑う。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」と、体を丸めながらも蹴られ続ける。
昔の私であれば多分何とも無い日常の風景であった。
弱いものは淘汰される。
これが世界の常なのだから。
しかし、うちのメイドやシェフをはじめとした子達の幸せな姿を見て私は考えを改めるようになった。
誰にだった幸せを享受する権利があり、その幸せを分かち合うことこそ、力や財を持った人間の役目であるということを。
「...見るに耐えない」
「...セバスサマ?」
そのまま、怒りの感情のまま彼らに近づき私は一言声をかける。
「... ルックロード様ですか?」
「...なんだぁ?お客さんか?金はあんのか?」
「...えぇ、ありますとも。それで...この子はいくらですか?」
「...っぷwおじいさん、あんたぁいい趣味してんなぁwこんなゴミクズをご所望か?w」と、足で踏みつける。
「...足を退けてもらえますか?」
「あぁん?いやいや、今この瞬間はまだ俺のものなんだぜ?」
「いくらですか?」
「うぅーん...そうだなぁ...100万ガリルとか?w」
すると、クスクスと嫌らしく笑う脇に立つ女達。
相場から言えば5000ガリルが良いところだろう。
「...いいでしょう」と、私は胸ポケットから100万ガリルを地面に放り投げる。
「...おい、あんた...正気か?」
「えぇ、拾えたのならそれはあなたのものだ」
そうして、ニタニタとしながら地面に手を伸ばした。
「【拳闘術式:1速】」
その瞬間、私の正拳突きが見事にやつの頭の顎の下に一撃を加える。
すると、フラフラとしながら地面に倒れる。
「...どうやら、触れられそうにないようですね。では、これは返してもらいます。それと...この子はもらっていきます。この子の値段は?」と、唖然としている女に質問する。
「...」
「...はぁ。この子の値段は!」
「は、はい!3000ガリルです!」
「...そうですか。分かりました、ありがとうございます。他の子達も同じですか?」
「はい!」
そう告げて、5人分の15000ガリルを置いて先程まで踏まれていたその子に手を差し伸べる。
「...」と、怯えたような表情で見上げる幼い女の子。
「大丈夫ですよ、安心してください。私があなたたちを守りますから」
「...ヤツハコロサナイノデスカ?」
「彼にはそれ相応の罰を与えます。奴隷の扱い方などについても見直しが必要でしょう」
「ランサマヘノホウコクハ?」
「...問題ありません。私が行います。それにボヘミアの城にはメイドが足りていないと聞いておりますから。そちらで雇って貰えばいいでしょう」
「ソウデスカ。ソレナライイデス」
いつの間にか随分ご主人様に染められてしまったようだ...。
自分の感情をコントロールしながら、他の奴隷商人のところにも行くのだった。
◇サブナク目線
さぁて、久々の下界の空気を吸い込みながらセバス様からの命令を全うするとしよう〜。
てことで、まずは聞き込みかな〜。と、ボールをポンポンと跳ねさせている少女に聞き込みをしてみる。
「取材よろしか!w」
「しゅざい?」
「うん!ほら、王様が新しい人になったでしょ?それで、美味しいものが食べられるようになったーとか、お金が増えた!とかあった?」
「...ううん。分けてもらったお金...全部おばあちゃんが持って行っちゃって...。うちのおばあちゃん...強いから」と、少しボールが跳ねる威力が弱くなる。
「...そっか、そっか。うんうん。お金はちゃーんと分けられるべきだって思うよね。うんうん、いいのいいの。それでいいの!wそれじゃあ、またね!」と、挨拶を終える。
「...さてと、仕事完了〜」
んじゃ、ちょっと行きますか...と、酒場に向かうのであった。