「...前回のような手を焼きそうなメンバーが少なくて助かるよ」
「アモンはまだしも他のものと比べられるのは心外だぜ?」と、グシオンが苦言を呈す。
「シャシャシャッ!それはそうだねぇ?けど、私は外に出れるだけで感謝してるますよ?セバス様w」と、バティンが笑う。
「...」と、無口なファラス。
「にゃはははっ!ウケるにゃw」と、ガープも笑う。
「はぁ、君たちは相変わらずだなぁ」と、マルコシアスは呆れる。
「あらぁ〜みんなぁ〜相変わらず元気だねえ〜」と、マイペースにサブナクが呟く。
そんな6匹の悪魔を連れて私たちセバス班はボヘミア国に向かうのだった。
◇
「凍てつく氷の石礫をその身に受けよ!【氷魔法:氷点一撃】」
「おぉ、素晴らしいですな、アイン様」
「本当ですか...?えへへ...これで少しはラン様のお役に立てるかな...」
「もちろんでございます。はて、そろそろ私の教えることもなくなってきたのじゃがな...」
「い、いえ!マッドさんにはまだまだ教えてもらいたいことばかりです...。実践形式で...教えてもらえたりしますか...?」
「実践形式...うむ...多少のお怪我は承知の上ということですか?」
「...はい」
「それは流石に許可をもらわないと私には判断できかねすな」
「...分かりました」
というやりとりがあったらしく、アインちゃんとマッドさんが俺の部屋を訪れていたのであった。
「...うーん」と、流石の俺も考え込んでしまう。
アインちゃんが必死なのはマッドからの報告からも分かっている。
けど、俺は戦場に連れていく気はさらさらないのだ。
あくまで自衛のため程度に考えていたが...。
「自衛の...防御訓練だけならダメなのか?その、怪我しない程度に」
「そ、それじゃあ...実際に襲われた時には使えないって言うか...なんていうか...」
「...そうか。マッドの意見も聞かせてくれ」
「...うむ。既に多くの魔法...得意な回復魔法に関しては教えることがないほどに完璧じゃと思う。ワシのパーティに加えたいほどにな。支援魔法ももう少しで基礎的なものは終わり、攻撃魔法や防御魔法は系統的に習うのは難しい。一番身になるのは実践じゃと思う。じゃが、生半可な練習ならあまりやる意味はないじゃろう。もちろん、怪我をしない程度に努力をするつもりじゃが...。最終的な判断についてはワシではできかねる」
「...分かった。ここからは俺も練習に参加する」
「で、でも!それじゃあ...」
「あくまでお手本を見せるだけだ。マッドさんは攻撃魔法もいけるのか?」
「まぁ、少しはな。威力もコントロールもいまいちじゃから、むしろワシよりワシの仲間のウィッドに頼むのがいいじゃろう。攻撃魔法が得意じゃからな」
「おっけー、了解、領海、両界、りょーかい。んじゃ、早速始めようか」
◇
そうして、マッドさんとアインちゃんとウィッドさんに俺...それと野次馬のリベルが集まった。
「ちなみにラン様は得意魔法は何なんじゃ?」
「そういうのはない。オールラウンダーだからね」
「...規格外じゃな」
「そんで、リベルは見学か?」
「まぁね。あんたが強いのは知ってるけど、実際に戦ってるところ見たことなかったし、実に楽しみだわ」
「...俺の戦い見て濡れるなよ?」
「濡れるわけないでしょ?バカなの?」
「うっせ!」
やや怯えている様子のウィッドさん。
まぁ、あの人は俺の強さを知ってるからな。万が一、攻撃が当たってしまうようなことがあれば、殺されるとか思ってるのかもな。
「...手加減はしなくていいよ?全力でどうぞ」
「...はい」
「【風魔法:ウィンド】」
詠唱破棄の初級魔法か。
避けるのじゃ芸がないよな。
「【防御魔法:断砂利】」
砂利が固まり壁となりウィンドを防ぐ。
すると、「天空から降り注ぐ光の雨【雷魔法:ライトニング】」と中級魔法を唱える声が聞こえると、上空がピカピカと光始める。
このままだと直撃するな。
さて、どうしようかな?
「【支援魔法:身体能力向上】」と、詠唱破棄でバックステップで3連の雷をかわす。
「【生活魔法:揮発油】」を地面に撃つ。
ウィッドの足元にガソリンが浸されるが、すぐ「【氷魔法:凍結】」と唱えて足元のガソリンを固める。
思ったよりやるな。
これで後方支援部隊にいるなんて勿体無いな。
「【炎魔法:炎上】」と唱えると先ほど氷になったガソリンが溶けて、一気に燃え上がるのであった。
「うわあああぁ!!」と叫ぶウィッド。
あっ、やべやり過ぎたと無詠唱で鎮火を行いウィッドに近づく。
「ごめん、ついやり過ぎた」
「い、いや...大丈夫です。軽い火傷なので」
「アインちゃん。治してあげて」
「はい!」
実践方式となればこういうことも起こりうる。というか、これぐらいになるのが実践なのだから。やっぱり...やるべきじゃないよな。
「...あれでどれぐらい本気なの?」と、リベルが聞いてくる。
「ん?んー、本気具合でいえば...0.01%ぐらい?基本無詠唱で奇襲するのが俺のスタイルだからな。通常の魔法戦なら相手が放つ魔法に対して、何らかの対抗手段を取る。そして、隙を作って相手を攻撃して、あいてはそれを防ぐのが一般的だからな。無詠唱だと魔眼持ちじゃないと今、一体何の魔法を使っているかもわからんからな」
「...噂通りの強さってことね」
「...私、やります!これぐらい...やらないとだめだから...」と、アインちゃんはこれを見てもやる気らしい。
「...分かった。マッド、なるべく危険がないように。何かあれば即座に俺に連絡をしてくれ」
「...分かりました」