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第31話 ボヘミア国調査①ご主人様編

 ◇ボヘミア国 城下町前



 無事、ボヘミア国の近くに到着した私は6匹の悪魔に改めて注意事項を促し、行動制限の魔法をかけて変身を行った上で潜入を始める。


 城下町の民の生活の確認、及び新王へのヘイト調査、併せて奴隷商人の抜き打ち実態検査...。

まぁ、メンバーがメンバーだけに余計なことはしないと思うが、より多くの情報を集めるべくそれぞれ単独で調査を行うことにした。


 また、5匹の悪魔が民の調査を行い、透明になれるファラスと私で奴隷商人の検査を行うことにした。


「それでは皆さん頼みますよ。くれぐれも問題を起こさないように。調査期間は4日間。終わり次第城にくるように」


「了解!」「はい!」「...」「にゃは!」「はい」「は〜い」


 纏まりは...ないな。


 そうして、私とファラスはまず奴隷商人の情報収集のため、ギルドに向かった。

もちろん、ファラスは透明化してもらっているため、向こうは私一人に見えているだろう。


 町に入ると一応、民の様子を伺う。

聞いていたより...貧しそうな生活をしている様子だった。


 貴族の財産をばら撒いているのだから、もう少し町自体が活発になっているかと思ったが...。貯金をしている人が大半なのか?それとも...。


 そのまま、町の中をある程度散策していると、「...セバスサマ、トイレイキタイッス」と、我慢の限界が来たのか珍しく話しかけてくるファラス。


「そうですか。では、ギルドに行きましょう」と、そのまま街の中心にあるギルドに入る。


 カランコロンと、喫茶店のような扉の音を鳴らしながら中に入る。


 人数が少ない...。

なるほど。ある程度の財があるからわざわざ危険なダンジョンに潜る人間も減ったということか。


 すると、「ドッ、ドッ、ドッ」と足音だけが聞こえる中、トイレに駆け込むファラスであった。


 ...思っていたより我慢していたようですね。


 そうして、適当に腰をかける。


「いらっしゃいませぇ〜!」


 ...どうやら本当に喫茶店のようです。


 辺りを見渡すと奥のエリアでは昼間からお酒を飲む筋骨隆々な方々...。

一方、こちらではコーヒーやカフェラテなどを楽しむ女性の魔法使いがチラチラ...。

その真ん中に大きな掲示板が掲げられており、そこにはダンジョンやクエスト依頼者が掲げられている。


 なるほど。カフェ兼酒場兼ギルド...ということですか。なかなか面白いですね。


 しかし...。


「ご主人様、ご注文はいかがなさいますか?」


「ご、ご主人様!?」と、思わず取り乱す私。


「え?...はい...」と、やや引き気味のメイドさん。


 ...この私がご主人様と言われる機会があるとは...。


 すると、後ろから「ドウシマシタ?...セバスサマ」と、トイレを終えたであろうファラスが声をかけてくる。


「いや、何でもないですよ...。あっ、注文は...コーヒーをブラックで」


「はい!かしこまりました!」


「...」


 さて...と、気を取り直して調査を開始しますか...。


 さりげなく周りを見渡しながら、そっと掲示板の方に向かう。


 我々の国とほぼ変わりのないダンジョン依頼...それと...クエスト...。


【お名前を貸していただくだけで、借金をチャラにしちゃいます!詳しく話を聞きたい方はルックロード奴隷の館まで!】


 そんな張り紙を見ていると、ひとりの酔っ払いが絡んでくる。


「んだぁ?おっさん借金あんのかぁ?」


「...えぇ、まぁ」


「あー、そうなんかー。貴族の撒布金はちゃんと受け取れたのかー?」


「...皆さんに配られたのではないですか?」


「あぁ!?おっさん、どんだけ世間知らずだよ!知らねーのか?あのタイミングで窃盗とか、強盗とかすんげーはやったじゃねーか...。受け取れない奴らが続出...」


「...なるほど」


「特に奴隷商人はウハウハだろうな〜。なんでかわかるかぁ?分かるだろぉ〜?奴隷商人は名義だけ借りて奴隷分の金もぜーんぶ独り占め。さらにある程度金に余裕ができたやつは奴隷を飼うようになったんだよぉ...。この撒布金は何回かに分けて送られるって話だからな〜。早いうちに奴隷を買ってその分の撒布金をもらおうとして...奴隷の価格は高騰...商人ウハウハって話だよ...うぷっ...気持ち悪くなってきた...」


「...この張り紙に書いていることは何ですか?」


「今回受け取れなかったやつ...についての救済措置とか言ってるが...要はまた奪われる可能性があるならその権利を放棄して、今ある借金無くしてあげますよーって言う...商売だな」


「...そういうことをしているのは彼だけですか?」


「おかしな話だよなー。その強盗の大半は奴隷商人が国外の盗賊とかに依頼してやってるみたいだし...。貴族がいなくなっても、金持ちが強いことにはなーんにも変わりがねーって話...。俺たちギルドに来ているような実戦向きの奴らは狙われねーが、年寄りや女子供だけの家族が狙われたり...胸糞悪りぃ話だよ...」と、吐きた捨てて去っていくのだった。


 やはり、状況は思っていたより悪そうですね。


「ありがとうございます」と、1000ガリルを酔っ払いに渡して店を出た。


 まずはあの奴隷商人のところに行くか。


 そうして、店を出ようとすると「またお越しください、ご主人様!」と、数人のメイドに言われる。


「...えぇ、是非とも」

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